空に輝く月と星。
「次代を担うヒーローも、今日はーーいや、ここ最近元気がなかった。それはこの引っ越しの話が関係していたのか? 」
「ーーそれもあるんだけど……。」
「(内緒話、こっちからもするけど、さっきの俺に言った話、ヒーローくんにも話してあげてくれない? 君だけ連れて行けないっていうか、一緒に引っ越せないの、気にしてるみたいで……。)」
「(成る程ーーそうだったか! )俺はヒーローくんとも内緒話が必要みたいだ♪ 」
ベンチーーこの公園のヒーローが、後任に選んだヒーロー、俺たちの幼馴染みにも内緒話をすることを楽しそうに言った。
ーー実はヒーローくんの元気のない原因は、俺にもある。隠し事をするなと言われた俺が引っ越しを告げたまでは良かった。その後、ヒーローくんも引っ越す事を俺に告げた事も。そしてその後だ。問題だったのは。
「引っ越し先で直ぐに会えるじゃん!! 涙を返してよ!! 」
「ーーーーもういい、お前なんて知らない。会えるかもしれない距離ーーでも、だとしても、もう会わない。」
「やめてくださいーー、喧嘩はーー……。」
「そうだよ、二人が喧嘩したら、その子をこっち側に連れて来れるし、おもちゃにするからこっちは良いけど。」
「しないでくれない!? 」
「ジョークジョーク、冗談だよ。本気にしないで? 」
「その台詞、真似しても良い? 」
「ーー……。良いけど、どうしたの? 」
「あ〜……。親子喧嘩中。」
「巴さんが母さんなら、こっちにいるこの人について行くって俺、言ったからね♪ 」
可愛い勘違いってこれか!
キスした時の花が実になり、その種から生まれた俺たちの子供、こいつは俺と大麻の子だ。
大麻の母親が巴さんになるという話を、自分の母親が巴さんになると勘違いし続けて少し拗らせたらしかった。皆んなからそう聞いた。今。
お前の母さん役は大麻の白い花にキスして、育てた俺だぞ? って言っても聞いてくれなかった。確かに拗らせているーーついには俺を父親にして巴さんを母親にしたいと言ってきた。あ、それだ。
「良いぜ♪ 」
「ああ、それで良い! 」
「なし崩し的に私が母になります。ーー大麻くんたちの。」
つまり、大麻も巴になる。苗字が。我が子の言う通り俺が父親になって、巴になった大麻を嫁にすれば良いのだ。子の言質は取った。
「え? え? ーーあ、……。」
やっと気づいたらしい俺たちの子が、黙ってから百面相をして、それから照れて隠れたがった。
「誰か俺のこと隠してくれない? ーーちょっと恥ずかしくなったから……。」
「隠してあげようか? ぁ、俺のねぇさんに隠してもらう? 」
「うん、ありがと。」
「巴さん、その人たちのこと、迷惑じゃなければよろしくお願いします。」
「は〜い、よろしくお願いされます♪ 」
「ーーってことは、おれのおばあちゃんになるね、巴さん♪ 」
「あ! ーーあああああああ、おばあちゃんに! 」
「(おばあちゃんみたいって言っちゃったことがあるんだ……。)」
凄いな。それでか? 大麻が巴さんを母親にしたいって言ったのは……。目を配せたら、そうだという肯定の瞳が返ってきた。
「じゃあ、またな。」
「あぁ。」
「え? 待って? おれたちはさよならなの? 」
「騒ぎになったら、今度は処分かもしれなだろ? 大麻たちは。」
いつも、良い人たちとラッキーとで処分を免れているーーけれど、いつ処分されたり、燃やされたりしたっておかしくない。持ち出せば、騒ぎになるかもしれない。だから、大麻と我が子とも、古柯たちとも、お別れだ。
「でもーー……。」
「会いに来てくれるだろ? な? 」
「……。迷子にならなければ。」
「はは、"らしい"や。」
『あのね、おれもたまに迷子になるんだ。』と、子が話してくれた。
植物達は、葉の一片にも目があって、その目で葉の一片から見える景色や風景、光景を見ることが出来る。
そうやって散歩をした時に、迷子になったらしいのだ。
「毎回じゃないから、おれは大麻さんに似てる。だけど、似たところ、たくさんーーあるから……。」
"ばいばい、またね。"、"元気で居てね。"ーー人も植物も、動物も、ーー皆んな、同じ。同じ様に別れを惜しんだ。
ある時は風に乗って、ある時は鳥に運んでもらってーー会いに来てくれる家族たち。
俺たちの再会は、またもう少し先。
2024.7.8




