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~十月十日~ 6

 流音が手にしたのはライフルとガトリングガン。持ちなれたナイフは持たせてもらえず、子どもだからと後方支援が担当になった。街の入り口近くにある三階建てのビルの上から道路を見下ろす。隣には香丸がいた。彼もまた、同じ理由でここにいる。彼の両親は別のビルから狙撃を担当するそうだ。現役の暗殺屋だから、そう簡単に死ぬことはないだろう。このビルの屋上には二人を合わせて四人いた。一人は仙花の保護者で、もう一人は三人のことを可愛がってくれる女だった。

「なー、オレたちも下がよかったよな?」

「いえ、私はそげきの方がとくいなので」

「そっか。でもオレはナイフが良かったなー」

「生意気言ってんじゃねーよ」

 男が笑いながら流音の頭を撫でた。女も笑ってその様子を見ている。仙花がいないことが、たまらなく不思議だった。香丸もどことなく落ち着かない様子で、もじもじとしている。南音がどこにいるのか、少し気になった。

「なぁ、なみとは?」

「南音は別の仕事があるからな。今日は来てねーよ」

「ふーん。じゃあももは?」

「ももは、子どもで、女、だからな」

 男は寂しそうに笑った。そんな顔をするのなら、仙花を連れて来ればよかったのに。ここに女がいるのに、ここに自分たち子どもがいるのに、仙花がいないのがおかしく思えた。けれどそれ以上は訊かないで、流音は視線を逸らした。女を見れば、困ったように笑っていた。大人は本当に理不尽で、勝手な生き物だと思う。


 道路を覗いていた香丸が、声を上げた。

「たたかってる」

「何!」

 男が道路を見下ろしたのに釣られて、流音も視線を下に向ける。確かに、誰かが交戦しているようだ。金属音と発砲音が響いている。

「ちくしょう、読まれてたのか?」

 男は焦りながら銃を構えた。武装している敵に銃口を向けて、引き金を引く。女も先ほどとは全く違う顔つきで手榴弾を投げていた。香丸と顔を見合わせて、二人もそれぞれ武器を手に取る。昼間を狙った完全なる奇襲は、相手に読まれていた。こちらの防衛戦で始まった惨劇。仲間の悲鳴が下から聞こえてくる。また一人、仲間が死んだ。また一人、敵を殺した。仲間が死んでいく事実より、人を殺す快感が流音を支配していく。舞う赫がとても綺麗で、もったいないと思った。ただひたすら引き金を引き続ける。

 しばらくしてから、敵が持ち出してきたのはロケットランチャー。それが躊躇いなく向かいのビルの屋上に向かって打ち込まれるのが見えた。確かそこには香丸の両親がいたはずだ。思い当たって香丸の顔を見る。けれどそこには何の感情も浮かんでいなかった。

「二人とも、こっちに来い!」

 男が二人の手を引いて階段を下りていく。女が先行して前を警戒する。どおんと音が響いて屋上が爆発した。どこのビルも同じように狙われているようだ。爆音は次第に激しくなっている。外から聞こえていた仲間たちの悲鳴が、いつの間にか途絶えていた。

「どうしますか?」

「逃げ場は、ないだろうな。けど、お前たちは逃がしてやるから安心しろ。約束だしな」

 男は笑って流音と香丸の頭を撫でた。下から上ってくる足音が聞こえて、四人は立ち止まる。ここはまだ二階で子どもを連れて飛び降りるのはぎりぎり、といったところだろうか。

「ここは私が残るわ。三人で」

 女は階段の踊り場で立ち止まるとマシンガンの銃口を下に向けた。何人かの断末魔が聞こえた。男は女に頷いて二人の手を引き部屋の中に入る。流音は女ともう会えないことが分かった。そんな顔をしていたから。流音は男の手を振り払って、女を抱きしめる。

「ありがとう」

 声は女に届いていたようで、優しく頭を撫でられた。男が慌ててこちらに戻ってきて、流音の手を引く。扉が閉まる瞬間、女は微笑んで、こちらを見ていた。

 部屋の中を進んでいく。窓から下を覗いてみても、敵がうようよといて、飛び降りることは難しそうだった。扉は部屋にあった机や椅子でバリケードを作り、時間を稼ぐ。使えそうなものはこれといってなく、逃げることは出来そうにない。

「ここでたたかうのか?」

「そうだなぁ。それしかなさそうだ」

 男は苦笑して二人の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。男が向かった部屋の隅には収納用の大きなスペースがあった。埋め込み式のそこには扉がついていて中には大人一人分のスペースしかない。三人で隠れるのは難しいだろう。

「よし、お前らここに入れ」

「あんたはどうするんだよ」

「いいから」

 ぐい、とまずは香丸が押し込まれた。続いて流音も男に入れられそうになる。

「やだ。オレはたたかう!」

 男はため息を吐いて俯いたあと、流音を力いっぱい抱きしめた。

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