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勇者に封印された魔王なんだが、封印が解けて目覚めたら海面が上昇していて領土が小島しかなかった。これはもう海賊を狩るしか——ないのか!?  作者: 小椋正雪
第二部 第一章:蒼い瞳のユーリエ

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第二九七話:轟竜降臨


 水竜プレシオ。

 大きさは北半球側でいえば巡洋艦くらいだろうか。

 それが、水雷艇並の速さと機動力で動くのだから、一般艦艇においてはそれだけで脅威だろう。

 推力はどこから不明だが、高機動力はの由来はだいたい想像がつく。

 四肢がヒレになっているのだ。

 これを臨機応変に動かすことにより、複雑な機動を実現しているのだろう。

 そして武装は……。


「水竜プレシオ、四機とも口部より荷電粒子砲による砲撃! 狙いは塔です!」

『あ、それはこちらで自動的に防ぎますのでご心配なく』


 轟炎(ゴゥファイヤー)蒼雷号の荷電粒子砲ほどではないが、それでも戦艦の主砲に等しい威力の砲撃が四本、一直線に塔へと伸びる。

 しかしその手前に巨大な魔法陣が現れ、砲撃はことごとく弾かれたのであった。


『空竜プテラノはこちらでどうにかします。お手数ですが、水竜プレシオを——』

「心得た。雷光号、魚雷発射用意」

『おう。でもよ、やっこさんたちオイラたちに気づいてねぇの?』


 なるほど、俺たちが向こうの勢力やその位置を把握できるのなら、同じ魔族である向こう側も、こちらを補足しているのではないかという懸念は道理である。

 だが……。


「こちらは隠蔽の魔法をかけてある。加えて艦内の熱は外に出ないように設計してあるし、騒音も限りなく低くしたつもりだ。だから、俺よりも魔力が強く、なおかつそれを使いこなせる技量を持つ者でもない限り、こちらの発見は無理だろう」

『ほーん……あらためてそうきくと、オイラの新しい艦体(からだ)すげぇな』


 潜水艦は隠密行動を至上とする艦種である。

 故に、探査対策には全力で対応していた。

 相手も潜水するのではないかという懸念はあったのだが、さいわいにして水竜プレシオは洋上を進むのみである。


『んじゃ魚雷ぶっこむけど、どれくらいやる?』

「使用する魚雷は四門。同時に射出してください」


 調子ができてきたのだろう、俺の代わりにクリスが回答する。


「途中までニーゴさんが誘導、軌道が直線に入ったところで、自己誘導に切り替えてください」

『あいよ! 大将、射出準備完了!』

「撃て!」


 艦砲とはちがう、重低音が響いた。

 魚雷発射管四門から、それぞれ魚雷が放たれたからだ。


『よし……いいぜ……きづいてねぇ……いまだ、自動に切り替え! あたりやがれ!』


 こちらの魚雷をあらわす蒼い光点よっつと水竜をあらわす赤い光点よっつが重なり——それぞれが消滅する。


「アリス、爆発音がくる。聴音機の音量に気をつけろ」

「はい! ——水竜プレシオ四機、撃沈確認です」

「よし。残りは空竜プテラノだが……」


 対処が少々難しい。

 何せ相手は空を飛んでいる。


「あちらも口から荷電粒子砲を撃っているようですが、プレシオほどの高威力ではないようです」

「だろうな」


 それ故の、飛行能力だろう。


「対空魚雷を撃つか……こちらの位置が推測されてしまうが」

「いえ、ここは様子見にします。ユーリエさんが、どのように対処するのかみてみたいので」


 それは俺も興味があった。

 自身は謙遜していたが、現在の魔王がどのように戦うのか、それは是非ともみてみたい。


『では……これより召喚をおこないます。雷光号は射程・爆発範囲外ですが——念の為、もう少し深く潜航してください』

「了解した、ユーリエ卿——爆発?」

「塔前方海面に、大型の魔法陣!」


 アリスが報告する。

 先ほどの塔の防御に使った魔法陣よりもさらに大きく、そして複雑である。


『星の守り手……四騎の(たい)竜がひとつ、轟竜(ごうりゅう)よ。ここに!』


 光が弾けた。同時に——。


「大型質量物体出現! これは……(グレート)雷光号よりも大きいです」


 めずらしく、アリスの声が上擦った。

 それは、二本の脚で立つ、巨大な黒い竜であった。

 両脚が雷光号の船体よりなお太く、腕も胴も太い。

 頭部はそれに比較して小型であったが、大きく裂けた口と青白く光る目の鋭さは、俺ですら軽い恐怖をおぼえた。

 問題は、それが生き物ではないということだ。

 あの晩年のタリオンのように、生体組織を機械に置き換えているように見える。

 つまり、それは。

 南半球で独自の進化を遂げた、機動甲冑!


『おねがいします、轟竜』


 理解したとばかりに、轟竜とよばれた黒い機械の竜は、小さく頷く。

 そして、全身が青白く、微かに発光を始めた。


「なんだ、この出力は……!」


 ざっと走査した結果、魔力炉が大腿部と脛部に存在するのがわかる。これが直列に、そして左右で並列としてとんでもない出力を全身に行き渡らせていた。

 その証拠に、轟竜は海面の上に、立っている(・・・・・)

 ありあまる推力を足の裏から噴出させて、擬似的に海面の上に立っているのであった。

 それもそのはず。

 ひとつひとつの魔力炉が、雷光号のそれを上回っている。それを四基も搭載しているのだ。計算上の出力は——。


「ぐ、(グレート)雷光号の二倍——いや、三倍近いだと!?」

『なにそれこわい』


 そんな轟竜が、口から光の魔法をはいた。

 おそらく直でみていたら、まぶしくて直視できなかっただろう。

 それは扇状に放たれた、高出力の光である。そしてそれは徐々に、やがてすばやく一直線に収束し——。

 轟竜が、首を大きく振った。

 それにあわせて、とてつもなく巨大な光の剣が、空を切り裂く。

 当然そんなものを空竜プテラノが防げるはずもなく——。


「よ、四機とも消滅です……」


 爆発することすら許さず、轟竜は消滅させたのであった。

 それを確認したのだろうか。轟竜は大きく吠える。

 その音量は、先ほどの爆発など比ではなく——。

 結果、はるか上空で待機していたとおぼしき箒を使った航空隊は、海面へと落ちてきた。

 幸いにして、ぎりぎりのところで持ち直し、慌てて退却していく。


『敵対勢力の殲滅を確認……みなさん、おつかれさまでした。轟竜も、おつかれさま』


 轟竜はまたしても小さく頷いた。

 どうやら、喋らないだけで自律した思考ができるらしい。

 再び現れた魔法陣の中に、ゆっくりと身を沈めていく。


「ユーリエ卿、すまないが——いまの竜を、説明してほしい」

『そうですね……説明があとまわしになってしまいました。申し訳ありません』


 こちらからは声しか聞こえないが、ユーリエが頭を下げたのが気配で伝わってくる。


「いまの轟竜は、この海に四騎いる(たい)竜のひとつ。そして私は——」


 実に魔王らしい荘厳さすら感じる気配の中、ユーリエは続ける。


「その轟竜の契約者、竜公主(ドラゴンマスター)です」


「魔王ーっ! そろそろだよな、魔王ぉぉぉーっ!」

「やかましい! こっちはそれどころじゃないんだ!」

「ちなみにマリウス艦長、ブレイ◯ーンの登場により、南半球での勇者は自律する機動甲冑という設定を変えるそうです」

「だろうな……」

「せっかくなので、オペレーターと提督のお嬢さんにも、俺と魔王の物語を聞いてほしい。出会い……そしてむすばれるふたり!」

「だからやかましいわ!」


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