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第二十話 半休日

転移三十四日目、攻略開始から三十二日目 攻略階層三十四階


 今日はオレたち三人が、事前に申請して、了承を貰っていたいた半休日だ。半休日はんきゅうびはノルマも半分となるので、午前中の下層討伐を早々に終わらせて、昼前にはダンジョンを出た。

 何をするかは決めてはいなかったのだが、お昼を山田さん渡辺さんが常連となっている元老舗和菓子店の異菓子バックスで食べることにして、まったりと午後をスタートさせた。


 ちょっとお洒落な店内で、ゆったりとくつろげる椅子に座って、またピクニックに行くのも良いけど、居残り組の人たちに作って貰っている武器や盾の製作を手伝うか、それとも久し振りにデュエルでもしようか? などと三人で話し合う。


 鈴木は元書店の魔法書店に行ってみたいと言ってきた。そして佐藤は武器防具店だ。

 オレたち三人とも、そんな店で何かを買えるような貯金はないので、見るだけの冷やかし客となるのだが、異世界ダンジョンなのに魔法もないし、武器も初期装備からちょっとだけグレードが上がった、のぼり竿(短)やコンパネ棒だ。


 スキルカードは、NPC店長に聞いても「カードに書いてあるスキルが習得出来ますよ」と言うだけで、肝心のカードの文字が読めないから、なんだかさっぱり分からないままである。


 ちょっと異世界チックなものとして、魔法書とか武器は面白そうだと決まり、まずは魔法書店を三人でちょっとのぞいてみることにした。


 元書店な魔法書店ではあるのだが、『月刊異世界』とか『タワマンダンジョン大解剖』その他には、『ダンジョンモンスター大辞典』などの、魔法書ではない普通の雑誌らしきものまで売っていた。しかも新入荷らしい。

 残念ながらプラスチック製のバンドが本の縦横斜めに掛けられていて、中を覗き見ることは出来ないようになっていた。異世界もなかなかに世知辛い。


『タワマンダンジョン大解剖』を見れば、今後のダンジョン攻略が有利になるとは思うのだが、値段が金貨千百枚だった。

『ダンジョンモンスター大辞典』は金貨二千二百枚と倍である。そしてその厚さをよく見ると、下に雑誌と同じ大きさの付録の箱が付いていて、その箱にゾンビフィギュアが豪華付録として入っているようだ。

 大辞典と銘打っているのに、本の部分はパンフレットくらいの厚さしかない。

 つまりゾンビフィギュアが金貨二千枚とかなんだろう。


 この世界にも雑誌の業界団体があって、付録の自主規制が緩和されたんだろうか? などと思っていると、ゾンビフィギュアのオプションとして、赤い三角帽子が入っていることを発見した佐藤が、イヤなことでも思い出したのか、渋い顔をしていた。


 これらの本のことは、一応おっさんに報告を上げることにして、三人で魔法書のコーナーへと移動した。


 魔法書はガラスケースの中に入っていて、手に取ることすらも出来なくなっていたが、そのうち一冊の魔法書の最初のページが開かれていて、中が読めるようになっていた。

 三人で駆け寄って見ると、スキルカードと違って日本語だ。ファイヤーボール、火魔法の魔法書らしい。


 そして隣のページを見ると、「バス ガス バクハツ」から始まっていて、その繰り返しがゲシュタルト崩壊しそうな程に続いていた。

 これを詠唱でもするのだろうか?


 佐藤が「な、」と言ったまま絶句していた。


 オレは二人に目配せをして首を振り、見なかったことにした。



 そして魔法書店を脱出し、気を取り直して武器防具店へと向かった。

 武器防具店はオレにとって、あまり良い思い出のない場所だ。カウンターには例の奴との応対をしたNPC店長が居て、店に入ってきたオレたちをじっと見ている。


 その不躾ぶしつけな視線を無視して、棚に掛けてある武器や防具を三人で見ていく。


 壁に掛けてある武器は、かなり充実した品揃えだ。

 剣や大剣などの他、頭にトゲトゲの鉄球が付いたモーニングスター、ダンジョン内では振り回せそうにない、死神が持つようなデスサイズとか、中中コンビの二人が喜びそうな日本刀のようなものもあった。

 しかしお高い。金貨五千枚とか誰が買うんだろうか?


 ゴブリン相手では必要なさそうではあるが、今後のことも考えて、ちょっと触らせてもらおうかと、NPC店長のほうを見て口を開き掛けたところで、早口に「お金が足りません」と言ってきやがった。


 知ってるよ。面白くないオレは、のぼり竿(短)を出して、「これの買い取りをお願いしたいんですが」と奴に聞いてみる。


 NPC店長はちょっと固まった後、「お金が足りません」と言ってきた。今度はゆっくりした口調だ。


 ん?お金が足りないってことは、のぼり竿(短)が超高額買い取り品で、店にある金貨じゃあ買い取りが出来ないってことか? と一瞬喜ぶが、奴はまた早口に戻って、「お金になりません」と言い直してきやがった。さらになんか口元をゆがめたような気がする。


 まったく感じの悪い店だ。まるで古くからある病院近くの青果店や生花店のようだ。


 意味があるんだか、ないんだか分からないような店ばっかりだ。リフレッシュのつもりが飛んだ散策になってしまった。


 三人で昼食を食べた異菓子バックスに戻り、イセカイ・チースケーキなどの甘い物を食べて落ち着きを取り戻した。

 そのまま何もやる気が起きずに、ぐたっと過ごした。


 そんな話を夕食時におっさんに話すと、なかなか楽しそうな休日だったんですね。と、言って笑っていた。


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