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林檎の実と僕の後悔  作者: 穂先ロア
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最悪で最低で痛々しくて…暖かくて。

バルコニーでみんないるこの中で私は廻の過去を紐解く。今当の本人が居ないから言える…廻の事を…私や祐しか知らない事を今ここで語ろうと決意した。

「確かに廻は荒れていました…でもそれには理由があったんです。」

少し息を吸い…ため息のように吐き出した後…私は語り始めた。プレゼントボックスの箱を開けるように…。


今から七年前…つまり私達が中学二年生の時まで話は遡る。私は祐と付き合っていたが…私祐廻…まるで兄弟なのか?と言われる位一緒にいた。でも同年の春の終わりがけ何時ものように昼の休憩時間をとっていると…廻だけが他クラスの生徒に呼ばれたたのだ。

「廻だけ呼ばれるなんて…珍しい事があるもんだな。」

祐はそう言って私に笑顔を見せた。だが何故か私は嫌な予感がしてたまらなかった。なんだろう…この3人の仲が裂けてしまうような…そんな気がしたのだ。だがしかし…私のこの嫌な予感は非情にも的中してしまった。その日の帰りも祐と私の二人きりだった。何時もはこの中に廻も入ってくるのだが…。肝心の本人は「先に帰っててくれ」の一点張りで私達は、その言葉を聞くしか出来なかった。

「廻…忘れ物したんだろうな…」

「え?あのマメな廻に限ってそんなことある!?」

なんて会話を下校中にしていたが…夜になり…後は寝るだけになった時私達は事の重大さを知る事になる。隣同士の家で…寝る前にバルコニーで寛いでいた時だ。近くの街灯の下で、まるで疲れたように歩く人影を私と祐は視界に捉えた。

「あの人…大丈夫かな?」

「なんだろう…見に行ってみるか?」

と二人で決め…家を飛び出し…その人影に近付いた。すると…聞き覚えのある声少し明るいような声でこんな言葉が聞こえてきた。

「あ…祐介…琴葉。ただいま。」

その声…暗さに目が慣れ徐々に見えてくる顔…制服から香ってくるラベンダーの様な臭い。夕方下校する時「先に帰っててくれ」と言った廻だった。だが…。

「おい!廻!?その怪我どうしたんだよ!?お前ろくに処置もしずに帰ってきたのか!?」

常人なら…必ず救急車を呼んでいるレベルの大怪我を負った廻は…どこからかここまで歩いて来たのだ。祐介が驚き…状況についていけれていない私を他所に廻は小さく微笑んでこんな事を言った。

「へへっ…派手に転んで…下手打っちまった…へへっ。」

そう言い廻は血まみれの身体を見て微笑んだ。しかしそんな廻を見て私も祐も笑えなかった。いやむしろ…笑いたくなかった。

「笑って言うとる場合かっ!ちょっと待ってろ!琴葉っ!廻の事…看といてくれ!俺おじさんとおばさん呼んでくるっ!」

祐がそう言い廻の両親にこの事を伝えに行くと…廻はまた笑いながらこんな言葉を零す。正直…何故この言葉がこの状況で言えるのか…私には理解できなかった。

「痛てぇな…階段から派手に転ぶのはよぉ…へへっ…へへへっ。」

そう言う廻の身体を見てみると…ホントに転んだのか怪しくなった。しかも…どこか余裕そうな廻を見て私は焦りを見せる。

「ねぇ!?廻?正直に答えて!…ホントに転んだの?」

私がそう聞くと…笑いながら私を安心させるような声でこんな事を言った。

「…ホントに転んだだけだっつーの…意外と俺はドジなんだぜ?お前と祐介に見せないだけでさ…。」

そう言った瞬間…廻の両親が来て病院へ向かった。その際私は祐にこんな質問をしていた。だって廻の傷は…転んだだけで出来るようなものじゃなかったからだ。

「ねえ?祐…廻ってさ…絶対転んであんな怪我したんじゃ無いよね?」

すると祐も私と考えた事は一緒だったのか…真剣な表情ですぐにこんな言葉を私に返してきた。

「ああ…絶対この件は裏があるな。」


それから廻が入院し…また学校へ行き始めた時私達は、廻が何をしているのか調べ尽くした。でも…手がかりなんて見つからなくて…あの怪我以来大きい怪我をしなくなったが…とこが怪我を負いながら帰ってくることが多くなっていった。そうして…あれから一ヶ月が過ぎた。いつものように廻が何をしているのか調べようとした時…私と祐は見てしまったのだ。廻が大勢の生徒と対峙しているところを。本当は黙って事の経緯を知るのが良策なのだろう。だが…廻と対峙しようして居る人の中には…鉄パイプを持っている人物も居た。祐や廻が傷つくのが嫌だったから…私はその場で飛び出していた。

「そこで何してるのっ!」

その私の一声で廻含め一斉に私の方へ視線を向ける。すると廻だけ呆れたかのような顔をしてため息をつき…それ以外の人物は歓喜をあげ私の元へ一斉に向かってきた。

「ふぅー!おい!里中さんが気になってるあの子が話してくれたぞぉ!コレで里中さんも安泰だよなぁ!?」

と群衆の中からそんな声が聞こえた。そうして一人大柄な男子生徒が私に近付き…私にこんな事を言ってきたのだ。

「錦山さん…俺…アンタを見た時好きになっちまったんだ…だから…だから…」

そう言われ私は憎悪を感じた。ただそれだけの事で…廻はこんなに傷ついたのだ。すると…私は自然にこんな言葉を吐き捨てた。本当は思っても言わないのが定石だろう。だが…どうしても許せなかった。

「…ざっけんな…ふざけんな!そんだけの事で人を多人数で傷付ける事をしたんですか!?そんな事をする人は…最低です!だから…とっとと目の前から消えて下さい…。」

そう言った瞬間…郡勢の一人が私に鉄パイプを振り上げていた。私はこの時悟った。「あぁ…これで私は殴られるだな」とでもされて当然のような事で覚悟を決め瞳を閉じる。「がっ!」と何か固いものが当たる音が聞こえた。だが…痛みを感じない。恐る恐る瞼を開けると…私の前に立っていたのは…廻だった。

「…痛ってぇな…前から言ってるだろ…里中…コイツはもう別の人間とイチャコラしてんだ。お前の入る枠なんざ…とうに無ぇんだよっ!」

そう言うと廻は目の前の人間に拳をぶつける。そうして血飛沫が飛び交う中祐の声も聞こえたが…その後のことを私は詳しく覚えていない。


そんな話を私は裕二さんや恭太郎さんの前で話した。すると…二人は何故か知っていたかのような反応を見せる。

「ふーん…ま!何となくは予想してたよ。廻は…あいつは俺らに多くは語らないからな。だからあいつの過去なんざ知ったこっちゃねぇ!だから今まで通り絡んでやるよ!これからも…ずっとな!」

裕二さんがそう言うと恭太郎さんも続けてこんな事を言った。

「なるほどね…その因縁みたいな場面を僕は見たことあるかもしれない人間だから…言わせてもらうよ。廻は…自分の為にその力を振ったかい?僕は違うように見える。廻は…多分君や祐介の為にその力を振ったんだろう。となると…彼がした事は許されることでは無いが…カッコイイと思うよ。」

そうして昼の休憩時間は終わりを告げた。でもまだ語れてないところもある。それはその事件を機に廻を「最悪で最低な人」と言うようになった人が多くなった事を…。でも私はそうは思わない。だって…廻のその時の声色は暖かかったから。痛々しい傷を負いながら…暖かかったあの声を…私は忘れたくないし…誰にも言いたくない。

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