表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金持ちから貧乏転生~金を取るか人を取るか~  作者: 有明


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/20

第20話:はじまり

金運最強、人運最悪だった男が――

異世界で“真逆の運命”を背負わされます。


ゆるく読める逆転系コメディです。

村を出て、どれくらい歩いただろうか。


 振り返ることは、一度もしなかった。


 振り返れば、何かに引っ張られる気がしたからだ。


 風が、少しだけ強い。


 でも、不思議と嫌じゃない。


 むしろ、心地いい。


(……軽いな)


 そう思った。


 体じゃない。


 もっと奥の方。


 ずっと何かに掴まれていたような感覚が、すっと消えている。


 足取りも、自然と軽くなる。


「……ほんとに出たね」


 隣でレナが呟く。


 声は小さいが、どこか実感がこもっていた。


「ああ」


 短く返す。


「出たな」


 それだけで、十分だった。


 言葉を重ねる必要はない。


 もう、事実としてそこにある。


 あの村には、もう戻らない。


 戻る理由もない。


 残っているのは、奪い合いだけだ。


「結局さ」


 レナが少しだけ間を置いて言う。


「私たち、逃げたのかな」


 足は止めないまま。


 でも、その問いは真っ直ぐだった。


「どう思う」


 逆に聞く。


「……半分は逃げ」


「半分は?」


「勝ち逃げ」


 少しだけ口元が緩む。


「だろ」


「自分で言うんだ」


「事実だしな」


 軽く笑う。


 無理に明るくしているわけじゃない。


 自然とそうなった。


 それが、今の状態をよく表している。


 完全な勝利じゃない。


 でも、負けでもない。


 少なくとも――


(奪われる側からは抜けた)


 それだけで十分だった。


 しばらく無言で歩く。


 道は続いている。


 どこまでも。


 行き先は決まっていない。


 でも、不安はなかった。


 むしろ――


(ここからだな)


 そう思える。


「ねぇ」


 レナが口を開く。


「今回、どう思った?」


「何が」


「全部」


 ざっくりしすぎている。


 でも、聞きたいことはわかる。


「……そうだな」


 少しだけ考える。


 今までの流れを、頭の中でなぞる。


 稼いで、取られて、守られて、縛られて、崩して、抜けた。


 単純に言えば、それだけだ。


 でも、その中身は――


「力に頼ると、縛られる」


 ぽつりと出た。


「……うん」


 レナが頷く。


「守られてるようで、管理されてた」


「そういうこと」


 思い出す。


 あの時の感覚。


 楽だった。


 でも、自由じゃなかった。


「あと」


 続ける。


「金だけあっても意味ねぇな」


「珍しくまとも」


「うるせぇ」


 軽く返す。


 でも、事実だ。


 稼げていた。


 でも、奪われた。


 結局、構造で負けていた。


「どうするの」


 レナが聞く。


「次」


 足を止める。


 視線を前に向ける。


 遠くに、街が見える。


 今までいた村とは違う。


 もっと大きい。


 人も多そうだ。


 建物も、密集している。


(……いいな)


 直感的に思う。


 ああいう場所の方が、やれることは多い。


「決まってる」


 ゆっくり言う。


「奪われない仕組み作る」


 レナが少しだけ目を細める。


「具体的には?」


「簡単だろ」


 少しだけ笑う。


「“奪う側”になる」


 沈黙。


 数秒。


「……それ、危なくない?」


「今までと何が違う」


「立場が逆」


「だからいい」


 はっきり言う。


「取られる側より、取る側の方がマシだ」


「極端」


「現実だ」


 レナは少しだけ考える。


 否定はしない。


 でも、簡単に肯定もしない。


「……でも、それだと同じになる」


「ならない」


 即答する。


「やり方変える」


「どうやって」


「考える」


「雑」


「でもやる」


 少しだけ間。


 そして――


「……まぁいい」


 レナが小さく息を吐く。


「付き合う」


「だろうな」


 自然な流れだった。


 ここまで来て、別れる理由もない。


 むしろ――


(こいついないと無理だな)


 それは認める。


「ただし」


 レナが指を立てる。


「前みたいなのはダメ」


「どれだよ」


「感情で突っ走るやつ」


「……善処する」


「するって言って」


「する」


 短いやり取り。


 でも、それでいい。


 完璧じゃなくていい。


 少しずつ、修正すればいい。


 再び歩き出す。


 目の前の街に向かって。


 規模が違う。


 人も、情報も、金も。


 全部が増える。


 つまり――


(チャンスも増える)


 そういうことだ。


 風がまた吹く。


 今度は、少しだけ強い。


 でも、もう怖くない。


 流されるんじゃない。


 自分で進む。


 その感覚が、はっきりある。


「ねぇ」


 レナが最後に言う。


「次は、どこまでいくの」


 少しだけ考える。


 でも、答えはすぐに出た。


「決まってるだろ」


 前を見る。


 街の奥、その先まで。


「上だよ」


 それだけ言う。


 レナは何も言わなかった。


 でも、少しだけ笑った気がした。


 こうして俺たちは――


 奪われる側から抜け出し、


 次は奪われないための場所へ向かう。


 これは終わりじゃない。


 ただの通過点だ。


 そして――


 ここからが、本当の意味でのスタートになる。

読んでいただきありがとうございます!

よければブックマーク・評価してもらえると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ