第六十九話 まだまだ迷子
去ってしまったクラウスさん達を探すのは諦めて、トコトコと私とベルタはまた歩き出した。歩くと言ってもベルタは羽で飛んでいると言った方が正しいけど。
せめて何か人がいそうな状況とか、帰り道の目印とかあればいいのに、と嘆きながら歩いていると、何やらいい匂いが漂ってきた事に気が付く。前にマスターのところで食べた料理の匂いより、私の世界の食べ物に近い匂いだった。
何と無く気になった私は、ベルタの制止も聞かず、ただ匂いのする方向を目指して進んでいった。ガサゴソと気をかき分けて進んでいくと、そこには半袖のTシャツとジーンズのズボンを着用した女の子が、美味しそうにパンをを食べていた。
お、美味しそう!じゃなくて、何で明らかに私と同じ日本人の子がいるの!?私は何でここに居るのか、後パンを少しでいいから食べたいなと考えていた。食欲が勝り私は少女を見つけて物の数秒で話しかけることを決めた。
「すいません!パンを一口でいいからください!」
少女は私を見ると笑顔で、
「いいよ。」
ポンと袋に入ったジャムパンを投げ渡してくれた。貰ったパンをはむハムと食べていると、すでに食べ終わった少女が意地悪そうに笑っていた。
「パンあげたからここがどこなのか、後、いろいろ情報教えてくれない。」
パンを黙々と食べながら、疑問形で聞いてはいるのに何故か疑問形に聞こえない。と私は詐欺にでもあったかのような気分になっていた。パンは貰ったんだし、それくらいならいいかな。と色々質問に答えた。
「ここどこ?」
「森です。」
「あんた誰?」
「躑躅です。」
「躑躅?」
「はい。」
いくつか質問を繰り返していると、目の前の少女は私の名前を聞いて何やら考え事をしている様子だった。まあ、このファンタジーな世界で私の名前を聞けば知っている人は、不思議に思うでしょう。何だか日本人みたいな名前だなと。
「なあ、あんた、」
そう問いかけようとした少女の後ろから、
「躑躅!」
アクアさんが飛び出してきて、少女の背中に着地してきた。
「ぐぼっ!?」
アクアさん見た目は軽そうとは言え、あれだけのスピードと高さがあれば結構痛いですよね。と潰れたカエルのような声を出して、ピクピクと痙攣する虫の息な少女を眺めてそう思っていた。




