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冒険者ギルド(2)

「――さて、まずそっちのは初対面だろうから軽い自己紹介をしておこう。俺の名はオーウェン、『オーウェン・ブラウン』。ここのギルドマスターをしている」


 ファミリーネームがある人には初めて会った。

 これは本で知ったのだが、ファミリーネームがある人は『貴族』、またはその親族であるらしい。


 貴族は『爵位』を持つ。

 爵位は戦争などで手柄を立てた者などに王から直々に授与され、領地を統治することが許され、様々な特権を持つ。

 もちろん、特権を持たない者もいるらしいが。


「私も君とは初対面だから自己紹介しておくわね。私の名前は『クレア』よ。分かっていると思うけど、冒険者をしているわ。ランクはAよ」


 冒険者にもランクがあるのか。

 『ランクA』というのがどんなものかはわからないが、それでも上から数えた方が早いというのはわかる。

 それほどクレアの戦いには、『強さ』というものが垣間見えた。


「俺の名前は奏多だ」

「ソータか、いい名前だな」


 またイントネーションが違うが、もう気にしないことにしよう。


「どうも。それで、さっきの事なんだが……」

「あぁ、聞かせてくれ」


 オーウェンは指を組み、鋭い目で俺を見てくる。


「まず、俺は今日冒険者になるために登録しに来たんだが、そのときにあいつらにからまれてな。邪魔だったから『どけ』といったんだが、殴りかかってこられたから殴り返したんだ。そしたらほかの奴らが剣を抜いてな」

「それで私が制圧したのよ。無手相手になにを考えていたんだか」

「なるほど、大体把握した。……そうだな、お前たちは罪に問わないこととしよう」


 よかった、罰則などは無いようだ。

 いきなり罰金なんて科せられたら、幸先が悪すぎるからな。


「ねぇギルマス、確かここでも登録ってできたわよね? ソータ君をここで登録してあげてくれない?」

「それは別にかまわないが、なぜだ?」

「いま下に行くと、また面倒な事になるわよ」

「まぁ、それもそうか。分かった、用意しよう」


 オーウェンはソファーの後ろにある棚から、白紙の紙を一枚取り出してきた。


「今からいくつか質問する、素直に答えてくれ。まず、使用する武器はなんだ?」

「バスタードソード。あと、魔法も少し使える」


 オーウェンは羽のついたペンで紙に書き記していく。


「魔法はどれくらい使える?」

「どれくらいと言われてもな、《ロックシュート》みたいな魔法は使えるぞ」

「では、回復魔法や収納魔法は?」

「ストレージは使えるぞ」

「なるほど、そうか」


 それからいくつか質問された。

 年齢や出身地などを聞かれたが、答えられないものは曖昧かつ適当に答えておいた。


「――よし、これぐらいでいいだろう。少し待っていてくれ、今作ってくる」


 オーウェンはそう言い、部屋から出ていった。


「……なぁ、少しいいか?」

「なにかしら?」


 待っている間は暇だし、俺は情報収集をしておくことにした。


「宿を教えてほしい。ここには初めて来たから、色々と疎いんだ」

「そう、分かったわ。どんな宿を探しているの?」

「そうだな……ご飯がおいしいことと、ある程度安くて評判のいいところだな」


 お金は盗賊を倒して得た報奨金しか持っていないので、安定して稼げるようになるまではできるだけ節約しておきたい。

 向こう見ずな金の使い方は身を滅ぼすからな。


「そうね、その条件だと『銀狼亭』がおすすめね」

「どういうところなんだ?」

「冒険者がよく泊まる宿でね、ご飯がおいしくて評判なの。安くはないけど、ご飯がおいしくて一番安いのはここになるわ」


 安くはないのか。だが、ご飯がまずいのは勘弁してほしいので、必然的にここしかない。


「よし、そこに決めた。場所を教えてもらってもいいか?」

「えぇ、銀狼亭はギルド前の大通りを城門の反対方向に一分ほど歩いた所にあるわ。看板に狼が描かれているからすぐに分かるはずよ」

「そうか、教えてくれてありがとう」

「別にかまわないわ。私だってここに来たばっかりの頃は、先輩たちにいろいろと教えてもらったからね」


 それからしばらく他愛ない会話をしていると、オーウェンが戻ってきた。

 手には白いカードを持っている。


「待たせたな、これがギルドカードだ。無くすと再発行に金貨一枚必要だから、決して無くすなよ」

「わかった、大事にしまっておくよ」


 俺はギルドカードをストレージに収納した。

 これで無くすことはよほどの事がないかぎりないはずだ。


「冒険者として活動するうえでの注意事項を話しておこう。まず、冒険者同士のいざこざは――」


 オーウェンは長々と説明を続ける。

 要約すると、冒険者同士の争いにギルドは関与しない。しかし、武器を抜くような争いを行ったものは処罰するらしい。


 そして、冒険者にも『ランク』が設定されており、GからSまであるそうだ。

 ランクは依頼を達成したり、魔物の素材をギルドで売ることによって上げることができる。


 ランクが高いといろいろと融通してもらえたり、金払いのいい依頼を優先的に回してもらえることがあるらしい。

 上げておくのに越したことはない。


 自分の持つランクと同じ、もしくは下のランクに設定された依頼であれば受けることができ、それよりも上であれば受けることはできない。


 依頼は一度受けると、解約するのに報酬の二割の金額を支払わなければならないそうだ。

 なので、よく吟味して依頼を受けなければならない。


「――ほかにもいくつかあるが、主要なところはこんなもんだろう。依頼の受け方なんかは、後日受付で聞いてくれ。なにか質問はあるか?」


 はっきり言って、覚えきるのはとてもできそうになかった。

 半分ほどは覚えたが、もう半分はちょっとあやしい。


「いや、なにかわからないことがあったらそのときに聞くことにするよ」

「そうか、ではこれにて登録完了だ。ほかに何か用はあるか?」

「私は無いわ、君は?」


 クレアが俺に尋ねてくる。


「いや、俺もない」

「そう、じゃあ私たちは帰るわね」

「そうか、じゃあな」

「えぇ、また会いましょう」


 俺たちは部屋から出て、廊下を歩き階段を降りる。

 一階はさきほどの騒ぎなど無かったかのようににぎやかだった。俺たちはその中を通り、ギルドの外に出た。

 空はもう暗くなりかけている。


「私の家はあっちだからここでお別れね。ソータ君、またね」

「あぁ、またな」


 クレアは道の反対にある通路へ歩いていった。


「……さて、確か銀狼亭は門の反対方向だったな」


 俺は銀狼亭を目指して歩き出した。

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