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勇者に封印された魔王なんだが、封印が解けて目覚めたら海面が上昇していて領土が小島しかなかった。これはもう海賊を狩るしか——ないのか!?  作者: 小椋正雪
第十章:縦海の大海戦

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第二四五話:人機一体

 さてみなさん……。


 わたくし、タリオンめがしかけた最後の魔王認証装置、それはかつて陛下が使用された機動甲冑に、陛下の行動記録をすべて読み込ませた、いわば陛下の現し身とも呼べる自動人形でした。

 これに対抗できるのは実質陛下のみであり、これであればご本人がお出ましになると考えたのですが――なんと、でてきたのは人間ではありませんか!

 これでは陛下が本物かどうか、最後の確証を得ることが出来ません。

 この先、いったいどうなってしまうのでしょうか?


 それでは! 機動甲冑ファイト、レディ――


「それ以上はいわせん! いわせはせんぞー!」



『腰は固定した? それじゃまずは少しだけ前傾姿勢になって――そう』


 鬼斬黒雷号(おにきりこくらいごう)から、オニキスの声が届く。

 普段は映像も送れるのだが、今はその……リョウコがなにも着ていないので、アリスによって映像のみ切断されたからだ。

 直前にみえたのは、円筒形の操縦席。

 腰の部分のみ固定したそれは、操縦者と黒雷号の動きを、そのまま同期させるらしい。

 造ったのはスピネルだが、それを発注したのはオニキスなのだという。

 もしこれが本当にその通りに動くのだとしたら、白兵戦を得意とするものは


『あの……刀は? 刀はこのままでいいのですか?』

『うん、大丈夫。刀は同じようにもっているから安心して。それじゃ――いくよ』

『んっ――』


 鬼斬黒雷号の全身が、一瞬震えた。

 そしておそるおそるといった様子で前を向き、周囲を見渡す。


『これは……すごい、すごいです』

『感想はあとにしよう。身体に異常はないかい?』

『あ、はい――いまのところは』

『よし、じゃあ、スピネル姉さんの後ろから出るよ』

『あの……推進器はどうやって操作すれば?』

『ごめん、言い忘れていた。足の裏に力を込めてみて。最初は、ゆっくりとね』

『はい!』


 不慣れなはずなのに、リョウコは黒雷号を丁寧に操縦することが出来ていた。

 それはつまり、スピネルの造った操縦装置が非常に優秀であることを示す。


『あの、艦載砲はどうやって?』

『それはボクが狙って撃つ。リョウコ元帥は機動・回避・それに白兵戦に集中して』

『わかりました。では――いきます!』


 鬼斬黒雷号が、いままでみたことのない前傾姿勢になった。

 推進器が全開で噴かされ、海面が大きく波打つ。

 一瞬で間を詰めるリョウコとオニキスに対し、魔王騎――いや、白と黒の九三――は、動ずることなく背中の荷電粒子砲を連射した。

 しかしそれをリョウコは横に跳んで躱す。

 それも、連続でだ。

 以前、タリオンの迷宮でみせた華麗な足捌きが、黒雷号に宿っていた。

 稲妻のようにジグザグに跳びながら、鬼斬黒雷号は白と黒の九三に迫り、腰の光刃刀を引き抜きざまに斬りつける。

 白と黒の九三は、動ずることなく自らの光帯剣を引き抜き、抜き打ちの光刃刀を受け止め……。

 突如爆発が起こり、両者は大きく引いた。


「黒雷号! いまのはなんだ!」

『ええと、ボクもちょっと驚いているんだけどさ――』


 やや混乱した様子で、オニキスが答える。


『切っ先が、音速を超えたみたいだ』

「音速!?」


 確かに機動甲冑は平均的な魔族の身長の十倍近い。

 今の海賊や雷光号は二十倍といったところか。

 もしもその規模で、リョウコが得意とする神速の抜刀術を使ったら。

 ――なるほど、たしかに切っ先が音速を超えかねない。


『なるほど、つまり音速を超えたときに受け止められるとああなる訳ですね』


 意外にも冷静なリョウコだった。


『では、受け止められないように振りきるとしましょう。いえ、それよりも――』

『戦闘中に考え込まないで、リョウコ元帥』


 オニキスのいうことももっともである。

 白と黒の九三は光帯剣を弓を引くように構えると、バク転と回転斬りを組み合わせた剣技を仕掛けてきた。


「でましたね、マリウス大将のデタラメ剣術――」


 クリスがそんなことを言うが、あれはちゃんと徹甲竜巻斬という名前がある。

 もっとも、俺にしか使えないのは確かであったが。

 それに対し、鬼斬り黒雷号は大きく下がってそれを避けると、光刃刀を異様に低く構え――。


「あの距離で斬りつけた!?」


 クリスが驚くのも無理はない。

 その間合いは、明らかに三歩――いや、四歩分の踏み込みが必要であったのだ。

 当然、それはただの空振りになるはずなのだが、


「衝撃波、白と黒の九三に命中しました」


 アリスの報告に、俺とクリスは目を見合わせた。


「なん……だと?」

「たしかに、背中の荷電粒子砲が損傷していますが――いったい何故?」

『なに、簡単なことですよ』


 うまくいって重畳ですと続けながら、リョウコが答える。


『音速を超えて剣戟を繰り出せるのなら、その際に出る衝撃波を操って、相手にぶつけようとしたのです。まだちょっと細かい狙いがつけづらいですが、うまく行ったようでよかったですね』


 なるほど……なるほど?


「なんという、デタラメ剣術――」


 クリスが唸る。


「さしづめ――」

「デタラメ抜刀術ですね」


 俺の言葉を的確につなげるアリスであった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 初めての操縦なのにここまで使いこなせていて凄いです、凄く格好良いです! 音速を超えたと分かればそれを利用して衝撃波を使うことを想いつくなんて、リョウコさん、本当に強いですね。 [一言] 前…
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