第二話 プロポーズしました。振られました。結婚しました。
「結婚してくれませんか?」
あ、と思った時にはもう遅かった。場が凍り付いた。
「はい?今何と?」
「…………あ、い、いえ!!何でもありません!!!」
「そうですか。しかし、一つだけ忠告しておきます。人を外見だけで判断して、すぐにそう言った軽率な発言をするのは控えた方がいいかと思いますよ?」
「は、はい……おっしゃる通りです。すみませんでした……」
俺は、心底後悔した。
自分でも不思議だ。どうしてこんなことを……。
「まぁ、でも、」
すると次の瞬間、ベルナが口を開いた。
「順序を踏めば、考えてあげないこともないですけど……。」
「へ?」
再び場が凍り付く。
ベルナの頬は少し赤らんでいるし、なにより、目がこれでもかって言うほど、泳いでいる。先ほど「一つだけ忠告する」と言っていた時の冷静な顔から打って変わって、今はただの女の子の顔だ。
「…………///!!で、では野菜でも買っていこうかしら!」
流石に無理があるが、ベルナの言葉に俺と父さんはあらがえなかった。
その後、ベルナは父さん力作のトメト(日本で言うトマト)を買って、どこかへ行ってしまった。
「ふぅ……一時はどうなることかと思ったが、アルベルト、お前なんてことを言い出すんだ?危うく首が飛びかけたぞ!?」
温厚な父さんが、珍しく声を荒げている。
なんでも、今のは、見方によっては不敬罪ということで、最悪、首が飛ぶらしい。
「無事であったからいいものの、これからはああ言うことは、言わんでくれよ?」
「分かったよ父さん。ごめんなさい」
ここは素直に謝っておこう。俺はこの家族が好きだ。父さんも母さんもクリスもみんないい人だ。なので、この家族は大切にしたいのだ。
俺は午前中の畑仕事を終えて、自室に戻っていた。俺の家は小さな木造の家だ。そのため、自室と言っても小さいもので、ベットと机が置いてあるだけで他は何もない。
俺はそんな部屋でベットに寝そべり、少し考えてみた。
————俺はどうして、あんなことを口走ったのだろう?
前の人生では、俺は結婚には興味がなかった。そもそもデブでブスだった俺には、恋愛など遠い世界の話だったのだ。
しかし、俺はあんなことを口走ってしまった。確かに、ベルナはとても美しい人だ。しかし、それだけでは説明がつかない。
————まさか、俺に結婚願望があったというのか?もしくはベルナとどこかで会ってる?
俺は記憶を探った。自分の中にある、アルベルト ロンドの記憶を。
結論、俺とベルナは初対面じゃない。一度だけ会っている。
場所は、魔の森だ。俺が14の時、魔の森に女の子が入っていくのを見た。止めようとしたが、彼女は聞かず、ずんずんと中を進んでいった。俺は追いかけ、そこで魔物に遭遇。持っていた短剣で応戦し、何とか女の子を逃がすことには成功したものの、俺は魔物にやられて、呪われたのだった。
そしてその三年後、俺(安藤 六太)が転生したという訳だ。
「世間は狭いね~」
俺は虚空にぽつりとつぶやく。
領主様は明日の昼まで滞在するらしい。まだチャンスはあると、俺は確信していた。
気づけば夜で、母さんに呼ばれて、俺は食卓へ向かった。
・・・
そのころ、村の宿屋では、
「あれって、あの時の男の子よね?~~~///!!!めっちゃかっこよくなってる……!!!」
「お嬢様?発言にはご注意を。どこでだれが聞いているかも、分かりませんので」
私————ベルナ グランディオは今、3年前のことを思い出していた。あの時、魔の森で助けてくれた男の子が、大きくなって、また私の前に現れたのだ。これはもう、運命の導きと言っていいのではないだろうか?
「お嬢様?お嬢様!夕食ですよ?少し気が抜けすぎですよ?あなたは領主なのですから、もう少しちゃんとしてもらわないと……」
人のときめきを邪魔してくるこのメイドは、ミーナ アルトバ。幼いころから住み込みで使用人をしてくれている、私の専属メイドだ。
「ミーナ、少し黙って?今いいとこなの」
「ダメです。さぁ、早く夕食に行きますよ?」
私はミーナに引きずられて、しぶしぶ宿屋の食堂へ向かった。
————でもやっぱり、運命感じるんだよなぁ……あと、カッコよかったし……我がグランディオ領の中心街でも、あんな美男子はいないし。ちょっと、惚れちゃったかも……?
鼓動の高鳴りは、少しずつ勢いを増した。
————あれ?彼のプロポーズに、私なんて返したっけ?
思い出した瞬間、私の顔は真っ青になるのだった。
・・・
翌朝、俺は宿屋に来ていた。
昨日の件をちゃんと謝って、再度結婚を申し込むためだ。
「緊張してきた……」
こんな緊張は、両親に投資が成功したことを報告した時以来だ。
その時、ベルナが使用人を連れて、宿屋から出て来た。
————使用人?昨日は姿が見えなかったが、馬車の中で待機していたのだろうか?
何はともあれ、俺は一歩前へ踏み出した。
「昨日は大変申し訳ありませんでした!!どうかお許しください!領主様!!」
俺は深々と頭を下げ、敬礼した。
ベルナは一瞬きょとんとした後、咳払いして、
「こちらこそ、偉そうなことを言ってしまい、ごめんなさい。それでなんだけど、よかったら、朝食、ご一緒しない?」
————……あれ?なんかおかしいぞ?
「え?あ、はい。それはまぁ喜んで……?」
俺があいまいな返事をすると、ベルナは顔をパァっと明るくして、
「まぁ!ほんとう?うれしいわ!早速あなたの家まで案内してくれないかしら?」
なんか一人舞い上がっていそうなので、隣の使用人にアイコンタクトを取って助けを求めるが、
「お嬢様がそうおっしゃるなら、私めも同行しましょう」
退路を断たれてしまった。
そうして、あれよあれよという間に、俺たちは同じ食卓を囲んでいた。
父さんは魂が抜けたような顔をし、クリスは好奇心と敬遠が混ざった複雑な表情をし、母さんは一人喜んで朝食を作った。
そうして、少なくとも、俺が目覚めてからで、一番豪華な朝食が完成した。
「おいしそう!いただきます!」
美しい所作が少し崩れ、素のベルナが出たようだった。しかし、こっちの方が幾分か、親しみやすさを感じた。
そうして時は過ぎ、他愛のない世間話や、野菜の話などをしつつ、食事は進んだ。ちなみに、使用人の人は母さんに、食卓に並ぶサンドイッチの作り方を教わっていた。
食事も終盤というところ、俺たちの前には朝のコヒー(日本語で言うコーヒーと似たようなもの)が並べられた。クリスはまだコヒーが飲めないのでミルクだ。
「さて、本題に入りましょうか。アルベルトさん、婚約者はいないのよね?」
俺は、思わず目の前の領主様にコヒーを噴き出すところだった。
「…………は、へ???あ、はい。いません」
俺は何とか喉奥にコヒーを押し込み、言葉を続ける。
「よかった。では、もしよければ、私と結婚していただけませんか?」
————聞き間違いだ。そう聞き間違いだ。
「アルベルトさん?聞いてますか?私と結婚していただけませんの?」
————落ち着け俺。どうやら聞き間違いじゃなさそうだ……。
「正気ですか?」
「昨日あなたがプロポーズしてきたんでしょう?」
「順序を踏むとか言ってたような……」
「そ、そんなこと言ってませんわ!」
俺は覚えているが、本人は認めたくないらしい。
「なぜ俺なんです?」
「3年前助けてくれたでしょう?覚えてませんの?」
すると、クリスがこちらを向いて身を乗り出してきた。
「ええ!?おにーちゃん、領主様を助けたの!?」
「えっと、まぁ、確かにそんなこともあったなぁ……あはは……」
気まずい……。視線が痛い。
「あ、もし断ったら、不敬罪で首切りますね?」
いいこと考えた!みたいな顔でベルナはにっこり笑いながら言った。
いやいや、怖い怖い!?
「じゃ、じゃあ、結婚します……?」
「私のこと好きじゃない?」
「大好きです」
「じゃあ決まりね」
口が勝手に動いていた。
ということで、俺とベルナは婚約したのだった。
いやどういうことだよ!?!?!?
続く
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ついに結婚した二人!ここから新婚生活が始まります!
次回もお楽しみに!
次回
新婚生活スタートしました。嫁がツンツンしています。嫁がデレだしました。




