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勇者に封印された魔王なんだが、封印が解けて目覚めたら海面が上昇していて領土が小島しかなかった。これはもう海賊を狩るしか——ないのか!?  作者: 小椋正雪
第二部 第一章:蒼い瞳のユーリエ

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第二九八話:竜公主〜ドラゴンマスター〜


「すまないが、もう一度召喚してもらえるか」

「かしこまりました。『星の守り手……四騎の(たい)竜がひとつ、轟竜(ごうりゅう)よ。ここに!』」


 海の上に巨大な魔法陣が敷かれ、それを門の代わりとし、黒い巨大な竜が姿を表す。

 竜といっても、俺たちがよく知るそれとはいくつか異なる箇所がある。

 まず、背中に羽がない。背中に放熱板と思しきヒレがあったが、それは脊髄に沿うように一直線に並んでいて、飛ぶようにはできていない。

 そして前足に対して後ろ足が極端に太く、大きい。腕だってかつての雷光号の強襲形態と遜色のない大きさであったが、その両脚の太さは雷光号の胸部を軽く凌駕していた。

 おそらくそれは、重心を下げたりふんばりを効かせたるするためのものではない。

 内部に、動力源である魔力炉を設置しているためだ。

 魔力炉は通常、腰の部分に置くものだ。

 重心に当たる部分に設置することにより、どのような機動を行っても快調に動作するためにそうしているのだが、ユーリエの轟竜は、左右の腿と脛に一基ずつ設置されている。

 おそらく腿と脛のそれを直列にし、左右で並列化させているのだろう。

 これにより、高出力駆動と長時間駆動を両立させている。

 もちろん、それぞれの魔力炉の出力差を限りなく零にするという、地味ではあるが精密性を求められる技術力と、それを実行可能にする計画性、そもそもその発想に至った設計力と、注目に値するべき箇所はとても多い。

 この機械仕掛けの竜を建造した者の顔を、みてみたい俺であった。


「すごい設計だな……俺もやってみたい」

「マリウス艦長なら、すぐにできるのでは?」

「いや、俺でもこれはまだ無理だ」


 クリスにとっては簡単に模倣できるようにみえるのだろうが、機動甲冑の体型と竜の体型ではなにもかもが大きく異なる。

 もしやるとするなら、数世代分の試作品を作って十分に検証を行う必要があるだろう。


「ユーリエ卿、これを卿が造ったのか?」

「いいえ、私には設計や建造なんて、とてもとても……」

「では、いったいどうやって?」

「第三〇〇階層の本棚を漁っていたら、偶然見つけました」

「魔導書か」

「そうなりますね。元々は、古い物語の本を探していたのですが」

「そ、そうか……」


 魔導書とは、本来魔法の使用方法、原理、応用する場合の指針などを記したものだ。

 断じて竜などの超存在を封印したものなどではない。

 ——が、それも一万年前の話だ。

 いまでは何らかの方法で、そういったことも可能になっているのかもしれない。

 


「あのー、ユーリエさん。ひとつ、気になったんですけど」


 アリスが挙手して質問する。


「竜を呼び出すおまじないで、『四騎の(たい)竜がひとつ』っておっしゃっていますよね」

「はい……」

「じゃあ、あと三匹? いるんですか?」


 !?

 そうか、たしかにそうだ!


「ええと……確かにいますが、私が契約しているわけではないです」


 困った様子で、ユーリエはそう答える。


「伝承上、この海には四騎の大いなる竜がいます。どんな獣よりも早く駆けることのできる最速の竜、麟竜(りんりゅう)、どんな船よりも巨大な体躯を持つ、最大の竜、餮竜(てつりゅう)、全てが謎に包まれた、爛竜(らんりゅう)、そしてどんな竜よりも怪力を誇る、最強の竜……私が契約する、轟竜(ごうりゅう)です。このうち、麟竜だけはどこの学園の生徒が契約しているかが広く知られています」

「それは?」

「統合鉄血学園アイアンワークス。先ほど私たちを襲撃してきた学園の本校ですね。その生徒会の副会長が契約者——竜公主(ドラゴンマスター)です」

「そうか……直接戦ったことは?」

「いえ、分校はともかく、本校はとても慎重だと聞いておりますので、まだです」


 どうやら、先ほどの襲撃は血の気の多い末端の組織による暴走とみていいらしい。


「どう思います? マリウス艦長」

「当面はそのアイアンワークスのみ警戒していればいいだろう。残りの二騎の竜は契約している者が不明ならそう簡単には出てこないだろうからな」

「私も同意見です。ただ最速といってもこの海でどうするのか……」

「先ほど轟竜が完全に水の上に浮かんでいたろう。あれを維持したまま、海面を駆け回れるのではないかと思う」

「なるほど、確かにありそうです。ありそうですが……そうだとすると、厄介ですね」

「そうだな……雷光号、貴様ならどう戦う?」


 桟橋に停泊する雷光号に声をかける。


『いや……戦うっていってもよ、全力の大将と一緒でないと無理だろあれ』


 そしてその回答は、極めて的確だった。

 たしかに水面の上にいて高速移動する敵は、潜水艦よりも水上艦の方が戦いやすいだろう。

 あるいは……。


「こちらも強襲形態で推していくとかな」

『それな。——あれ、オイラの強襲形態ってどうなった?』

「ちゃんとあるから安心しろ」


 もっとも、前の船体の時とは大幅に形が変わっているが。


「あの……ところで、マリウス卿」


 か細い声で、ユーリエが俺に声をかける。


「そ、その……そろそろ、轟竜をしまってもよろしいでしょうか。消費が激しいも……の……で……」

「ああ、構わないが——ユーリエ卿!?」

「ユーリエさん!?」

「ユーリエ生徒会長!?」

『本の姉ちゃん!?』


 ユーリエが、目に見える形でしおれていた。


「オイラの妹——じゃない、紅雷号四姉妹が、劇場版ガン◯ムS◯EDFREE◯OMの敵と名前が被っている件」

「偶然だぞ」


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