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1話 『接続制限無し』

初投稿です。

「なら、絶対ポテチでしょ」

「はぁ? なんでだよ。バランス悪いだろ」

「へへっ、いいだろ。やっぱ楽しくないとさ」

「呑気だなお前……だったら俺は絶対コーラだな」

「いいね、そうこなくちゃ」


教室内で、そんな声が聞こえてくる。

どうやら、

『無人島に一つだけ持っていくなら何にするか』

という話らしい。


なんとなく周囲を見渡す。

目についたのは、

机の脚についている保護用のゴムだった。


付いている机と、

付いていない机がある。


違和感を感じながら眺めていると・・・


「皆そんなの選ぶんなら、私モフモフ召喚にする!」


見たところ、

四人組らしい。


仲間内の女の子から、

そんな声が聞こえた瞬間、

その机の脚についていたゴムが、全て消えた。


……いや。


よく見ると、

四人とも机の脚のゴムが消えている。


……あれ?

もしかしてこれ、

“決まった”ってことか?



声に出さない方がいい?

そう思った瞬間、

急に迂闊なことを言いたくなくなった。


近くにいた二人へ声をかけると、

自分のノートとペンを取り出した。


『能力みたいなのでもいいらしい』

そう書き出す。


一瞬、

二人は「えっ?」という顔をした。


けれどすぐに、

筆談の実用性に気付いたらしい。


『ついに来たね、僕が考えた最強の設定』


そう書いた片方が、

少し嬉しそうに笑う。


なんかいいな、

こういうの。


『家に帰れるドア』


『豪華客船』


『ネット通販』


『アカシックレコード』


『個人的にやってみたいのは真球生成!』


思いつくまま書き出していくと、


『制約は?』

と返ってきた。


……わかってるなぁ。


そう思いながら、

まずは豪華客船について考えることにした。


3人で目を配らせた後、

1人が『最強』の部分を二重丸で囲む。

その下に、


『不沈』

『不壊』


と書き加えた。

うんうん、

と三人で頷きながら、続きを待つ。


『燃料不要』

『座礁無効』

『自動補充』


……ん?

『自動補充?』


そこを指差すと、

『豪華客船って、色んな商品とか備品あるからね。補充大事』


と返ってくる。


はぁー……。

思わず感心した。


すると、

もう一人が横から、

『自動修復も』

と書き足す。


なら――

『危険行為排除』

と自分も書き込んだ。


そう書いた瞬間、

一人がその文字へペン先を当てたまま考え込み始める。


……何か気付いたんだろうか。

しばらくして、

『衛生維持』

と書き加えられた。


さらにまだ考えている様子だったので待っていると、

『海水、変化』

とだけ追加される。


一瞬首を傾げると、

もう一人が横から、

『浄水機能』

とフォローを書き足した。


なるほど。

なんかもう、

やったもん勝ち感が出てくるな……。


こんなものかな?

出揃ったところで、

改めて書き出してみる。


『不沈、不壊、燃料不要、座礁無効、自動補充、自動修復、危険行為排除、衛生維持、浄水機能付き豪華客船』

……こうして書き出してみると、

なんだか物々しい。


『決定?』

そう書くと、

一人は迷いなく頷いた。


けれど、

もう一人は少し迷うようにして、


『本当にこんなに書いていいの?』


と書いて聞いてくる。


おそるおそる尋ねる彼へ、

まるで導くかのように、

二人で顔を見合わせてニンマリ笑う。


そして、

あの文字を同時に力強く指差した。


『最強』


ふふっ、

と二人の少年みたいな顔につられて笑ってしまう。


一人目が決まった。


だが、

まだ宣言はしない。


選んだ瞬間、

意思の疎通ができなくなってしまっては困るからだ。


さて――


次は、

『ネット通販』について考える。


なんとなく、

さっき釣られて笑っていた彼なら、

これを選びそうだと思っただけなのだが――


彼は手を口元へ当て、

笑いを堪えるようにしながらペンを走らせ始めた。


……手ぇ、

震えてますけど?


そんな彼が書き出した内容は、

意外にも割とシンプルだった。


『即時配達』

『買取可能』

『物々交換可能』

『リクエスト機能あり』

『回数制限なし』


機能付きの

『ネット通販』


もう決定だなと脱帽しつつ、

一応、

彼の目を見るようにして、


『家に帰れるドア』

を指差す。


すると彼は、

少しも迷わず、


『最強』

の文字を指差した。


その横に、

ハテナマークまで書き添える。


『楽しもう!』


そんな声が聞こえてくるようだった。


ノリノリで付き合ってくれるのが、

なんだか嬉しい。


二人目は、

あっさり決まった。


次は自分の番だ!

そう思った瞬間、


何故だか、

不意に閃く。


――通販、


能力にしたらいいんじゃないか?


それなら、

『繋がらない』なんてオチもなくなる。


それに――


豪華客船。


『乗船承認機能』


これ、

攻め込まれたりしなさそうだし、

やっぱりいるな。


そう思って、

わざと顎へ拳を当てるように二回叩く。


二人の視線がこちらへ向いたのを確認してから、


『ネット通販』

『能力』


の文字を順番に指差した。


二人の反応は気になる。


だが、

そのままペンを走らせる。


『豪華客船』

を起点に矢印を入れ、


『乗船承認機能』

と書き足す。


……うん。


先に声へ出していたら、

絶対危なかった。


ちらりと、

二人の反応を窺う。


一人は、

『抜け道』

と書いてから、


「ずるい」

とでも言いたげな顔をしてくれた。


もう一人は、

早く続きをと言うように、

ノートをこちらへ押し出してくる。


……えっ、


巻きですか?


真球生成にするかどうか迷ってます、

みたいなジェスチャーを

挟むことは出来なさそうだ。


いや、

自分の中では、

既に未知の無双能力を選ぶ選択肢なんて

無いんだけど。


仕方ない。

――いきますか。


自分を落ち着かせるように、

一度だけ頷く。


そして、

『アカシックレコード』

に丸を付けた。


二人は、

自分の能力と噛み合う形を考えてくれているのだろうか。


そんなことを思っていると、

二人はゆっくり頷き、


それに応じる様に、

ノートへ書き始める。


『条件なし』

『制限なし』

『上限なし』


『クラスメイト全員が使えるアカシックレコード』


……うん。


個人的には、

かなり興奮している。


どうだ!


そんな気持ちでノートを見せると、

すかさず、


『上限』

『条件』

『制限』

に丸が付けられた。


そして、

『似てる』

と書かれる。


……あれ?


誰でも使えて、


回数制限なし。

同時使用可能。


どこでも使えて、

どんな状況でも発動できる。


しかも、

使用によるリスクなし。


……のつもりだったのに。


ちくしょう。


悔しさのあまり、

周囲を見渡す。


すると、

携帯を弄っている姿が目に入った。


――あっ。


携帯……。


なんで気付かなかったんだろう。

慌ててスマホを取り出し、


検索欄へ打ち込む。

『条件なし 制限なし・・・言い換え』


そして、

表示された言葉を見て

もう1度書き出す。


万象への接続制限なし。

閲覧制限なし。

使用回数制限なし。

場所・状況制限なし。

接続による代償なし。


そこまで書き出すと、

すかさず『万象』へ丸が付けられる。


そして二人が、

口パクで揃えて、


「厨二ぃ〜」


と笑うように言った。


だが、

ここで、少し考え込む。


『脳への影響が心配』

と、書く。


限界を超えた時、

どうなるのかが分からない。


難問だった。


三人で腕を組み、

考え始める。


一人が、

『整理』

と書いた。


……いいな。


そう思っていると、

もう一人も、


『選択肢』

と書き加える。


更に、


『実現』


『実現・トレース補助』

と続け、


完成形を見せるように並べた。


……なるほど。


一度、

三人分の内容を整理するように書き直してみる。


その間にも、

一人は横で、

大きな木のような落書きを描いていた。


……何だそれ。


そう思いながら、

書き終えたノートを二人へ向ける。


3人の目があった“瞬間”


豪華客船の内容を喋り始める。


終わると同時に、

もう一人もネット通販を口にした。


すると、

一人が『万象』へバツを書き込み、


初めて声をかけてきた。


「真理も、

世界記録も、

観測も、

絶対全部欲しいでしょ?」


「なら、

『接続制限なし』

だけでいいよ」


まるで、

導かれるようだった。


その言葉に、

思わず息を呑む。


するともう一人が、

ネット通販を言い終えているにも関わらず、


『接続媒体不要もね』


と書き足し、

小さく手を振ってくれる。


……ふっ、

二人ともぉ。


胸の奥が、

じんわりと熱くなる。


「接続制限なし――」


そう口にし始め・・・

持っていく物が決まった。

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