第八十話 勇者
次の日、トルテさんはウォルフとデートに出かけ、ルイさんはロランさんを連れて出かけ、ノエルさんは討伐に出かけた。
「アクアさん、私何だか凄く嫌な予感がします。」
私は自室のベッドの上で、シーツに包まりながら小刻みに震えていた。
「きっと、なんとかなるさ!」
アクアさんはあっけらかんと、ケラケラ笑っている。
「失礼する。」
アルトの声が部屋響くと、ドアからは金色の髪に青い目の、金色に輝く鎧を身につけた、若い女性が立っていた。
私は嫌な予感を感じながら、おそるおそる問いかける。
「もしかして、勇者ですか?」
勇者らしき女性は、輝く様な笑みを浮かべた。
「そうだ。私が勇者だ。同士よ。」
ん?同士?
疑問に思ったのは私だけじゃなく、アクアさんも驚いていて、警戒する様に私の前に立っている。
「勇者って言ったよな。あんた何か勘違いしてないか?俺は魔王の部下だぜ。普通なら、俺を殺しに来た、とか言って、切りかかってくるもんだと思うけどな。」
勇者は、笑みを浮かべたまま特に動揺を見せる事なく、スラスラと語る。
「お互いに、共通の敵ができたから、とだけ言っておこう。」
笑みを浮かべたままの勇者に、アクアさんは警戒を解こうとはしなかった。
「なんでも、この世界の神を倒さなくてはいけないらしい。」
「神様を?」
神を倒す。聞き間違いじゃないのかと、じっと勇者を見つめた。
「理由は?まさか、何の説明もなしに、唯神を倒せ、なんて言われて、はい、そうですか。とかいう都合のいい展開になるとでも思ってんのかよ?」
「神を倒せば、褒美に、一人につき一回願いを叶えてくれるそうだ。だが、戦いに参加できるのは、前世を彼方の世界で生きていた者だけだと聞いた。」
勇者の言葉に、アクアさんはチッと舌打ちをする。
「大方、利用できるものはなんでも使うって考えなんだろうな。」
「ところで、何で神様を倒す事になったんですか?」
この世界の神様を、仮に私達が倒せたとする。そうしたら、この世界は崩壊するとか、そういう危機的状況に陥るのではないのだろうか?
「衰退だ。」
「衰退?」
勇者からにこやかな笑みが消え、冷たい表情に変わる。
「今の神が役立たずだから、消せってことだろ。」
吐き捨てるように呟いたアクアさんの言葉に、勇者は冷たい表情のまま頷いた。
「ご名答、その通りだ。神を倒せば、別の適任者が神になる。それは倒した者の中からランダムで決まるそうだ。」
「それって、乗っ取り?」
「そうとも言うな。」
私の呟きに、勇者は正解とでも言うように、肯定した。
「早速だが、手始めに天界に攻め込もうか。」
「え!?」
「はあ。」
笑顔で言い放つ勇者の言葉に、私は驚き、アクアさんはため息を吐いた。




