遺跡(1)
俺たちが森に入ってから五日が立ったが、一向に進展はなかった。それもそのはずだ、入ってから一切景色が変わっていないのだから。
「いい加減……なにか手がかりが欲しいんだけどね」
氷室はそう言葉をもらすが、そうしたところで現状がなにか変わるわけではない。
現在わかっていることはあまりにも少ない――ていうか、ないに等しい。
ノーヒントで調査しているとはいえ、できるだけ早くなにかしらの手がかりを見つけたいところだ。
―― ―― ―― ―― ――
「――ん? なんだあれ?」
俺は少し遠くにあったそれを指さした。
「人工物、みたいね」
「うん、しかも結構風化しているから、かなり昔のものみたいだ」
「皆さん、あちらにもありますよ」
そこにあったのは、割れた石碑のようなもの。近寄って見てみると、その石碑と同じようなものがいくつも見つかった。
そして、そのそばには明らかに人の手によって整備された道があった。それも今までに見てきたような石畳ではなく、アスファルトで舗装された道路のようなものだった。
ただ、整備されずに長い年月がたっているようで、穴が開いていたり草が生えていたりと酷い状態だった。
「……読めないな」
俺は石碑に刻まれていた文字のようなものを読もうとするが、全く意味はわからなかった。
なにかしら法則があるような気がしたが、俺が知っているどの文字とも違うようである。
「たぶん、これは遺跡の一部だね」
「遺跡? 俺には廃道に見えたんだが」
遺跡に舗装された道路があるものなのだろうか? ともあれ、俺は遺跡に道路があるとは思えなかった。
「奏多、知ってるかもしれないけど、この世界の古代文明の技術力は今と比べてはるかに高かったみたいだよ」
「そうなのか?」
「うん、少なくとも飛行機のような物が見つかっているくらいには、当時の技術力は高かったみたいだね」
飛行機って……それ、相当な技術力がないと作れないぞ。
少なくともこの世界の、そして今の技術力では作ることはできない。そんな高度な技術が昔にあったのも驚きだが、同時にそれが衰退したというのにも驚いた。
「それとここではないけど、ほかの場所でも同じような遺跡を見たことがあるんだ。だから、これは遺跡で間違いないと僕は思うよ」
「まぁ、これが遺跡かどうかはいいとして、アンデッドが大量発生していることとなにか関係があると思うか?」
「うーん……難しいところだね。関係ないとは言い切れないし、なにかしら関係があるとも言えないし」
ともかく、一度調べてみないことにはなにもわからないか。
そう結論を出すと、俺たちは道に沿って歩いていく。石碑のようなものは等間隔で設置されているらしく、同じような石碑をいくつも見ることができた。
しばらく歩いていると、優に五メートルほどもある扉のついた石造りの建物を発見した。
その建物はあたりに生えている木々とは打って変わって飾り気がなく、無機質と言っても差し支えないほどだった。コンクリートにも見えるが、どうやら俺の知らない建材で出来ているようだ。
「えらく無機質な遺跡だな。遺跡っていったら、もうちょっと生活感があってもいいとおもうんだが」
「その建物の使用用途によっても変わるんじゃない? まぁ、私は遺跡を初めて見るから想像の話なんだけど」
「おおかた、アリスさんの考えているような感じで合ってると思うよ。とりあえず中に入ってみよう、ちょうど扉もあいていることだしね」
遺跡の扉は、なぜか最初から開いていた。元々こうだったのか、それとも――。
「あっ、これを見て!」
俺たちは氷室の見ているものを見る。それは扉についている、無数の傷跡だった。
だがしかし、俺にはそれがなにを意味しているかはよくわからなかった。
「たぶん、これは扉を無理やりこじ開けた後だね。ほかの場所にはついてないし、間違いない」
「なるほど――ん? てことは……」
「あぁ、僕たちよりも先にここへ来た人がいるみたいだね。探検家か、それとも盗賊の類か」
俺たちは特に危険な目に合う事なく来ているが、ここが正常な状態であればもっと苦労しているはずだった。なぜならここは、このあたりでは有数の危険地帯だからだ。
そんな場所に自ら入るなんて、よほどの変わり者なのだろう。
「じゃあ、もしかしたらこの先で誰かに遭遇する可能性があるわけか」
「そうだね、その場合は友好的であることを祈るしかないけど」
こんなところまで来れるんだ、ある程度の戦闘力は持っているに違いない。それが複数人なのか、はたまた一人なのかはまだわからないが、もし先頭になれば脅威になるのは確実だ。
本当に、戦闘にならなければいいんだが。
俺たちは扉を通り、遺跡の中へと入っていった。




