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第四十話 闇

「結局、デッドケンタウロスは躑躅が倒したってことに変わりはないんだろ?」


ため息をつきながらアクアさんはそう言った。


「でも、私にも訳が分からなくて、」


 そう、あの時の私は意識が朦朧として、魔法を使った記憶なんて全くなかった。覚えていたことと言えば、嫌なことを思い出したら、私の周りに黒い何かが出てきて、デッドケンタウロスを丸呑みにしたという事だけだった。


「でも、意外だね。僕が寝ている間に、そんな危機的状況に発展していたなんて。」


「寝ていた奴が何を偉そうに、」


澄まし顔で紅茶を啜るロランさんを、アクアさんは不機嫌そうに見ていた。


「でも、俺も、納得のいかないことがあるんだ。」


「何だよ?」


「アクア、君も可笑しいとは思わなかった?」


「……。」


 思い当たることがあるのか、アクアさんは沈黙して真剣な表情でノエルさんを見つめた。


「最初に疑問に思ったことはデッドケンタウロスに魔法が効かなかったこと。普通ならあり得ない。」


「確かに、俺も最初はそう思った。でも、それだけなら変異種っていう可能性もあるぜ?」


「俺からも一ついい?」


間から割り込むようにして、ロランさんが話し始める。


「魔王の部下という称号を貰っているこの俺が、そんな至近距離にモンスターが迫っていたのにも拘らず、起きなかったって可笑しくない?」


「「!?」」


何かに気が付いたように、アクアさんとノエルさんが目を見張った。


「誰かに仕向けられた!?」


「でも、可能性は高いよ。アクアがおふざけでつけたチーム名が原因か、それとも個人的に恨みを持つ者の仕業かは不明だけどね。」


無表情でロランさんが小声で語った。


 でも、それが本当なら物凄く危ないのでは?そう思いそれぞれ、顔を眺めて見たけど誰も不安そうな顔なんてしていなくて、皆はまるで獲物を見つけたような獰猛で凶悪な笑みを浮かべていた。


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