遺跡(2)
「……暗いな」
遺跡の中は暗く、全くと言ってもいいほど中がどうなっているかわからなかった。
「これじゃあ探索はできないか、《ライト》」
氷室が魔法で光球を作り出して、周囲を照らす。すると充分に明るくなり、俺たちの目に見えてきたのは、受付口のようなカウンターだった。
そのカウンターは部屋の中央に存在し、なにやら検問所のような雰囲気である。
「これ、どういう施設なんだ?」
「さぁ……? 少なくとも、なにかしら重要な施設に見えるわね」
かなり昔のものらしく土煙や埃ですごい事になっているが、警備が厳重であったことは俺にも見て取れた。
「あっ、階段があるね」
「続いているのは地下ですか……かなり不気味ですね」
検問所を通ると、そこには地下へと続く階段があった。……いや、階段というかエスカレーターのように見えるが、どうにも動きそうにはない。
エスカレーターはかなり下まで続いているようで、底は見ることができなかった。
俺たちはそのエスカレーターを下りてみることにした。
「かなり深いな……。これ、酸素とか大丈夫だよな?」
「いちおう今は大丈夫みたいだけど、一番奥はどうなってるか怪しいね」
カツカツとエスカレーターを下りる音が響く。響き具合的に、この建物にはかなりの広さがあるようだった。
そしてエスカレーターを降りること十分ほど、やっとの思いで一番下まで降りることができた。
「いや、えー……なんだこれ」
「……これは、なにからつっこんだらいいんだろうね」
エスカレーターを降りた先には広場があった。しかしいろいろとつっこみ所がありすぎて、俺たちは言葉に詰まる。
広場にはいくつもテントが張ってあったのだが、そのどれもが破けていたり血まみれだったりと酷い有様だった。そして、広場の所々にはナニかによって食い殺された、人間の死体がいくつも転がっていた。
「……これ、明らかに魔物によって襲撃を受けていますね」
「単なる魔物なのか、それともアンデッドなのか。そのどっちだとしても、きな臭いのは変わらないわね」
死体の肉は腐敗しきっておらず、無数の噛みちぎられた跡がついている。そして、骨には噛まれた後もついていた。
なにがあったのか分からないが、一気にここが怪しくなったのは間違いない。
俺たちはテント周辺の探索を始めた。
テントは比較的最近のものらしく、埃をかぶっているというようなことはない。組織名などはどこにも書かれておらず、どういった組織だったのかは全くわからなかった。
「おっ、なんの紙だ?」
一際大きなテントを探索していると、机の上に紙の束が置いてあるのを見つけた。
その束を手に取ってなにが書いてあるのは見てみると、どうやらなにかの研究資料のようだった。
「……なんだこれ?」
グラフや何かしらのことについての詳細な説明が書かれていたが、俺には理解することができなかった。
「ん? なにか見つけた?」
「あぁ、ほれ」
俺は近づいてきた氷室に持っていた紙の束を渡した。
「――どうだ? なにか分かったか?」
「……いや、なにかの統計や説明が事細かに書かれていたけど、なんのことかはよくわからなかったね。ただ一つ言えることは、これは表に出したらいけないものみたいだ」
「そうなのか?」
「うん、『封印』といった単語が大真面目に書かれていたからね。たぶんだけど、このテントの持ち主は裏の組織じゃないかな。それも、こんな所までわざわざ来れるんだ、かなり力のある組織だと僕は思う」
裏組織か……なにが目的でここまで来たのかはわからないが、このテントを見れば悲惨な運命を辿ったことは容易に想像できる。
「とりあえず、これは僕が保管しておくよ」
「あぁ、そうしてくれ」
氷室は資料の束をアイテムボックスに収納した。
「ここにはもう目に付く物はないね、ほかの場所を探そうか」
「そうだな、じゃあ俺はあっちを見てくる」
俺は氷室と別れ、探索を再開する。しかし、それ以降目新しい物は見つからなかった。
「――さ、ここの探索は切り上げて、ほかの場所に行ってみようか」
「通路はいくつかあるし、どうする? 手分けするか?」
この広場からはいくつか通路が伸びていた。効率を重視するなら、手分けした方いいだろう。
「……いや、ここは安全を取って手分けはしないことにするよ。危険かもしれないしね、バラバラに行動するのはよそう」
「わかった。じゃあ、適当な方から探索するか」
「まぁそうだね、ここで迷っていても仕方がないか」
俺たちは適当に探索する通路を選び、そこへと歩き出した。




