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老エルフ吟遊詩人の語った物語  作者: まろんねこ


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7.セシリア・アルデリア罠にかかる

見習いながら神官として全力をつくすセシリア。

どうやら無事老人の病を治癒できたようですが、さすがに魔力を使い過ぎ昏倒してしまいました。

慌てて支えるリオ。

老人が臥せっていたベッドに今度は自分が寝かされたセシリア。

その傍らではリオ達の不審な会話が……。

猫が爪を立てるようにしがみつき纏わりついていた黒い靄。

断末魔のように捩れ霧散し、代わりに柔らかな光が老人を覆う。

彼を苦しめていた病の邪気が“治癒"で昇華させられた瞬間だった。


粗く浅かった呼吸が穏やかな息継ぎに変わる。

土気色の顔に赤みが差し生気が戻ったようだ。


対するセシリアはがくりと膝を床に付く。

はぁはぁと肩でする息は絶え絶えになっている。

じっとりと全身からあふれ出た脂汗。

宝杖が手から離れガタンと床に転がった。


「神官様!!」

崩れ落ちそうになる身体を駆け寄ったリオが支える。


「ありがとうございます!父が……、父が治りました!!」


耳元で叫ぶ声にセシリアは「よかったぁ~」と弱弱しく微笑んだところで意識が途絶えた……。


◇      ◇       ◇


先ほどまで老人が臥せっていた寝台にセシリアは横たわっていた。


一方リオをはじめとする三人は、枕頭で涙しながら父の恩人である神官の少女を見つめていた。


「大丈夫だろうかねぇ?」

女がリオに声をかける。


「わからねぇが、息遣いは乱れてねぇ。お疲れなんだと思う」

「ねぇ、あんた本当にしなきゃいけないことなのかい?こんな慈悲深い神官様に……」

女が少し苛ついた口調でリオに詰め寄る。


「しょうがねぇだろう。ウチに神官様に払う"おあし"なんてねぇのはお前だって承知だろう」

「だからって、こんなに頑張っておとうを助けて下すった方に……」

女が耐えきれず床に膝を付き顔を覆って泣き出した。


「ばかっ!気づかれたらどうするんだ!さっさとあの薬湯を準備しな!」

小声で叱りつけ湯を沸かすよう女を奥へと追い払う。


「リオやいったい何の事だ?」

訝しげに問いかける父親に「しっ!」と人差し指を口元に立てるリオ。


「一度決めたことだ……おやじは心配しなくていい。なんにも心配しなくていいんだ」

自らに言い聞かせるよう呟いた。


「うぅ~~ん」


寝台から聞こえた声にぎょっとして振り返るリオと老人。

そこには目覚めようとする神官、セシリアの無邪気な寝顔があった。

まるでいい夢でも見ているかのように穏やかな笑顔をみせて眠っていた彼女。

誰かに現実に引き戻されかのようにパチリと目を開いた。


(あれっ? ここはどこ?)


自問自答して、頭がクリアになってくる。

「そうだ!病は!!」

慌てて跳ね起きるセシリアをリオが制する。


「神官様。大丈夫でございます。神官様のお力で病の邪気は父から去りました」

「ありがとうございます。もう黄泉の扉が見えるところを助けていただきました」

父親が滂沱の涙を両目から溢れさせセシリアの袖に縋った。


「あぁ……」


改めて周りを見渡す。

ここに入った時の熱気もなく、邪気の気配も消え失せている事に安心しほっと息を吐いた。


「お役に…、立てて良かったです」

言いながらゆっくり起き上がった。


身体は酷く疲れ、纏わりつく汗が不快だ。

湯あみでもしたいところねと思い見回すも、そんな設備などあるわけもない狭く古い家だ。


「本当にありがとうございます。神官様。なにかお礼ができれば良いのですが……」


言いかけて口ごもるリオを見てセシリアは合点がいった。

要はお布施をする金品がないという事だろう。

この佇まいではそうよねぇ。


「あのう……、お気遣いなく」

「でも」

「いえいえなにもわたくしどもは、必ず対価を要求するわけではございません」

俯いてしまったふたりに、できるだけやさしい声音でセシリアは続けた。


「貧しければ、教皇様の教えに感謝し、日々祈りを捧げていただければ良いのです」

「でも、それだけじゃぁ……」

言いかけるリオを制して続ける。


「見れば樵を生業にされているようです。それならば木材をいくつか教会にお届けいただければ」

リオの手を取り、

「ねっ、それで良いのです」

涙ながらにこくこくと頷くふたりに、セシリアはにっこりと満面の笑みを見せた。


「神官様」


反対側から声を掛けられ振り向くと、女が盆に湯気の立つ椀を持ち立っていた。

「ほんとうに何もございませんが……、も……森でとれる木の実で作りました、や……薬湯です」


震える手で椀を差し出す女。

「ありがとうございます」

椀を受け取ったセシリアはすぅ~っと香りを嗅いだ。


「あぁ、いい香りだわ」

香りが喉の渇きを思い出させる。


「皆さん、本当にお優しいのですね。遠慮なくいただきますね」

ふぅふぅと冷ましながら薬湯を喉から胃の腑へと流し込む。


ほんわりとした暖かさがお腹の中に滲みていく。

気づけばひと椀をいつのまにか飲み干していた。


人心地ついて思い出す。

(いけない!今日のうちにシドの村に着かなくちゃいけなかったんだ)

慌てて立ち上がろうとするセシリアだったが、足が言う事を聞かない。

そして手も。


「こ……、こぇわ」

いつのまにか舌も回らなくなっている。

気が付けば三人が顔を背けすすり泣いている。


(いったい何が?)


動かぬ身体を??咤激励するセシリアの耳に「バタンッ!!」と扉が吹き飛ぶように開け放たれた。

いくつもの足音がなだれ込む。


必死に痺れが回って固まりつつある首を動かし音のする方を見やれば、数人の男女が押し入って来るのが見えた。


ガチャガチャと金属の触れ合う不快な音と乱暴に床を踏みしめるいくつもの靴音。

そして最後に入ってきたのは、城内で串焼きを売る屋台の陰に立っていた男だった。


◇      ◇      ◇


「あぁ~、やっぱり」

藪に身を潜め樵小屋を見張っていたエルナは呟く。

言わんこっちゃない。

案の定だ。


まったく無防備な神官様だぜ。

このまんまじゃ奴隷として売り飛ばされちまうな。


どうする私。

人数は表にいたのが6人。

中にも仲間がいればもっと多い。


やれるのか私。

なんの義理もないんだが。

でも、放ってはおけんなぁ。


こっちも命がけかぁ……。

なぁ、どうした義父さんだったら?

やっぱり助けるよなぁ。


よっしゃ、当たって砕けろだ。

エルナはショートソードに手をかけ、

丸い盾を構えた。

お目にとめていただきありがとうございます。

良かった、悪かった、何らかの反応をいただければ幸いです。

AIではないので遅筆です。

とりあえず書き進めた分をひとつずつ投稿していきます。

誤字脱字のご報告をいただきありがとうございました。

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