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【完結!】ぼくらのオハコビ竜-あなたの翼になりましょう-  作者: しろこ
第5章『夢と魔法のエッグポッド』
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「わああ……ここが……」



小さなドームの中を思わせるオレンジ色の内壁。


ゆったりと明滅する青や緑のランプ。


そして、温水プールにつかって浮いているような心地よさ。



エッグポッドの中だ。下から天井まで、五メートルと少しくらいかな。


ちゃんと息もできる。まるで宇宙カプセルに乗っている気分だ――。



――ピピピッ。ピコン!



軽快な電子音が聞こえたかと思うと、どこからともなく女性の声が降ってきた。



《――乗客二名の搭乗を確認しました。


搭乗者は、こちらのデバイスを装着してください》



ふたりの顔の前に、


何やらスキーゴーグルのようなものが沈むように下りてきた。


ハルトのは青色に、スズカのはピンクにデザインされた、


光沢も鮮やかなゴーグルだ。



『――あのう、おふたりとも、聞こえますか?』



今度はフラップの声が聞こえてきた。いったいどこから?



『それは、ポッドの外を見ることができる、ゴーグル型の装置なんです。


ぼくのように空を飛ぶ感覚を楽しんでもらうためには、必要なゴーグルかな』



たしかに、このキャビンの中では外の様子が分からない。


このゴーグルで、フラップと同じように空の光景を見られるなら、


いかにも空を飛んでいる気分を味わうことができそうだ。



「だってさ、スズカちゃん。つけてみようよ」



ふたりはゴーグルを装着した。


目の前が遮光レンズのように青黒くくすむだけで、べつに変わったところはない。



そこへ、また女性の案内音声が聞こえてきた。



《――二名のデバイスの装着を、確認しました。


これより、VR・シンクロ・フライトモードへの移行準備に入ります。


フライターは、竜の秘術を行使してください》



『了解! これより、秘術コンビネーションジョイフル・エアロシェアを、


レベルⅤまで解放いたします。


ハルトくん、スズカさん。ここからがすごいんだよ!』



《――同時に、装着いただいたデバイスを、


外部のライブカメラ映像に接続いたします。


接続直後、一瞬まぶしくなるため、


搭乗者は目を閉じることをおすすめいたします》



言われるまま、ふたりはそっと目を閉じた。


ハルトは、フラップが使ったわけの分からない専門語を頭で反すうしながら、


外の映像が見えるようになるくらいなら、


べつに驚かないぞと自分に言い聞かせていた。



ふたりの体に、大イタチのような空気の流れがするするとまとわりつく――


と同時に、まぶたのむこう側が一瞬、カッと明るくなって、


まぶたの赤みが際立った。



「わああ!」



ふたりが目を開くと、そこには離陸用デッキの光景が広がっていた。


他のオハコビ竜たちやターミナル利用客の姿も見える。


他のペアはもうみんなポッドに入ったようだ。



「こ、れ、すす、すごい……!」



スズカがたまげたように両手で口をふさぎながら、


こちらをチラリ、チラリと助けをもとめるかのように見ている。


ハルトは後ろをふり返ってみた。後ろにはキャビンの明るい内壁が見えている。


そうか、これは、キャビンの前の壁がライブ映像に『接続』されて、


透けているように見えているのか。


その証拠に、フラップが中のふたりにむかってふっている手のひらが、


尋常でないほど大きく見える。


自分たちが小さくなったことを痛感できる。


ためしに、ゴーグルを外したり、またつけたりを繰り返してみた――


やっぱりそうだ。外しているあいだは、外のライブ映像が見えなくなる。



『さあ、楽しいフライトのお時間ですよ!』



フラップの活気ある一言のあとに、


他の十一頭が、イエーイ! と叫ぶ声が聞こえた。



『ぼくたちの秘術で、みなさんにも上空の風や、


風圧の変化をほどよく快適に楽しんでもらえるように、


全身の触覚をシェアさせてもらいました。


上空特有の寒さはありませんが、やや刺激的なフライトになると思うので、


もしも怖く感じたらすぐに言ってくださいね!』



「キミたちって、そんなことまでできるの!?」


と、ハルトは聞いた。



『ええ、オハコビ竜はホントにすごいんですよ~。


――みなさん! 心の準備はよろしいですか?


いち、にの、さん! で飛び立ちますからね。いくよ~!』



ドクン、ドクン、ドクン――興奮で自分の心臓が高鳴る音を、ハルトはかすかに聞いた。



いーち、にーの、さん!!


十二頭の竜は床をけり、いっせいに宙に舞いあがった。


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