36話:夜な夜な作る、ルミナちゃんの新しい服
夜。
魔王城の廊下からは、すっかり人の気配がなくなっていた。
ルミナちゃんもロザリアさんも眠りにつき、黒エルフたちもそれぞれの部屋で静かに休んでいる。
しかし――。
私の部屋だけは、まだ明かりがついていた。
「よし……ここをもう少し細かく縫って……」
机の上には、黒い布地や白いレース、銀色の飾り、リボン、糸、針、型紙が広がっている。
私は小さなランプの明かりを頼りに、せっせと作業を続けていた。
(ルミナちゃんに似合う服を作りたい……!)
今回作っているのは、黒を基調としたゴシック風の可愛い衣装。
今回作っているのは、黒を基調としたゴシック風の可愛い衣装。
黒いワンピースに、白いレースの襟。
袖には小さなリボンをつけ、腰の部分には銀色の飾りをあしらう。
スカートはふわっと広がる形にして、裾には細かなレースを重ねる。
(可愛いけど、いつもと少し違う雰囲気。ちょっと大人っぽい感じ……!)
私は完成したデザインを想像しながら、さらに針を動かした。
「ここに黒いリボンをつけて……あ、でも銀色の飾りも合いそう」
バッグから小さな装飾品を取り出し、服の上に置いてみる。
「うん。これだ!」
作業を続けるうちに、時計の針はどんどん進んでいく。
「……もうこんな時間!?」
それでも私は手を止めなかった。
(あと少し……あと少しで完成する……!)
ルミナちゃんがこの服を着た姿を想像すると、自然と頬が緩んでしまう。
「絶対似合う……。黒い服も絶対可愛い……!」
最後にリボンを縫い付け、糸を切る。
そして、完成した服を両手で持ち上げた。
黒い布地に白いレース。
銀色の小さな飾り。
ふわりと広がるスカート。
可愛らしさの中に、少し凛とした雰囲気もある衣装だった。
「できた……!」
私は服を胸元に抱えた。
(明日の朝、ルミナちゃんに見せよう!)
そのとき――。
「……美桜?」
突然、部屋の扉の向こうから声がした。
「えっ!?」
慌てて振り返ると、そこには眠そうな顔をしたルミナが立っていた。
「まだ起きておったのか?」
「ル、ルミナちゃん!? どうしてここに!?」
「水を飲みに来たら、明かりが見えたのじゃ」
ルミナちゃんは部屋の中へ入り、机の上に広がった布や糸を見つめる。
「何をしておるのじゃ?」
「えっと……」
私は背中に服を隠そうとした。
しかし、ルミナちゃんはすぐに気づく。
「……何か隠したな?」
「いえ、何も!」
「怪しいのじゃ」
ルミナちゃんが近づいてくる。
私は観念して、完成した服を見せた。
「実は……ルミナちゃんの新しい服を作っていたんです」
「妾の?」
「はい。黒を基調にした、ゴシック風の可愛い服です!」
ルミナちゃんは服をじっと見つめた。
「……黒いのじゃ」
「似合うと思いませんか?」
「まだ着ておらぬから分からぬのじゃ…」
「でも、絶対似合います!」
「なぜそこまで言い切れるのじゃ……」
「私の推しを見る目は確かです!」
「また推しと言ったな!?」
ルミナちゃんは少し頬を赤くしながら、服のレース部分をそっと指で触れた。
「……細かい作りじゃ」
「夜な夜な頑張って作りました!」
「夜な夜な?」
「はい!」
「寝ずに作っておったのじゃな?」
「少しだけ眠りました!」
ルミナちゃんは眉を寄せた。
「無理をするでない。服のために体を壊したら意味がないじゃ…」
「ルミナちゃん……」
「……別に、妾のために無理をしてほしいと言っておるわけではないのじゃ」
そう言いながらも、ルミナちゃんは服から目を離さなかった。
「でも……その服、明日着てみてもよいのじゃ!」
「本当ですか!?」
「一度だけじゃ!」
「やったああああ!」
「大声を出すでない! 皆が起きるじゃろう!」
私は慌てて口を押さえた。
(明日、ルミナちゃんがこの服を着る……!)
夜遅くまで頑張った疲れなど、一瞬で吹き飛んでしまった。
ルミナちゃんは服を見つめながら、小さな声で呟く。
「……まあ、悪くないデザインじゃ」
「気に入ってくれたんですね!」
「まだ着ておらぬと言っておるのじゃ!」
「でも嬉しそうですよ?」
「う、うるさいのじゃ!」
ルミナは顔を赤くしながら、完成した服を大切そうに受け取った。
「では、明日まで預かっておるのじゃ」
「はい!」
「エリコも、もう寝るのじゃ」
「分かりました!」
ルミナちゃんが部屋を出ていく。
扉が閉まったあと、私はベッドに倒れ込んだ。
(明日が楽しみすぎる……!)
こうして私は、夜な夜な作ったルミナちゃんの新しい服を、翌朝お披露目することになったのだった。




