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ばかって言う君が好き。  作者: 下駄
twoyear
25/38

Mar


「本当におめでとう、お姉ちゃん。」


「ありがとう。」

 式の前室、私はきらびやかなドレスを着た姉に挨拶をしていた。


たくさんの化粧品が並ぶ化粧台の前に座る姉。

白いウェディングドレスも綺麗だったけれど、

オレンジの、

ひまわりを思い浮かばせるような鮮やかなドレス姿も劣らず綺麗だった。


今は3月だけれど、聞けば旦那さんと出会ったのは夏で、

それをイメージしてとのこと。


何がともあれ、優しそうに微笑む姉は本当にきれいで、幸せそうだった。


「俺、ちょっとトイレ行ってくる。」

「行ってらっしゃい。」

 旦那さんが部屋から出ていく。


「旦那さん、めろめろだね、お姉ちゃんに。」

くすくす笑う私に


「そうでもないわよー。」

と答えながら満更でもなさそうな姉。


「よかったね、お姉ちゃん。」



「……倫子は?」 

鏡越しに目をあわせていたのに、

その言葉をきっかけに姉は私の方を直接振り返ってみてくる。


少し黙って、私は話し始めた。


「もう、終わったよ…。

電話で、ちゃんとお別れしたから。」


「…。」

姉は立ちあがって、

大きく広がったドレスをつかみながら私が座っていたソファのすぐ隣へ腰かけた。



「直人くんはなんて?」


「……、

何も言わないでって私がいったから、何も……。」

姉の顔を見れない私。


「…本当にいいの?

別れたいっていうのが、倫子の本心?」


「いいの。

直人も、近くで支えてくれる人と一緒になったほうが幸せになれる。

私なんかさ…。」

 私の手をお姉ちゃんは握った。

グローブ越しにでも伝わってくるお姉ちゃんのぬくもり―――。


「ばかね、涙が物語ってるじゃない、すべてを。」


「あ…」

私の目から涙が一粒ポトン。

着ていたドレスに小さなしみを作る。


「続けることも難しいこと、別れることも辛いこと。

でもね、本当は何が一番難しくて、辛くて、

怖いことか分かってるでしょう、倫子なら。」


「…っ。」

ポトンポトン、

ぬぐっても追いつかないぐらい涙が出てくる。


「ずっと変わらずたわいもない会話をしていれば、交際は続くわ。


別れようといえば、彼で悩むことから解放されるわ。


……でもそれって簡単なことなのよ。


自分を押し殺して流れに身を任せればいいんだもん。

ずっと、倫子はそうしてきたんでしょう?

直人君だけじゃなくて、今までの恋愛も。」



「お姉ちゃん。」

彼女は優しく私を抱きしめた。


「直人君から連絡まだ来てるんでしょう?」

こくんと私はうなずく。


「ゆっくりでいいから、話してごらん。

大丈夫、大丈夫、きっと最後はうまくいくわ。

私だって、幸せになれたんだもの、倫子も大丈夫よ。」


コンコンコン。

ドアが数回ノックされる。


「準備が整いましたので、

そろそろお席の方移動していただけますでしょうか。」

 叩いたのは従業員さんだった。


「はーい、ただいま!」

姉は立ち上がると、私の頭をくしゃくしゃっと撫でた。



「変わることを恐れちゃだめよ、倫子。

…ま、とりあえず、今日は楽しんで。


落ち着いたらまた会場に戻っておいで。

ごちそう、私の分までたくさん食べなきゃよ。」

 そういって、ウインクを残して彼女は部屋を出ていった。



時計の音だけが部屋に響く。

もう何日だっけ……、

別れようと告げたあの日から―――。


傍に置いていたバックから携帯を取り出して、

電源をつける。


通知1件。


毎日ではないけれど、

今でも数日に一度連絡をくれる彼。


トーク画面を開く。


今日、お姉さん結婚式だよね。

よろしく伝えといてください。


彼らしい優しい連絡だった。



トーク画面には、来ていたその言葉しか並んでいない。


理由は単純、私が履歴を消したから。

付き合っていたころのやり取りを見返しちゃわないように。


別れようって私が告げたのですもの……。

そうだよ、お姉ちゃん。私、話せないよ……。



ありがとう、伝えとくね。

私はそれだけ送る。



ピンポン

続けて彼からの連絡


今、大丈夫?


大丈夫だけど


そう送って、彼から来た着信に出てしまったのは、

彼に何も話せないと思いながらも、

姉の言葉にどこかで励まされていたから。



「もしもし?」


「もしもし……倫子?」


「うん。」

 1か月ぶりの彼の声。穏やかで優しい声。


「お姉さんは?」


「あ、今近くいないの、ごめん。」


「そっか、挨拶したかったんだけど、しょうがないね…」

 残念そうな彼の声。


「倫子、今大丈夫なの?」


「あ、うん。

私だけ別の部屋でちょっと休ませてもらってて。」

 心配をかけまいと

なるべく言葉を選んだつもりだったのに、


「大丈夫?無理すんなよ?」

と言って、私を気遣ってくれる彼。


「ありがとう、心配しないで。」

私はなるべく明るい声で伝えた。



「式、どう?」

そう言われて、

真っ先に思い浮かんだのは幸せそうな姉の顔だった。


「すごい、幸せそう。

こっちまで顔がにやけそうになるぐらい。」

ふふっと笑う私と彼。


こうして話していれば、別れる前と何も変わらない。


「……電話。」


「ん?」


「出てくれないかと思った。」

苦笑しながらも、まっすぐな声だった。


「……あ、うん。

お姉ちゃんと話したかったのかなって思って。」


「…お姉さん、そばにいないのに?」


「あ、えっと、今、

そういえばお姉ちゃん近くいないこと気づいて。」

慌てる私。


彼はどんどん私の本心に近づいてくる。



「本当に?気づいてたんじゃないの?」



どんどんどんどん迫ってくる。



「気づいてないよ。」

 むきになる私。




「本当に?




本当は―――、」



「直人!」

私は、彼が発する言葉を止めた。



「あっ…。」

私のいきなり大きくなった声に、

彼がいつもの口調に戻る。


「だめだよ…、直人。」

だまる彼。



「ごめん。でもさ、でも……。」

彼が切り出した言葉をかき消すように、



「私ね、私。」

話し始めた。



「電話した時も言ったけど、すごい幸せだった。

直人と付き合えて。


優しくて、面白くて、

たまにすごい意地悪なとこも…大好きだった。


でもさ、もう無理なんだよ。」



「何が?」


「だから―――っ。」



「何が無理なのか、俺には分からないよ、倫子。」

 私を責める彼、

それでもどこか温かさを感じるのは変わらない。


「倫子はずるいよ…。

俺には言わせないで、お前だけそうやって俺の事褒めて。」

 声から伝わってくる彼の様子。


あ、今直人のこと苦しめてる――――、



「ごめん…。」

私はまた涙が出そうになって、

でもここで泣くのはずるいと思って、必死にこらえる。



「ばかだなあって俺、お前にもう言えないの?」


「うん。」


「お前の「もーう」も「ばか」も聞けなくなるの?」



「…うん。」



「一緒に笑えないの?」



「……うん。」



「もう倫子のそばにいれないの?」 



「……っ。」

こらえきれなくなった涙が、頬をつたう。



「なんで泣くんだよ。」

苦しそうに私に理由を尋ねる。



「泣いてない……よ。」



「泣いてんじゃん。」



何も言えなくなる私。



「俺お前の事好きなんだ。」



「やめてよ。」

とまらない涙。もう隠しきれないそれ。



「ずっと一緒にいたい。」



「…だめだってば。」



「倫子、俺ね、お前の事――――」



「っ。」



プープープー

私は電話を切ってしまった。

それ以上聞いてしまったら、きっと私、



「はあ、、

お姉ちゃん、話せないよやっぱり……。」



甘えたいのが本音。

彼に会いたい。腕にとびこみたい。

また一緒に笑いあいたい。



でも、もう――――。



自分でも

なんでこんなに拒むのか分からなくなっていた。




二次会へは行かず、私は早めに自分の家に帰った。


「まだいなよ」と親にも姉にも引き留められたのだけれど、早くゆっくりしたかった。


ガタンガタン、

揺れる窓からのぞく外はすっかり真っ暗。

うとうと寝そうになりながら、私は電車を降りた。


いつもの道。

明日からも、


いつもの道―――。



「倫子。」

 でも今日は違ったみたい。


いつもの道に、いるはずのない人。


いつぶりか分からない程、

でも、私がずっとずっと会いたかった人―――


「嘘!うそ、うそ、なんで………。」

言葉を失った私は、その場に立ち尽くす。


「えっと、倫子、ごめん。

驚かせちゃって……。」

 彼はゆっくり近づいてくる。


「今、出張中で、こっちの会社にまた来てて……

来週いっぱいまでこっちいてさ。


式の後だし、家帰るとか分からなかったんだけど、まあいるかなって……。」


「直人、えっと、えっと。」

彼が話していることは理解できるのだけれど、あまりのことで思考が追い付かない。


言葉がでない。


目の前に彼がいる。

手を少し伸ばしたら、触れる距離に彼が。


「…えっと、歩きながら話そうか。

帰宅中だよね…?」


 私はうなずく。


「よし、えっと、じゃあそれ持つよ。」

 そういって彼は私が右手にさげていた、今日式で来ていたドレスが入ったカバンを手にとった。


それから私達は二人並んで、いつもの道を歩いた。

ゆっくり、ゆっくり。

いつもよりも倍の時間かけて……。


うつむく私、何も言わない彼。


聞こえるのは、お互いの歩く音、駅の音、遠くからの車の音。

隣を歩いているだけなのに、

やっぱり幸せな気持ちになるのは変わらなかった。


ちらっと、彼の顔を盗み見る。

変わらない。

ふわふわの髪も、優しそうな目元も。

あえていうならば、少しだけ痩せた……。


パキッ。

枝を踏んでしまって、音がなる。


「もうちょっと、こっち寄りな。」


「あ、うん。」

彼の方へ近づく。

手があたってしまうんじゃないかって程の距離。


…このまま手をつないでしまおうか。

そうしたら私達あのころみたいに……。


「相変わらず街灯少ないね、この道。」


ばか、何考えてんの。

顔見て、思い上がっちゃって……。


「えっと、それでどうしたんだっけ?」

余計なことを考えなくてすむよう、私は彼に話を切り出した。 


「あ、うん、こっち来たついでに荷物貰おうかなって、

倫子の部屋に服とかおいてたよね、ちょっと。」


聞いてすぐ、私に会うための口実だとわかった。


だって彼が私の部屋に置いてあるものと言えば、1着の部屋着しか思い浮かばない。

あってもなくても彼にとってどちらでもよいもの。


でも―――

そう分かっていても、分かっていても、


これで彼に会うのは最後になってしまうのかもしれないと 

あなたのそばに少しでもいたいと、

この気持ちが彼にばれてしまわないように、私は「うん」とうつむいてうなずいた。


「えっと、入って。」

私は彼より先に靴を脱ぐと、スリッパを差し出した。


家に着くまでに、床に部屋着を脱ぎっぱなしだったことを思い出していた私は、

急いで彼を待たずに部屋に入り、片付けにいった。


「入っても良かったの?」

おそるおそる部屋に入ってきて、ドアの前に立ち尽くす彼。


「うん、大丈夫。座って?

鞄も持ってくれてありがとう。」


「あ、うん。」

私は持ってくれていた鞄を彼から受け取り、机の横に置いた。


彼もいつもの位置に座った。

いつもってちょっと違うかもしれないけど、とりあえず彼がよく座っていた場所に。


「すぐ、荷物受け取ったら帰るからさ、安心して。」

 彼はお茶を出そうとしていた私の様子に気づいたのか、キッチンに立っていた私に振り返って微笑んだ。


「あ、そうだね…。すぐ渡せるから待ってね。」

私は寝室に入り、彼のものが入った袋を取りに行った。


すぐに寝室を出て、

「えっと、はい。」

私は彼の横に座って、彼に手渡した。


「…早いね。」

彼は少しびっくりした様子で笑う。


「もうまとめてたの、いつか送ろうかなって思って……。」


「あ、そうか…。

じゃあ、うん、受け取ろうかな。」

一瞬の切ない表情、でもすぐに彼は微笑んだ。


「クワズイモ、育ててくれてんだね…。」


「あ、うん。

5月に植え替えなんだけど、もう少し大きくしようかなって。」


「クワズイモも元気でよかった。」 


こんな他愛もないこと。

いつもは嬉しかったどうでもいい話。


でも、今は―――――


「LINEとか電話とかごめんな。」


「……え?」


「女々しいよな。」

頭を右手でかきながら、ハハハっと笑う。


「いや、全然。」

うつむく私。


言わなくていいの?

まだしてって…。私本当はほんとうは。


「もうしないからさ。」


「あ……。」

顔をあげる私。


「ん、何?」

顔を見ていたら、

すぐにでもその腕に飛び込んでしまいそうで。


「いや、なんでも。」


でも、それが我慢できてるってことは

つまりそれはそういうわけで。


今更、今さら、思ってたこと言ったって。

本音言ったって。


「じゃあ行こうかな……。

倫子も疲れてるみたいだし。」


「あ。」


 待って、もう少しだけ、もう少しだけそばに……。


「…うん。」

出た言葉は無情にも違うもので。

私と彼は立ち上がった。


「俺、27歳に見える?」

冗談交じり。

私を笑わかせようとしてくれているのだとすぐにわかる。


「見えない。

でも…

ちょっと痩せたから、体気を付けてね。」

私は彼が望んだ笑顔を返して、先にリビングを出る。


「…。」

 彼がその時、

手を私に向けて伸ばしてたなんて気づかない。


「直人?」

振り返る私に

「あ、うん。」

彼は私に目をあわせず、玄関へ向かった。



スリッパを脱いで、靴に履き替える。

私はスリッパを戸棚に直した。


「じゃあ。」

私がそう言おうとしていた時、


「あ、靴紐とれてるわ。」

そういって彼はしゃがんで結び始めた。


私はそこで気が付いてしまう。


「……あれ?

直人、そのスニーカー……。」


「あ、買ったんだ。


っていってもね、」

彼は私を見ずに、靴紐を結ぶ。


彼がまだ続けて何か言ってるのに、耳に言葉が入ってこない。


なんでだろう。あんなに我慢できていたのに。

あんなに言えなかった言葉が、

そんなスニーカーが変わったごときで。


「いやだ。」


「え?」

直人が手を止め、見上げる。


ポタンと彼の顔に雫が落ちる。


「え?え?え?」

彼のびっくりした声。


「いやだ。」

私はしゃがみ込んで手で顔をおおう。

嗚咽まじり、私は声をあげて泣いた。


今まで我慢していたものがすべてその涙に込められていたかのように、とにかくとにかく大声で泣いた。


「ちょ、倫子、倫子?どうしたんだよ!」

私の様子に驚いた彼。

私の顔を確認しようと手をはごうとするも、私はこんな顔見られたくて、必死に抵抗。

彼の手から逃れようと、お尻を床につけてすべりながら徐々に後ろに下がる私。


「倫子……。」

靴を必死でぬいで、私に近寄ろうとする彼。


「あーもう!」 

でもさっき結んだばかりのそれはかたくて、結局ひもをほどいてしまう。


「倫子、どうしたんだよ?

どうした?ん?」

ようやく靴はぬげ、私のそばに寄ってこれた直人は、私の肩をつかんで、

責めるわけでもなく、優しくただ私の涙の理由を聞こうとする。

私は廊下のかべにもたれかかって、ただ泣くばかり。


「倫子……。」

 

「いやなの。」

ゆっくり言葉を発した。


「うん。何が嫌なの?」

嗚咽交じりの私とちがい、優しく穏やかにただ話を聞く彼。


「スニーカー…新しいの嫌だよ。


前のが……いいよ。」

言葉をゆっくり発するとともに、だんだんと落ち着いてくる。

彼がふれている肩が温かかった。


「あ、うん。だから、それはね…」

彼は諭すように話し始める。


「……違うの。」


「ん?」


「ほかの娘、見ちゃや……。

……ほかに新しい娘…。」


「…っ。」

なんて勝手なことを言っているのだろう。

自分でも分かっていた。

それでも私は、新しいスニーカーを見たとき思ってしまったのだ。


あ、知らない彼がいる。

あ、彼にもこの新しいスニーカーみたいに、いつかまた違う恋人ができるのかって。


「ひどいよ、お前は……。

俺に好きだとも言わせず、別れを一方的に告げて。


いざ諦めようと思えば、そうやって俺を捕らえて…。」


「あっ。」

彼が私の手をはぐ。


涙でぐしょぐしょの顔。

見つめられて真っ赤になった顔。


「見ないで、みないで。」

私は顔をそむける。


こんな顔、はずかしくて。

手でもう一度顔を隠そうとするも、腕は彼につかまれ、壁に追いやられてしまっている。


「もう、倫子のいう事なんか信じない。

俺だってもう、我慢の限界なんだ……。」


「あっ、だめだよ、直人。」

顔を近づけてくる彼。


「本気で嫌なら殴って。

お前の言葉、もう俺信じてないから。」

 若干掴まれた腕の力が緩まる。


「あ、だめ。だめ。」

腕に少し力をこめる。


それでも


彼の手からはのがれられなくて――――


「あっ…。」

ふさがれた唇。

彼のぬくもりが伝わってくる。


そのまますぐに唇を離して、

おでこ、頬、首元、手、いろんなところに彼が口づけする。


「あっ、直人…、

だめだって、も、やめ。」


「だから、嫌なら俺のこと殴れって。

手、緩めてるんだから。」

彼が私をまっすぐ見つめる。


壁に抑え込まれている私の手。


確かに彼は

腕の力を緩めているのだけれど――――


「でも、私が腕力入れると、直人力こめるじゃん……!」


「ん?」

彼は聞こえないとばかりに私にまた口づけをする。


「……いやなの?」

彼は私の顔を覗き込む。


直視できなくて、私は顔を背けて、


「いや、とかじゃなくて、とにかくだめなの…!」

今できる必死の抵抗。


「ふーん……。」

彼はそういうと、パッと私の手を離した。


「あっ。」


「じゃぁ、もうしない。」

彼の意地悪な表情。


私は知ってる。

彼がどんな時にこんな表情をするのか。


何度もこの表情を見てきた。


そして、その表情をされたら、私はどう反応するか彼もきっと知っていて。


「…………やめないで。」


「…ん?」


「やめないで。」

私は彼の腕に飛び込んだ。



「……よくできました。」

彼はハハハっと笑いながら、私の頭を優しく何度もなんども撫でる。


「直人のばか。ばか。ばか。」

私はまた涙を流しながら、でもそれはうれしい方のそれで。


「ごめん、ごめん。

倫子可愛くって、すごいいじめたくなっちゃってさ。」

彼は冗談まじりにハハハっと笑う。


「ばか。」

彼の腕から離れて、またキス。


話したいことはたくさんあった。

嫌だったこと、不安に思っていたこと、あの日の電話は強がりだったこと。


だけど、


「……ずっと会いたかった。」


「……私も。」


もう言葉なんていらない。

こうして私たち、お互いの熱を感じれたら……


きっと全部分かった気がするから。



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