10 結末
ハインリヒ、ヤコブ、アドラー伯爵、そしてエラはそれぞれ犯行を認めた。
エラは殺人の罪、他の3人は死体損壊、死体遺棄、証拠隠滅といった然るべき罰が与えられるとレストレード警部は語った。
警官に連れられ屋敷を出て行こうとするエラに、私は問いかけた。
「あなたはなぜスカーレットを殺したのですか。
スカーレットとは初対面だったのでしょう。」
エラは目を伏せ、静かな声で語る。
「私は夜会であの人の踊りを初めて見て、この世にこんなにも美しいものは他にないと思いました。
私は一瞬たりともあの人から目が離せなかった。
でも、あの人は私に視線さへよこさかなかった。
あの人が近づくのは、お父様や兄さんのようなお金と権力を持った男性だけ。
あの人は自分の養分になる男性にしか興味がない。
私は相手にもされない。
なんて浅ましい、卑しいひとなんだろうと思って、すごく腹が立った。
殺したいほどに。
ナイフでさして血濡れたあの人がベッドへ倒れ込んだとき、私はとても満足しました。
あなたの最後は、私のものになったのよ。
あなたの命を奪ったのは、あなたが気にも留めなかった私なのよ。
そう言ってやった。
でも、私はあの人に狂わされた者の一人にすぎなかったんですね。」
カメリアが探偵になって初めて対峙した事件はこうして幕を閉じた。
公爵家に戻ってから、私はカメリアに事件のことを本にしてもいいかと尋ねた。
カメリアは「どうしてですの?」と首を傾げた。
「解決した事件が本になり世間に知られれば、探偵業を続けるのによい宣伝になります。
それになにより、カメリア様がどんな人物か正しく知ってもらうことができます。
私は人々がカメリア様の悪い噂をするのは嫌なのです。」
「ヒルダやこの屋敷で働いてくれる人たちが私を信じてくれています。
悪女と呼ばれても、私は気にしませんわ。
でも、ヒルダが書く本はぜひ読んでみたいわ。」
カメリアはそういって微笑んだ。
だから私はこうして彼女が解決した事件を記録することにした。
カメリアの活躍が人々に知れること、そして彼女のこれからの人生が輝かしいものになることを私は願っている。




