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『異世界退職代行』〜魔王軍から勇者パーティまで、不当な契約をアンバインド(解放)します〜  作者: 街角のコータロー
勇者連合編

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第4話:【人質奪還】卑劣な残党、アンバインド(絶縁)します

「――あははは! 見ろよ、アルフレッド! 英雄様が情けない顔をしてるぜッ!!」

 アデルバイド王国、最果ての監獄要塞『アイアン・ゲート』。

 そこには、解体された勇者管理局の残党と、特権を奪われ没落した貴族たちが、私兵を引き連れて立てこもっていた。

 彼らの背後の牢獄には、アルフレッドと共に立ち上がった「下請け勇者」たちの家族、数百名が鎖で繋がれている。

 「……貴様ら、正気か。戦えぬ女子供を盾にして、何が『王国の復興』だッ!!」

 要塞の門前。

 アルフレッドは激しい怒りに震え、聖剣を握る拳を白くさせていた。

 彼の後ろには、家族を奪われ、怒りと不安で今にも暴走しそうな勇者たちが並んでいる。

 「うるせえッ! 俺たちが失った領地、財産、地位!

 

 

 それを全部返すまで、このガキどもの喉首にナイフを当て続けるだけだ!

 

 

 さあ、剣を捨てろ! 跪け! 王国の裏切り者どもめッ!!」

 残党のリーダー、没落貴族のヴィクターが、幼い少女の首筋に短剣を突きつけ、下卑た笑いを浮かべる。

 「……待ってください、アルフレッド様。……彼らに『交渉』の余地はありません」

 静寂を裂いて、黒いコートを翻したゼノンが前へ出た。

 「また貴様かッ! あの『退職代行』とかいうペテン師め!

 

 

 ここには魔法封じの結界が張ってある! 貴様のふざけた事務仕事も、ここでは無意味だッ!!」

 「――無意味、ですか。……ルナ、準備は?」

 『いつでもオッケーです、ゼノンさん!

 

 

 要塞アイアン・ゲートの維持管理システム、そして「家族(人質)」を拘束している魔導鎖の制御権……。

 

 

 たった今、全部「魔王軍不動産」に名義変更しちゃいました!』

 ゼノンが冷淡に、手に持ったバインダーのページを「パチン」と弾いた。

 「ヴィクター様。……あなたは大きな勘違いをしています。

 

 

 あなたが人質に取ったのは『勇者の家族』ではありません。

 

 

 ――『我が社の福利厚生の対象者』です」

 「な……何を言って……」

 「アンバインド・コントラクト(拘束の解放)。

 

 

 対象:要塞内の全非戦闘員。

 

 

 移送先:安全な『家族保護シェルター』」

 キィィィィィィィン!!

 突如、要塞全体が眩い光に包まれた。

 

 

 ヴィクターが掴んでいた少女の体が、光の粒子となってその場から消える。

 

 

 牢獄の中にいた数百人の家族も、鎖だけを残して一瞬で姿を消した。

 「なっ……!? 消えた……!? 人質が、どこへ行ったんだッ!!」

 「――既に、魔王軍が運営する『温泉リゾート付き避難所』への移送を完了しました。

 

 

 ルナ。……人質の皆さんにメッセージを」

 『了解! ――「皆さん、ご安心ください。お父さんやお兄さんの退職代行は、弊社が責任を持って完遂いたします。

 

 

 今夜の夕食は黒竜の霜降りステーキですので、ゆっくりお休みくださいねー!」……送信完了!』

 要塞のスピーカーから流れるルナの明るい声。

 

 

 ヴィクターたちは、自分の腕の中に誰もいないことに呆然とし、腰を抜かした。

 「……ゼノン殿、感謝する。……これで、ようやく……」

 アルフレッドが、一歩、また一歩と要塞の門へと歩み寄る。

 

 

 彼から放たれる「真の勇者」の覇気が、要塞の石壁をピシリとひび割れさせた。

 「……盾を失った気分はどうだ、ヴィクター。

 

 

 君たちが守ろうとした『王国の誇り』。……その正体は、無実の者を傷つけなければ維持できないほど、腐りきっていたんだな」

 「ま、待て! 降参だ! 降参する! 俺たちはただ、昔の暮らしを取り戻したかっただけで……」

 「――その『暮らし』の犠牲になった者たちの声を聞いたかッ!!」

 アルフレッドの咆哮と共に、聖剣が抜かれた。

 背後にいた下請け勇者たちも、家族の安全を確認したことで、その怒りは爆発的な闘志へと変わる。

 「お前ら、覚悟しろッ!!」「俺たちの家族を泣かせた報いだッ!!」

 「――アルフレッド様。……あとの『清掃業務』、お任せしてよろしいですね?」

 ゼノンは事務的に一礼し、戦場から一歩身を引いた。

 「ああ。……ゼノン殿。……新しい時代の夜明けを、汚物で汚すわけにはいかないからな」

 ドォォォォォォォォォン!!

 アルフレッドの聖剣から放たれた白銀の衝撃波が、要塞『アイアン・ゲート』の重厚な門を粉砕した。

 

 

 なだれ込む勇者たち。

 

 

 武器を捨てて逃げ惑う残党たち。

 

 

 それは、略奪と搾取で成り立っていた「旧王国の残影」が、物理的に、そして精神的に完全消滅する瞬間だった。

 数分後。

 

 

 要塞の屋上で、ヴィクターはアルフレッドの剣先を突きつけられ、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしていた。

 「……ヒィ……助けて……何でもする……金ならあるんだ……」

 「金、ですか。……ヴィクター様。その金も、先ほど全て『戦後補償金』として口座から引き落とされましたよ」

 ゼノンが階段を上り、最後の一筆をバインダーに加える。

 「あなたは今、文字通り『一文無し』です。

 

 

 ……そして、あなたの次の就職先は決まっています。

 

 

 魔王領・地下鉱山の『不眠不休(ただし労基遵守)』エリアです。

 

 

 あなたが軽蔑していた下民と同じ苦労を、……一生かけて味わってください」

 「い、いやだぁぁぁッ!!」

 ヴィクターの絶叫が、夕暮れの空に虚しく響き渡った。

 ゼノンは、地平線の彼方を見つめるアルフレッドの隣に並んだ。

 「……ゼノン殿。……これで、本当に終わったのだろうか」

 「いいえ。……古い組織が壊れれば、必ず新しい火種が生まれます。

 

 

 ……ですが、それを正す『自浄作用』が、この地には既に芽吹いていますよ」

 ゼノンは、喜び合う勇者たちと、その再会を待つ家族たちの笑顔(中継映像)を、静かに見つめた。



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