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第十三話:失格の再定義  失格。


第十三話:失格の再定義

 失格。


 この言葉を、私は長いあいだ、罰として受け取ってきた。

 人として足りない。

 社会に適さない。

 愛する資格がない。

 失格は、烙印だと思っていた。

 だが最近、少し違う意味が見えてきた。

 失格とは、降ろされたのではなく、降りた状態なのではないか。

 競技から。

 役割から。

 期待から。

 私は、人間であろうとする競争に、いつの間にか参加していた。

 普通であること。

 健全であること。

 回復すること。

 前向きであること。

 それらを達成できない自分を、私は失格だと呼んだ。

 だが本当は、ルールを信じきれなくなっただけだった。

 誰が決めたのか。

 どこまで耐えれば合格なのか。

 どの程度壊れたら、退場なのか。

 答えは、どこにもなかった。

 私は、人間失格を、終わりの言葉として読んできた。

 だが今は、肩書きのように感じている。

 名乗るための言葉。

 失格者。

 それは、測定不能な存在だ。

 評価軸の外に出た者。

 外に出ることは、怖い。

 守られない。

 説明されない。

 理解されない。

 だが同時に、

 点数も、順位も、改善要求も、そこにはない。

 私は、完全に壊れなかった。

 かといって、治りもしなかった。

 その中途半端さを、以前は恥じていた。

 今は、それを事実として置く。

 壊れたまま、動いている。

 治らないまま、感じている。

 それでいい。

 左の親指を見る。

 傷跡は残っている。

 だが、もう噛まない。

 傷は、証拠であって、燃料ではない。

 キーボードに手を置く。

 叩かない。

 壊さない。

 逃げもしない。

 私は、自分を再生しない。

 再生は、元に戻ることだから。

 戻る場所は、もうない。

 代わりに、再定義する。

 失格とは、

 適応できなかった者ではない。

 適応を神聖視しなかった者だ。

 醜悪さの中にしか、真実がないと信じてきた。

 今も、それは変わらない。

 だが、醜悪さを誇示する必要もない。

 ただ、隠さない。

 私は、人間として合格しなくても、生きている。

 それだけで、十分だとは言わない。

 だが、否定もしない。

 失格は、終点ではない。

 始点でもない。

 それは、

 立ち止まることを、自分に許した地点だ。

 私は、ここにいる。

 名前をつけなくてもいい状態で。

 失格のまま、書き続ける。

 それが、私の再定義だ。


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