雛型編 6
「やあ、お待たせしました」
待ってから5分経たず、男性がやってくる。
スーツ姿でやってきた30台前半の男性は、その胸に安全ピンで付けている名札から、ここの所長だということが分かった。
ただ、ネクタイはしていない。
そういう社風なのだろうか。
「今回は私のような人の保護をしていただき、ありがとうございます」
「いえ、そういう社訓なので。先代も、迫害を受けていた人々をこの研究所にかくまって、国といろいろひと悶着起こしましたのでね」
笑いながら言っているが、私にとってはそれが一筋の光明となったところがある。
だからここに来たということもあるが、それよりも彼の目的なのは。
「それで、一つ、見せていただいても」
「ええ、お願いします」
ここに来たのはもう一つ。
俺自身の身柄を保護してほしいというもの以外に、これが本物かどうかを確認してもらうという目的があった。
今までの経験から本物だということは疑いがなかったが、増えたページが本当に同じ素材なのかどうかということが気になっていた。
それと、この本のある噂、世界に文明が産まれるより以前にできた本だという話が本当なのかということが気になっていたからだ。
いわゆるジップロックにいれて持ってきていた本を所長に渡すと、所長は白い手袋をしてそれを恭しく受け取り、近くにいた秘書のような女性に手渡した。
「少し結果が出るまで時間がかかるでしょうから、それまでごゆっくりおくつろぎください」
流ちょうなドイツ語で俺に言ってくれた。




