第五十七話 原因
「すまんツツジ!レイラがまたやらかしたようでな。」
「また?」
エルメルの発言に、私はキョトンと驚いた。何か前例でもあるのだろうか?
「レイラがアクアに対して恋心を抱いているのは、知ってるだろう?」
「はい。」
さっきレイラさんから聞いていたので、私はその通りに答えた。
「まあ、物の見事に振られて、それが面白くなかったレイラが、アクアに会う度にちょっかいを出すようになったんだ。」
「……。」
別に、話を聞いてても不思議なことではないと思ってた。ただレイラさんがそこまで子供っぽい人だとは思わなかったけど、よくあるツンデレのような人がとる典型的な行動パターンだと思った。
「レイラの悪戯は達が悪いんだよ。」
エルメルがあまりにも眉を歪めて言うものだから、何となく私もアクアさんの怒りに気持ちが分かってきた。要するにアクアさんの地雷を踏みぬいたと。
「まあ、本人に内緒で言うのも悪いし内容は伏せておくが、俺が聞いてても、あ、やばいって思うような内容だった。」
それはもう内容を暴露しているようなものなのでは?とは言わないでおいた。
「取り敢えず、作戦と言うものを聞かせてもらえますか?それを聞いたら、私たちは帰らせてもらいます。」
お互いにその方が被害が少ないでしょう。と思った。
「作戦と言ってもだな、今回とんでもない物を発見した。」
「とんでもない物?」
何やら嫌な予感のする言葉に、私は眉を顰める。
「魔物の化石だ。」
「魔物の化石!?」
初めて聞く言葉に困惑する。魔物の化石なんてあるんだ。いや、それ以前に魔物が化石になるほどの歴史がこの世界にはあったんだ。
「その魔物はおそらく、イフリート、かつてこの世界すべてを焼き尽くしたと言われる魔物だ。」
その言葉に私は衝撃を受ける。イフリートって炎の精霊とか神とかそういう形容詞の付いた精霊っていうイメージしか無かったけど、真剣な表情で語るエルメルに、私は無理やり自分を納得させた。
「でも、それが本当だとして、化石ならもう死んでるはずでは?」
私の問いにエルメルは暗い表情になった。
「如何やら化石の一部にひびが入り、そこから強烈な魔力が漏れ出ている様子だった。」
その言葉に私も固まる。もし、化石の中からイフリートが出てきたりなんかしたら、また、この世界は焼き尽くされてしまう?とんでもない情報に私はカタカタと震えた。
「そこで私たちは、それぞれの種族と手を組み、イフリートの化石の討伐に挑もうと思う!」
「ええ!?」
嘗て、一つの世界を滅ぼそうとした魔物の討伐、いくら今が化石の状態とはいえ、そんな無茶なこと出来るのだろうか?私はかつてない不安を感じていた。
いや、それよりも化石の中からイフリートが復活してしまったら、どうするんだろうと私は思った。




