4-08. ポスター
翌朝、マリーとヒナが完成したポスターを手に店へやって来た。
仕込みを終えてシャッターを上げる前、壁面の一等地に、ヒナお別れ会の告知ポスターを貼った。
内容は読めないものの、ヒナの字だと分かった。マリーが作ったらしい色とりどりの切り紙が貼られた、華やかなポスターだ。
店を訪れる客たちはみんな真新しいポスターに目を留め、レジに立つヒナに『寂しくなるね』などと声を掛けてくれた。
大人たちはそういった、温かくも冷静な反応だったけれど、しばらく経ってやって来た子どもたちは、あからさまにショックを受けていた。
ヒナの滞在は秋までとは聞いていたものの、どうやらみんな『秋の終わりまで居る』と楽観的に解釈していたらしく、夏の終わりにお別れ会が開催されるとは思わなかったらしい。
彼らは顔を寄せ合い、「もう小遣い使っちゃった、どうしよう」とか「宿題終わってないから、行っちゃダメって言われないかな」などとひそひそ話していた。
ヒナは黙ってレジに立っていたが、まあ、嬉しくないはずがなかった。彼らが作戦会議を終えた後、「一緒に食べな」と言っておにぎり弁当を渡すと、頷いて、カウンター横の扉から出て行った。
◇ ◆ ◇
翌日から、次々に参加の申し込みが舞い込んだ。
受付担当のヒナいわく、家の手伝いを条件に小遣いを前借りしてきた子や、必ず事前に夏休みの宿題を終わらせると確約してきた子もいたらしい。その割には、食べ終わるなり、みんなで遊びに行ったけど……。
数日後に参加者リストを確認すると、常連の子どもたちを上回る人数が集まっていた。ヒナは俺の知らないところでも、交友関係を広げていたのだと実感する。
振舞いの日、隊商のみんなに慕われていた彼の父親の、人懐っこい笑みを思い出した。
いつか父親のような商人になるのが夢だと、ヒナは言っていた。彼なら、きっとなれるはずだ。
だから、……もちろん俺としては、この先もずっと、タッパー亭に居てほしいけれど。夢を追って街を発つヒナを、引き留めるわけにはいかないだろう。




