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俺、異世界で自作ダンジョン目指します!  作者: ITSUKI
ダンジョン攻略後半戦
35/67

第35話:戦い終わって(2)

 時間はまだ昼前。

 ラスボス戦でかかった時間がそれだけだとは到底思えないのだけれど、

 実際は午前中だけの出来事だったわけだ。


 広場の外れ、誰も来そうもない場所に置いてあるテーブルに陣取り、

 昼食になりそうな物と飲み物をササッと買って席に着く。


 まずはラスボス戦の様子をハヤトとアンヌさんに説明。

 ミリアさんがいた説明と被る部分も改めて詳しく。


 そこで俺が【地中適応】というスキルを身に付けた話をする。


「そうすると、ダンジョンの中なら何倍もの能力になるのか」


「そうデス! ナナミよりも強いデス!」

「いや……身体の動きは、三倍になってもナナミには敵わないよ」


「でも魔法が凄かったデス! 巨大モグラの頭が吹き飛んだデス!」

「あれは炎の魔法石の威力だから……」


「いえ、それを抜きにしても、

 あの剛石雨は土魔法使いとして上位クラスの威力はありましたわ」


「だとしてもダンジョンとか土の中限定だからね」


「ユウキ君……ダメだよ。自分の能力を謙遜しすぎるのは良くない。

 正しく認識しないと、正しい行動はできないからね」


 アンヌさんからの指摘はもっともだ。

 せっかく身に付いた自分の力、これからの戦いに貢献できる力なのだから。

 ここは皆の褒め言葉を素直に受け取ろう。


「確かにその通りですね……わかりました。少しは自信を持ちます。

 ありがとうございます、アンヌさん」


 それからラスボスの情報について。


「それにしても、ラスボスに巨大モグラか。

 話の通りだと、確かに探索者が全滅したせいで、

 今まで情報が全く出なかったと考えてもおかしくないな。

 その件は組合にしっかりと報告した方が良い」


「そうだね。対策が見つからないと、

 ラスボス攻略の適正レベルを大幅に変更する必要がでてくるからね」


 ハヤトとアンヌさんの指摘に、俺も思ったことを伝える。


「地中適応の発動を防ぐ方法が見つかれば、大丈夫なんだろうけど、

 でもそれは俺の地中適応も無効化できる方法だから、痛し痒しって感じだな」


「うん? じゃあ報告するのを止めるかい?」


 いたずらっ子のような笑顔を浮かべるアンヌさん。

 そんな身勝手なことをするつもりはない。


「いやいや、そんなことはしませんよ」


 続いて宝箱から出てきた【武器融合魔法石】の話。

 ハヤトもアンヌさんも驚いていた。二人ともその存在を初めて知ったそうだ。

 けれど「もしかしたらアレがそうかも……」とアンヌさん。

 知っている伝説の武器にそれを思わせるモノがあるようだ。


 そんな大それた効果のあるお宝だけど、

 俺が持ち主になるのを「当然だ」「当然だよ」と納得してもらえた。


 皆が皆、俺が受け取るべきだと言ってくれて、

 俺もこのお宝から生まれるであろう武器には心惹かれる。

 という訳で、みんなに礼を言って遠慮なく受け取ることにした。


「ひとつはハヤトに買ってもらったこの槍なのは間違いないと思う。

 使っているのはここ数日だけだけど、すっかり手に馴染んでいるんだ。

 これが強化できて、ずっと長く使えるようになるのなら凄く有り難い」


 選んだのは自分自身だけど、

 お金を出してくれたのはハヤトだという気持ちはしっかりと持っている。

 感謝の気持ちを込めてハヤトを見ると、

 俺にしかわからない程の微妙さで頬が緩んでいるようだ。


「でも、もうひとつの武器は今すぐには無理だからゆっくりと考えるよ」


 とりあえず【武器融合魔法石】の話題はこれで終わり。

 一区切りをつけて、そのまま言葉を続ける。


「話は変わるけど……ここで、みんなに伝えておきたい事があるんだ」


 そう前置きをしたのは【聖魔眼】が知らせた『大切な存在』の話をするため。

 どうしても今この場で伝えたかったのだ。


「ナナミには話をしていたよね。

 この眼がナナミを『大切な存在』って教えてくれたことを」


「はいデス」


「ハヤトには話したんだけれど、実はあの後――

 リリス、そしてクレアも同じように眼が『大切な存在』だと伝えてきたんだ」


 リリスが目を見開いて俺を見る。

 すぐに「そ……そうだったのですか」とすまし顔に戻ったけれど少し頬が赤い。

 多分喜んでもらえているのだろうと良い方に考える。

 クレアは……わかりにくいが、それでも嫌そうな顔はしていない。


「その時はまだ、俺の眼が【聖魔眼】なんて名前も付けてもらっていない時で、

 どんな意味があるのか、どこまでの意味があるのか分らなくて黙っていたんだ」


 誰も俺の話に口を挟まない。


「けれども……ハヤトとアンヌさんには反応していなかった」


 ハヤトとアンヌさんの顔を見る。ハヤトはちょっと不機嫌な顔だ。

 アンヌさんは「えー……」と情けない顔をしている。


「で、ついさっき――俺が二人を見て変な態度をとったあの時、

 あれはハヤトとアンヌさんの顔を見たら、見事に瞳が反応したからなんだ。

 二人とも『大切な存在』だって」


 突然反応した理由は想像でしかないけれど―― 


「多分……今までは【聖魔眼】のレベルが足らなかったんだと思う」


 ありがたいことにハヤトもアンヌさんも喜んでくれた。

 ナナミもここまでを静かに聞いていた。

 もしかしたら『自分だけじゃないのか』なんて思われるかもと考えたけれど、

 そんなそぶりは全く見せずに屈託なく笑っている。


「何かが変わった訳じゃないけれど、

 どうやらみんなが俺にとって『大切な存在』なので、

 これからも……よろしくお願いします……ってことなんだ」


「はい、よろしくデス!」

「ユ……ユウキ様はワタシにとって大切な存在ですわ……」

「……うん」

「まぁ、改めて言われるほどでもないな」

「ハヤト、喜びが隠せてないよ」


「あぁ、なんかちょっと恥ずかしかったな……話を変えようか」

 

 アンヌさんが、剛岩の竜騎士ローグと闇魔法使いガウス、

 あの二人との戦いがどうなったのかを話してくれた。


「ローグはハヤトの実力を見誤っていたんだよね。

 魔物相手には強いかもしれないけど、

 駆け引きがモノを言う対人戦闘は若さゆえの甘さがあるだろうって。

 馬鹿だよねぇ……ハヤトの駆け引きのうまさは、

 多分竜騎士の中でもトップだとボクは思っているんだよ。

 まぁ、腹黒いともいうんだけどね」


「いや、腹黒さはアンヌの方が上だろう」


 反論すべきところはキッチリと反論する。ハヤトのいいところだ……多分。

 話の腰を折られて口を尖らせたアンヌさん。


「まぁ、それを言ったらガウスが一番策略家なんだろうけど……。

 今日はローグが好きにやってたみたいだからね。

 かといって仮にガウスが主導権を握ったとしても、

 ローグをうまく使えたとは思えないし、結局はこっちに負けは無かったのさ」


 防具が結構ひどい有様になっているのは、

 相手にギリギリで戦っていると見せかけるための演出だったらしく、

 見かけほどダメージを受けていないとはアンヌさんの弁。


 意識のないローグとガウスを、

 さっきの最下層最初の部屋まで引き摺ってきて、とりあえず待機。

 そこに現れた探索者――別の部屋でラスボス攻略を終えて出てきた――に、

 警備員を呼んできてもらい、その後現れた警備員に二人を引き渡したらしい。


 で、そこまででかなり時間が経ったにもかかわらず、

 俺たちがまだラスボス部屋から出てこないので、

 ハヤトの心配っぷりと云ったら大変だったとアンヌさん。


「心配かけたみたいだな。すまない」

「あやまるな」

「そうだな……ありがとう」


 というような感じで今までの話をお互いに伝え合った。

 次の話題は、今日これからの予定。


 ガウスの件が解決したので、

 急いで町を出る理由のひとつはなくなったのだけれど、

 ソニアさんには顔を見せる約束をしたので、

 明日には出られるように準備しようと決まった。


 ソニアさんに挨拶した後の予定は、ハヤトとアンヌさんに考えがあるようだ。

 以前に話し合った内容から、ダンジョンがある他の町にでも行くのだろう。

 どんなところかワクワクするが、そこはお任せだ。


 というわけで今日これからは――


 まずは組合に行って、あのラスボスの件の報告と、

 ダンジョン制覇に伴うパーティのランクアップ申請。


 その後ハヤトは町長とこれからの打ち合わせ。

 リリスは教会に行って挨拶。アンヌさんもそこに同行。


 ということなので。


「ナナミとクレアを連れて町を見学したいんだけど、いいかな?」


 ナナミとクレアにとってこの町――というか人間の町自体が――初めてのはず。

 明日にはこの町を離れるのだから、

 ダンジョン探索の分け前としてお小遣いをもらって、

 観光でもしようかと考えたのだった。


 俺も落ち着いて町を見学したかったし、

 ソニアさんへのお土産も用意できればなんて考えもあった。

 ナナミも瞳を輝かせている。この提案に賛成のようだ。


「町長に会いに一緒に行くよりは、そっちの方が良いか?」


 ハヤトがクレアに確認すると、使い魔の幼女は何度も首を縦に振る。

 そうして、俺とナナミの壊れかけた防具をどうにかする費用も上乗せされて、

 かなりの額の金貨と銀貨をハヤトから受け取ったのだった。



 ◇ ◆ ◇



 昼食を終えてすぐ――全員で探索組合。


 玄関を開けて中に入ると、いきなり土下座をされた。

 その人物は……、

 自滅憑依体に憑かれた貴族マルトフ、その従者をしていた痩せた男だった。


「ハヤト様、リリス様……無礼な態度の数々、まことに申し訳ありませんでした。

 そしてマルトフ様を自滅憑依体からお救いしていただきまして、

 何とお礼を申し上げればよいか……。

 わたくしの無礼な態度をお許しいただけるとは思っておりませんが、

 主の代わりに感謝のお言葉をお伝えさせていただくことを御容赦願います。

 ハヤト様……本当にありがとうございました。

 リリス様……本当に本当にありがとうございました」


 一気にまくしたてられ困惑してしまう。

 ハヤトとリリスが顔を見合わせて思案気な顔をしている。

 アンヌさんはいつもの笑顔だ。

 ハヤトとリリスがなにやら眼で合図を交わして、

 その結果……どうやらリリスがこの場を任されたらしい。


「お顔をお上げになってください。

 あの時はいろいろと誤解があったのですから仕方がありません。

 そして自滅憑依体に憑かれたのはマルトフ様には何の責任もない事です。

 ワタシたちは自滅憑依体の撲滅を目標に活動しているパーティですから、

 マルトフ様をお救いしたのもその活動の一環なのです。

 感謝のお言葉は有り難くお受けいたしますが、あまりお気になさらずに」


 さすがリリス。相手の謝罪を不要と伝え、感謝は素直に受け入れて、

 さらに先日決めたパーティの方針を野次馬の前でサラッと説明している。

 見事過ぎる。


 その後、多少のやり取りを重ねて、

 後に尾を引かないようにうまく事態を収拾できたようだ。

 マルトフの従者は何度も頭を下げながら組合を後にした。


 不愉快だった相手が改心してくれたので俺的にはすっきりしている。

 それに、主の為にあれだけ本気で頭を下げられるのだから、

 主への思いが強すぎて偏っただけで、根は悪い人間ではなかったのだろうし。


 その件も無事解決し、

 ハヤトは俺たちのパーティ『勇敢な瞳』のランクアップ申請をする。

 これで晴れて探索者Cランクになったのだ。

 まぁ、俺の実力は【地中適応】抜きだとDランク程度なのだろうけど。

 窓口では受付の女性とハヤトの話が続いていた。


「ラスボスに巨大モグラですか」


「そうだ……オレは事情があって参戦できなかったが、

 リリス様がその身を持って対戦したので間違いのない情報だ」


 信頼のおける人物として全く問題がないリリスの実体験なのだから、

 どれだけ突拍子のない話でも信じてもらえるだろう。


「よろしかったら別室でお話を伺わせていただきたいのですが……」


 そう頼まれたので、仲間内で顔を見合わせて短い思案をする。

 結果、ラスボスと戦っていないハヤトは、

 次の予定が時間がかかりそうな町長との話し合いなので、

 先に行ってもらうことにした。


 ラスボス戦の説明には、受付の女性と一緒に組合の立場の上の人が同席。

 ソニアさんやミリアさん、そして俺のスキルについては秘密にして、

 それ以外をそのまま話す。


 組合の人も話したくない事情があって当然と、

 こちらが言いたくない部分については追及してこなかった。


 多少の時間は取られたが、これからの予定に影響ない程度で終わった。

 隣りでナナミとクレアがジト目で組合の人を睨み付けて、

 無言の圧力を加えていたのも理由なのだけれど。 



 ◇ ◆ ◇



 クレアが俺の頭を軽くポンポンと叩く。

 たったそれだけの動作で意思が伝わる。


「あぁ、降ろしてほしいのか。わかったよ」


 腰を落としてクレアを肩から降ろすと、

 トコトコとナナミの後を追って店に入っていった。


 ここはドーナツとかクレープとかを店先で売っている軽食屋。

 クレアはナナミと並んで何を食べるか目を輝かせて迷っている最中。

 もちろんナナミも瞳の中に星を宿してキラキラさせている。


 掲げられているメニューの文字は俺には読めないけど、

 実物が並べられているので何が売られているのかはわかる。


「ユウキ! 何個までいいデスか!?

 あっ……クレアがそう聞いてほしいって言ってるデス」


 ナナミとクレアもすっかり仲が良くなっている。

 ダンジョン攻略の最中も息があっていたし。


「そうだなぁ、まぁ、ひとり二つくらいかな。まだ店はあるんだから」

「はいデス!」


 俺の返事を聞いて、クレアも真剣な眼差しでコクコクと頷いている。

 小さな身体で二つも食べて大丈夫なのかとちょっと心配だ。


 俺たちは探索組合を後にして、最初に武器防具屋に行き、

 明日朝までに出来る範囲で良いからと武器と防具の手入れを依頼。

 防具の方は状態が酷くてダメになった物もあり、

 俺とナナミは、ハヤトからたっぷり貰ったお小遣いで新しいのを購入した。


 ちなみに俺の槍はラスボス戦で全く出番が無かったので綺麗なまま。

 そのまま何もせず持ち帰り。


 で、一旦宿屋に帰り、身だしなみを整えて町の繁華街で観光中なのだった。


 リリスとアンヌさんとは宿屋で別れたので、

 少女と幼女の付き添い役として、今は三人で行動中だ。


 俺は異世界の街並みを見学しているだけで満足だった。

 古めかしい洋風の外観。建物の素材はレンガか木。

 高い建物でも五階建てまで。

 俺たちが泊まっている宿屋はこの町で大きい建物になるようだ。


 メイン通りの道幅は十人は横に並んで歩けるほどに広い。

 舗装ではなく締め固められた土。

 もしかしたら専用の土を使っているのかもしれない。

 この世界には自動車の類はなく、時折馬車が通るくらいなのでこれで十分。


 そんな感じで町の風景を見ながら、

 同時にソニアさんへのお土産をどうしようかと考えていた。

 なんだか凄い魔族の人だから、何が良いか考え出すと難しいのだけど、

 娘のクレアが喜ぶようなお菓子なら、

 行ってすぐに開けてもらえれば無難かな――なんて。


 で、ナナミとクレアの二人ともそろそろ食べたいものが決まったかと、

 店の中の様子を見るために振り返ろうとした時。


 ドンッ!


 肩に誰かがぶつかる。


「なにしやがるあっおまえはハヤトのなかまじゃないか」


 大男が棒読みで文句を言う。

 ぶつかってきたのもわざとだったとしか思えない。

 何故なら、この男……知っている顔だった。


 こいつは最初の日に因縁をつけてきた男。

 なんでこんなところで――と考える。


 ――まぁ、何となく想像はつくのだけれど。


 俺はため息をひとつついた。



 第35話、お読みいただき有り難うございます。

 次回――戦い終わって(3)

 再び現れた大男。一体何が起こるのか? ……です。


 次回更新は5月24日を予定しています。

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◇  ◆  ◇

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