第三十九話 デッドケンタウロス
何処から出したのか、また弓矢を構えググッと弦を引っ張り弓矢を撃ってきた。
「きゃああ!」
目の前でしかも至近距離で攻撃される。想像はしていたとはいえ、いざ現実で直面しても思わず身の危険を感じ反射的に目を閉じてしまった。
「コオオオオッ」
不思議な呼吸音に私は思わず目を開けた。するとノエルさんがさっきと同じように、口から真っ赤な炎を吹き弓矢を溶かしていた。
「あんまり俺を舐めないでくれる?この程度の攻撃で、俺たちに傷一つ付けられるわけないだろ?」
何時になく好戦的な姿に、私は少し驚いた。アクアさんの時と言い、意外とギャップの多い方なんですね。こう、いつものイメージで行くと紳士的なんですけど今の状態だと、喧嘩の強い不良の様な感じです。
デッドケンタウロスはブルルッと身を震わせると、弓矢を捨て、二本の腕でノエルさんに掴みかかった。
「だからさ、俺を舐めるなって言ってんだろ。大体、遠距離の武器を持ってるくせに至近距離に近づくこと自体、バカのすることでしょ。」
大した力もない癖に、最後にそう呟くと、ノエルさんは至近距離でさっきよりも大きな炎を吐いた。
「っと危ねえ!」
あまりの威力と、範囲に私はアクアさんの魔法で保護された。ロランさんも近くに居た。戦闘に入った時にノエルさんが投げ捨てたのを回収していたみたいだった。
「zzz」
未だに眠り続けているロランさんを見て、少しばかり安心した。眠っている間に死んでましたとか、結構嫌な死因だよねと思いながら。
「この!駄馬が!」
ノエルさんの苦しみながら発した罵声に、何事かとノエルさんを見ると、ノエルさんのブレスを浴びながら四本ある内の前足を二本使って、ノエルさんに攻撃していた。
「ノエルさん!?」
可笑しい、何でブレスで攻撃されてるのに、傷が無いの?
そう思った時には既にノエルさんが攻撃を喰らい、遠くに蹴っ飛ばされた後だった。
ノエルさんと言う敵が消えると、デッドケンタウロスは私たちの方向を向いた。そして、私たちをターゲットにすると、そのまま突進してきた。
「躑躅!下がってろ!」
そう言ってアクアさんは私を突き飛ばすと、水の魔法で攻撃した。だけど、デッドケンタウロスは無傷のままだった。
「おいおい、魔法が聞かないなんて聞いてねえぞ!?」
最悪だ!とアクアさんの叫び声を聞きながら、私は、ただ見ていることしかできなかった。あれだけ特訓に付き合ってもらったのに、いざ本番となると、動けない自分に歯痒さと、口惜しさを感じた。
アクアさんがノエルさんと同じように蹴っ飛ばされると、デッドケンタウロスは私をじっと見つめてきた。
ドクンドクンと心臓が苦しかった。
まるでトルテさんに刺された時の様な、あの嫌な記憶を思い出した。
「いやああああああああああ!」
嫌な記憶のフラッシュバックで、私の中の何かが弾けた。私の体から何か黒い影のようなものが出ると、デッドケンタウロスを、パクリと飲み込んでしまった。
ハアッハアッと息切れを起こしていると、遠くに飛ばされていたはずのアクアさんとノエルさんが戻ってきて驚いたように私を見つめていた。




