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勇者に封印された魔王なんだが、封印が解けて目覚めたら海面が上昇していて領土が小島しかなかった。これはもう海賊を狩るしか——ないのか!?  作者: 小椋正雪
第十一章:一万年の、夢の終わりに

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第二八二話:合体不能、雷光号!?

「診断が終わった。終わったが――」


 指揮艦『コマンダー』の艦橋で、俺はそれを見上げながらそういった。


「覚悟はできてるぜ、大将。どんといってくんな」


 同じく艦橋にいたニーゴが同じように見上げながら、答える。


「思っていたより、重症だった」

「重症……!」

「六基の魔力炉が、あの光の零番との戦いで超過駆動のさらにその先までいった結果、ほぼ融合していてな」

「融合……!」

「故に下手に分離できない。手足が外れるようになっていても、内臓が繋がっていてはどうにもならないからな」

「内臓……! ——内臓?」

「貴様らの魔力炉に相当する。魔族や人間の消化器官や身体を動かすための心臓、呼吸をするための肺などがそれだ」

「ああ……そいつは、分離できるわきゃねぇわな」


 そのままふたりで、佇む(グレート)雷光号を見上げ続ける。

 コマンダーからはそれなりに離れていたが、戦艦五隻分超の機動甲冑は、あまりにも巨大であった。


「それってさ、大将」

「ああ」

「もう新造しちまった方が早いってやつ?」

「そうだな……」


 ニーゴからの質問は、核心をついていた。

 故に俺は、慎重に言葉を選んで返す。


「鬼斬、白狼、ステラ、バスター、そして轟炎(ゴゥファイヤー)に関してはその通りだ。その方が圧倒的に早い」

「んじゃ、オイラ自身は?」

「雷光号は……分離作業と新造作業、ほぼ同時だろうな」

「そいつは、オイラを元のオイラのままに作り直した場合だろ? もし大将がいちから作り直した場合はどうなるんよ?」

「それは……それならば、新造の方が早い」


 思わぬ申し出に戸惑いながらも、俺は即答した。

 雷光号の本来の船体は、幾度もの改造を繰り返してきている。

 そのため、船体を正確に再現しようとすると、その改造した経過を再度おいかけなくてはならない。

 それに対し、俺がいちから設計し、建造した場合は——かなり早く、仕上がることになる。


「しかし、タリオンの決着はついた。それほど急ぐこともあるまい」


 だから、分離作業を行った後、新たに改造を——とおもっていたのだが。


「なにいってんだよ、大将」


 鎧の奥で、ニーゴは確かに笑った。


「魔族の生き残りの居場所がわかったんだ。そっちを探しに行きたいんだろ?」

「——そうだな。その通りだ」


 照れ隠しをしようとするのをどうにか抑えつつ、俺はそう答えた。

 魔族の生き残りを探したい。

 それは封印から解かれた当初からの俺の願いである。

 そしてタリオンはその生き残りのいる場所を指し示してくれた。

 幸いにして——いや、俺以外からみれば幸いでもなんでもないのだが——人間たちの生活圏であり、彼らのいう北天、つまり北半球は平和的統一が事実上なされている。

 それならばあとは、彼らのいう未知の南天、すなわち南半球に赴くだけだ。

 その感情をできるだけ隠していたつもりであったが、どうやら顔に出ているらしい。

 ニーゴが気づいたのだ。おそらくだが、クリスもアリスも気づいているのだろう。


「だからよ、新しいオイラの身体は、最初から向こうに行くことを考えた造りにしてくんな」

「いいのか?」

「かまわねぇよ。それにオイラも興味あるんだ。南の海のさらにその先にある海ってのがよ」

「だが……俺が新たに造るとなると、お前の身体の元の部分は無いに等しくなる。本当に、それでもいいのか?」

「いいもわるいも、今のこの鎧の身体だって、大将がいちから作ってくれたもんさ。なんの不都合もねぇよ。それに、オイラの心——つうの?——は、ちゃんと移せるんだろ?」

「ああ、それは可能だが……」

「あのタリオンってやつは生身でそれをやったんだ。それなら、機械のオイラができなきゃ、おかしいよな?」

「そうだな、そのとおりだ」


 それはタリオンへの対抗心なのか、

 あるいは生物の身でそれを実行した敬意なのか。

 あるいは、自らをもっと強化したいという願いと、純粋な好奇心なのかもしれない。


「そんで大将、あたらしくオイラを作り直すとしたらどんな(ふね)にするんだ?」

「それはだいたい決まっている。タリオンのいう嵐の壁を越える方法はただひとつ、海中を往くことだ。それならば、取るべき手段とそれに適した艦種はひとつしかあるまい」

「つまり?」


 興味深げにニーゴが首を傾げる。


「長期間の航海に適した大型の船体を維持しつつ、潜水艇と同じく海の下に潜る能力をもち、さらには水中では使えない艦載砲の代わりに、それに適した索敵装置と武装を持つ艦——」


 講義するように人差し指を立てて、俺は続ける。


「すなわち、潜水艦だ」

ニーゴ「大将、オイラの移植手術じゃなかった移植作業、よろしくお願いします」(ギュッ)

魔王「ああ、任されよう!」(ギュッ)

アリス「あの……なんでふたりとも顔が濃ゆいんですか?」

クリス「というかそのギュッっていう謎の効果音が気になるんですが」


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