好きな人と忘れ物
練習が終わり…朝を迎えた後私は大学に行っていた。後もう少しで冬休みという事もあって皆レポートやら課題やら…試験対策やらで慌ただしい。私もその一人で…今日は友達と良く行く喫茶店でココア片手に勉強する約束をしていた。今日私が出席する講義が全部終わり…先に校門前で待っている友達の元へ向かう。
「分からないところは…うーん…教えてもらうかぁ。」
そう言い私は校内を後にし校門にたどり着く。そして…一人のゼミ仲間が私を見つけた途端名前を呼んで自分達をアピールしていた。
「琴〜こっちこっち〜!」
その私を呼ぶ声に答えるように私はゼミ仲間の方へ駆け寄った。到着すると同時に私は少しだけ息を整えてからこんな言葉を口にする。
「ごめんごめん!教授の手伝いしてて遅れた!」
そう言った直後ゼミ仲間の一人が私のその言葉に答えを返した。こう言うのもなんだが…私は人に恵まれてるなぁ…とつくづく思う。
「ん?大丈夫大丈夫!そんな待ってないし!さ!行こ!」
そうして私達は大学を出て近くの駅にあるバスの停留所まで歩いた。道中こんな話をしながら…。
「ねぇねぇ!どこで勉強する?」
一人がそう言い出すと皆首を傾げながら考える。うーん…そんな言葉が飛び交う中で私は声を大にしてこんな提案をした。
「一つおすすめのお店あるんだけど…どう?」
私がそう言いバスの定期券を取り出すと…ゼミ仲間四人の声色と表情が明るくなる。そうして私に向けて飛んできた言葉は賞賛の声だった。
「え?良いじゃん!琴といい所知ってるなら紹介してよ!」
そんな声が上がったと同時に、私達がたむろしていた停留所にバスが来た。私達はそれに乗り込み目的地まで乗る事になったのだった。
バスに乗り込んで二十分は経過した時だろう。最寄りのバス停留所で私達はバスを降りた。そこから先は目的地の店まで一直線で歩いていく。皆でワイワイと話し合いながら進んでいると一人がこんな事を聞いてきた。
「ねぇ?琴葉は今から行く場所知ってるの?」
私は、後ろ振り向いた後全員に聞こえるような声でその質問に答えを返す。
「うん!私の行き付けでね…メニュー全て魅力的な喫茶店なんだ!」
そう言った後また私は前を向いて歩く。私が提案した場所…それはあの喫茶店…高校生の時に良く廻や祐介と行き…最近小夏ちゃんとも行った…あの喫茶店だった。廻に紹介されてから私は、あの店にずっと通っている。そうして毎日ココアを頼み…一日の終わりに浸っているのだ。そんな事が出来てしまう店を私は色んな人と行ってみたい…そんな事を思っていた。そうして目的地着いた時だった。皆が先に入る中私はバックから財布を取ろうとした…だがここで違和感を感じた。何故なら…
「あれ?…お財布…無い…。」
どうやら私は何処かに財布を落としたか…忘れてしまったらしく持っている鞄の中には見当たらなかった。
「どうしたの?」
と一人が私に質問する。私は涙目になりながらもその事を隠し通そうとした。だって…怖いし恥ずかしい。
「あ…うん。だ…大丈夫だよ…うん。」
そう言った次の瞬間だった。
「財布忘れんなよ…たわけが…。」
そんな言葉と共に私の頭頂部に何か柔らかく丸まった物が優しく当たる。そうして次にバックを見ると…何故かファスナーの上に私の財布が置いてあった。
「え?なんで?さっきまで無かったのに…」
そう言い私は前を向いた。そこにはゼミ仲間の一人と後ろ姿だが…廻の姿があった。私は驚きのあまり言葉が出なかったが…私の事を待っていたゼミ仲間は廻にキツく質問する。
「ちょっと!あんたなんで琴葉の財布持ってんの?もしかして…スリ?だとしたら警察呼ばなきゃなんだけど?あ…さてはち…」
そう言いかけた時廻は、ゼミ仲間を睨みつけながら言った。まるで獣のように…でもこれは怒ってるとかでは無く…いつもの事なのだ。
「あ?変な勘違いすんな…僕はただ忘れ物を届けに来ただけだ。どうせコイツの事だからここに来ると思ったからな…んで…さっき警察に突き出すとかなんか聞こえたけど…もし突き出して僕が無実だったら…君はどうするのかね?」
廻がそう反論する中私は中に入ろうとした廻に礼を言う。このままではほんとに終わらないと思ってしまったが故の行動なんだろう。
「アハハ…私ライブハウスに忘れてたんだ…ありがとうね。廻。」
そう私が言うと廻は無言で店の中へ入って行く。私ともう一人もそれに続くかのように店の中へ消えていった。
そうして無事店内へ入る事の出来た私達は…ドリンクをオーダーしレポートやら課題やらに手を付けていく。そんな時間がある程度進んだ時…一人がこんな事を私に質問してきた。
「ねぇ?琴?さっき同時に入った人…知り合いなの?なんか名前知ってたぽいけど?」
ノートにレポートを書いていた私は、動揺してペンを握っていた手を止める。そうして私は少しだけ無言になった後その質問を質問で返していた。
「聞いて意味あるのかな?」
そんな私の言葉に皆が向ける視線は 気になる と言わんばかりだった。私はため息を付いた後苦虫を噛み潰したような表情で語れる全てを語った。
「さっきの…私の財布届けてくれた人…隣の家に幼馴染なんだよね…普段無表情で無言で…何やりたいか分かんないけど…私はあの人にかなり助けて貰ってる。」
そんな廻に対する思いを言った後。あろうことかさっき廻と一触即発状態になったゼミ仲間を除いてとんでもない事を聞いてきた。それに私は動揺を隠し切れなかった。
「ふーん…んで…あの人の事…好きなの?」
その言葉に私は頬を林檎の様に赤くしながら隠し通そうとした。
「えっ!?いや!何言ってんの!?す…す…好きなわけないじゃんっ!だって彼…ロックバンドやってて…わ…わた…私の好みじゃ無いしぃ?」
しかし何故か私が咄嗟についた嘘はすぐにバレてしまい…こんな事になってしまったのだ。今となっては何故こんな事になったんだろう…いや私がライブハウスに財布を忘れてしまったからか。
「うん…琴…嘘ついてるね。よし!こうなったら…さっきの人の家行きますかねっ!」
どうやら拒否権は無いようで先程廻と一触即発状態になったもう一人も何も言わなかった。私は言葉にしなかったが…心の中で廻に謝っていた。だって多分騒がしくしてしまうだろうから…。
「ごめん…廻。」




