4.すき間-隣国の姫こと第一側妃
王の視線が彼を守る護衛に向けられ、何とも言えない潤んだ瞳で見ているのに気がついて、思わず手をギュッと握りしめた。
嫁いできた当初に王を見た途端、心が高鳴った。
金色の流れるような髪に美しい顔、それに自分の国いる護衛とは違い、筋肉質だが細身で引き締まったその姿に思わず一目惚れをした。
しかし王は、すぐには気がつかなかったが彼を守る護衛に好意を持っているようだ。
王は隣国の姫である自分に政治上の思惑があるだけで、他には何の感情も抱いていない。
王の護衛を見る度に悔しさと同時に羨ましさが込み上がった。
かの人の護衛は、自分には持ちえないものをたくさん持っていた。
この世界には珍しい漆黒の髪と瞳。
そしてなによりも高い魔力を・・・。
自分ももちろん周囲にいる高位貴族の中では群を抜いて高いが、さすがに王の護衛ほどではない。
お陰で何度も閨をともにしていながら、なかなか王の子を生せなかった。
苦しい。
昨晩も王の腕の中にいながらも、王は扉の前にいる護衛を思っているのかと目線が扉に向いてしまう。
もっとも世の中は面白いもので、王の護衛は自分が自国から連れてきた護衛に惚れているようだ。
昨晩も何度も目線が自分の護衛に向いていた。
少し胸がすく。
本人は周囲にそれを気づかれていないと思っているようだが、王も自分も知っていた。
しかし、その自国から連れて来た護衛が自分を愛しているかと言うと現実はそうではない。
その想いは愛ではなく、たぶん憧憬だろう。
今、衝立を隔てているとはいえ、同室で着替えていても彼の目線に肉欲が混じることはない。
それに本人は気づいていないようだが、教えてやるほど出来た人間でもない。
そこまで考えたところで侍女がパタパタと忙しなく手紙を持って、部屋に入って来た。
王の第二側妃からの招待状だ。
まだだれも王の子を身籠っていないので、今は地位で順位づけられているだけで正妃はいない状態だ。
自国の為にも、早く王の子をなさねばならない。
第一側妃は侍女から差し出された招待状をギュッと握りつぶした。
着替えが終わり衝立が取り払われ、自分の護衛である聖に第二側妃に招待されているので昼頃、彼女が持っている庭に行くことを告げると、一旦彼を下がらせた。
行きたくないがこの国にいる高位貴族に連なる第二側妃の招待に応じないわけにはいかない。
侍女に招待に応じることを相手側に伝えるように申し付けると、彼女は大きな溜息をついてから、食事をするために立ち上がった。