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勇者に封印された魔王なんだが、封印が解けて目覚めたら海面が上昇していて領土が小島しかなかった。これはもう海賊を狩るしか——ないのか!?  作者: 小椋正雪
第九章:新船団・誕生!

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第二三一話:守護元帥と、元帥杖

「護衛艦隊元帥、クリス・クリスタイン」

「――はい。ここに」


 船団アリス中枢船のひとつ、『ウィステリア』の最上階層『宮廷』。

 いまここは、船団アリスを形式上治めるミニス王専属の組織『王府』の中枢となっていた。

 大きくやることは、ふたつ。

 まずは俺の管轄である『行政府』(どうもこれが正式名称になるらしい)の助言と承認。

 助言とは五船団が統合したため古くこんがらがった風習を正確に記録し、それを必要なときにどのように使うのかをこちらに教えることで、承認はいってしまえばただ判を押すだけの仕事となる。

 とはいえ形式上でも承認は承認。人間でない俺が直接統治する形より、ずっといいだろう。

 ――それをアリスとクリスに話したら、ふたりとも『そんなこと気にしていません!』と口を揃えてはいたが。


 さて、もうひとつは今やっている儀式そのものだ。

 政治を司る行政府、そして軍事を司る護衛艦隊などの高官などは、こうして就任式を執り行うことでその地位を公的に保証させるわけだ。

 特に、最高位周辺は王より直々に任命されることとなる。

 これが、意外と侮れない。

 伝統を重んじる者はそれだけで士気が上がるし、そうでない者も、それ直接触れることで士気が上がりやすくなる。

 これは、魔王となって面倒くさい式典まわりを一通り覚えた故の、経験と実感であった。

「貴官を、守護元帥に昇任するとともに、護衛連合艦隊総司令官に任命する」

「謹んで拝命致します」

「うむ、忠勤に励むが良い。マリウス公」

「はっ」


 ミニス王の合図で、俺は銀の盆に白い布を被せ、さらにその上にのせた珊瑚の箱を恭しく王の前に差し出す。

 その中にあるのは、実用性を維持しながらも豪華な装飾を施した指揮杖(しきじょう)が納められていた。

 杖と言っても、歩行を補助するほど長くはない。

 クリスの肘から、伸ばした指先程度の長さくらいである。

 元帥杖(げんすいじょう)、そのさらに上をいく守護元帥杖。

 それはクリス専用の、地位と権威と、実績の象徴であった。


「これは重いか、クリスタイン守護元帥」


 それを手渡しながら、ミニス王はクリスに問う。


「はい、重いです」


 身をかがめて元帥杖を受け取りながら、クリスがそう答える。

 実際には、極めて軽量に造られているのだが、そういう意味ではない。


「ですが、その重みに屈することなく、忠勤に励みます」

「で、あるか。ならばよし」


 元帥杖を片手に、クリスが直立する。


「総員、敬礼」


 俺のすぐ隣に控えていた、進行役のアリスが、普段の様子では信じられない鋭い言葉を響かせる。

 こういうのもなんだが、一斉に敬礼したときの衣擦れの音と、軍靴の踵をかち合わせる音は、いつ聞いても心地が良いものであった。


「続いて、アステル・パーム中将――」

「はい。ここに――」


 こうして、ひとりの守護元帥と四人の元帥が正式に任命された。

 既に組織としての護衛連合艦隊は構築済みだが、これにより名目上も組織済みということになる。


「うっし、おわったおわった!」


 自分の元帥杖で肩を叩きながら、エミルが首を左右に動かす。


「ちょっと、エミルさん!? 陛下はまだ御前にいらっしゃいますわよ!?」

「ああ、よいよい」


 当の陛下も既に玉座から降りているので、一応は大丈夫だろう。

 かつての俺なら、許さなかったかもしれないが。


「エミルさんはいつものことですからいいとして……マリウス大将? この元帥杖、なんかひとまわり大きくなっていないですか?」


 クリスが自分の元帥杖を握り直しながら訊く。

 以前の元帥杖は、もっと細身の、それこそ楽隊の指揮棒を想わせるものであったから、違和感がぬぐえないのだろう。

 もちろん、その大きさ――というか太さにしたのは、意味がある。


「少し取り回しに難があるような――」

「それはだな……片方の先端に宝石がはめ込まれているだろう?」

「はい」

「それを床の方に向けて、先端付近にある、装飾を模した(ボタン)を強く押し込んでくれ」

「こうですk――なんなんですかぁ! これぇ!」


 なんなんもこんなんもない。

 元帥杖に、光帯剣(こうたいけん)の機能を内蔵させただけだ。


「ぉぉ……おおお! うひょー! こいつはいいな!」


 それをみたエミルが、早速自分ので刀身を出し、ぶんぶんと振る。


「ああ、エミルが前にほしがっていたのを思い出してな」


 なので、折角だから全員分作ってみた訳だ。


「なるほど、いざというときのもう一振りということですね!」


 同じように刀身を出したリョウコが、嬉しそうにそう呟く。

 ちなみに彼女のみ、特例で刀を腰に差している。

 こちらも元帥に昇進した際に造られた大業物(おおわざもの)と呼ばれる特級品なのだが――その刀身は、俺には信じられない出来であった。

 なにをどうやったら、あんなに鋼を薄く何層にも、いや、何十層も折り重ねることができるのだ……!

 ――閑話休題。


「マリウス公」


 ついに我慢が出来なくなって、自分の元帥杖から光の刀身を出すアステルを眺めながら、ミニス王が俺に声をかけた。


「なんでしょうか、陛下」

「余も、あれが欲しい」


 ――わかる。

 目の前でこういうものをみたら、誰もが欲しくなるであろう。


「……御意。近日中にひと振り用意しましょう」

「ああ、だが、実際に切れないように頼む。余は剣の扱いに慣れておらぬ故、な」

「――承知致しました」


 元帥杖に仕込まれた、光帯剣の刀身は光の魔法を高密度に凝縮し、刀身内だけに納められた高熱をもって対象を焼き切る剣である。

 従って、それを切れないようにするには、ただの光にすればいいのだが――それではただの携帯用照明であろう。

 もちろん、ミニス王はそういうものを求めていないはわかる。

 おそらく実体をもった、なおかつ切れない光の刀身が欲しいのだ。

 光を模した、何か別の属性のものを刀身にする?

 しかしそうした場合、現出と収納の問題が浮き彫りになるが――。


(どうする……? どうすればいい……?)


 その日、俺は徹夜をした。


「完成するまでは、こちらを」

「これは?」

「ディ◯ニーの、ライトセイバーでございます」

「おお、これはよい……すごいな、◯ィズニーは」

「はい、マジですごうございます」

https://youtu.be/ggWBEj8ppgM

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― 新着の感想 ―
[良い点] おおっ!? ディ◯ニーのライトセイバー欲しいな…!
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