第五十四話 恐喝
「有名人なアクアが仲間にした人物が、どんな奴だと思ってみていればこんな子供で、ただものじゃないんだろうと思っていれば案の定だったわけだ。」
「久しぶりだな。レイラ。」
眉を歪め苛ついた表情でアクアさんが呟いた。
「そうだな。最後に会ったのは、別れた後だったっけ?」
レイラと呼ばれた人物は、ニヤニヤと笑いながらそう答えた。
じっと観察してみると、金色の長い髪にエメラルドの瞳、アクアさんと似通ったスレンダーな体系に加え、エルフなのかな?耳が尖っていた。
じっと観察していると、私の視線に気づいてレイラさんと目が会った。吃驚してアクアさんの後ろに隠れた。
「随分と可愛らしい子だね。将来が楽しみだ。」
レイラさんは微笑みながらこっちに近づいてきた。
「ちょっと!誰だか知らないけど家のツツジに近づかないでくれる!?」
私を庇うようにルイさんとロランさんがレイラさんと対峙する。そしてロランさんを軽く眺めた後にルイさんを見て顔を歪めた。
「生憎、綺麗なものは好きだけど、オカマは嫌いなんだ。」
レイラの一言にルイがキレた。
「誰がオカマだ!くたばれ!」
そう言って近くにロランさんがいるのにも拘らずルイさんは強大な魔法を発動させた。
「ちょ、ルイ!?」
ロランさんは魔法が発動したのと同時に、後ろに飛ぶように下がった。咄嗟の反応のおかげで、ロランさんの体には傷一つ、ついていなかった。
「危ないな。」
レイラさんにも傷一つついて無かった。パンパンっと軽く服に着いたほこりを払うと、ルイさんに向けて弓を放った。私は放たれた矢を見つめると、あることに気が付いた。
「あの弓矢、魔法が付いてる!?」
私が驚きの声を上げている中、ルイさんは放たれた矢をかわしていた。
「ふん!そんな遅い弓矢が当たるわけないでしょう!」
ルイさんのかわした弓矢がまたルイさんの方向に転換して向かっていた。
「ルイ!?」
弓矢が迫っていることに気が付いていないルイさんに向かって、危険を察知させようとロランさんが声を張り上げた。ルイさんも唯ならないロランさんの声に気が付いて、後ろを振り向いた。すると、目の前にかわしたはずの弓矢が、迫ってきていたことに気付く。
目を見開き、驚きの表情を見せたものの、なんなくかわす。
「おやすみ。」
弓矢とは反対の方向からレイラさんがルイさんに向けて巨大な風の魔法を放っていた。とてつもない轟音が響き、ロランさんが叫び声をあげる。
「ルイ!?」
明らかにかわすことのできない状態で、あんな大規模の魔法を至近距離から喰らえば、大怪我をしている。私もそう考え、ルイさんのところに近づく。
「捕まえた。」
嬉しそうな声がしたと思ったら、私の視界が高くなり、そこでレイラさんに抱き上げられた状態だと気が付いた。その状況に焦りを感じ必死に抵抗をする。
「離してください!」
「だめ。」
「テメエ、躑躅から手を放せ!」
アクアさんがレイラさんに向けて水の魔法を放った。レイラさんは、それを軽くかわすと、私を抱き上げた状態のまま、アクアさんを風の魔法で拘束する。
「ふざけんなよ!離しやがれ!」
アクアさんの手足には風が鎖の様に巻かれている。そして何を思ったのか、アクアさんも抱き上げると、地面に倒れているルイさんの方を軽く眺めてから、その場を走り去った。
ドンドン遠くなっていく景色を眺めて、ロランさんの悲痛な叫び声が聞こえた。
「ルイ!」




