9.エルナ・グラウシュミット奮戦す
ついにエルナ・グラウシュミットが奴隷商人に挑みます。
果たして彼女はセシリア・アルデリアを救出することができるのでしょうか?
藪が弾けた。
次の瞬間、エルナはもう彼らの背後にいた。
低く滑り込む。
踏み込みと同時に、ショートソードの柄で後頭部に一撃!
鈍い音。
「ぐえっ!」
一番後ろの男が、その場に崩れ落ちた。
一人、落とした。
「なんだ!?」
「敵か!」
遅れて騒ぎが広がる。
先頭の男と、その隣の女が、即座にセシリアを引き寄せた。
庇うのではない。敵に奪わせないための動きだ。
残りの三人が、無言で広がる。
逃げ道を潰す位置取り。
慣れている。
「誰だてめえは!」
「あんたらに名乗るほどの名前じゃない」
エルナは丸い盾を構える。
その陰に、ショートソードを隠す。
刃は見せない。
間合いに入るまで??太刀筋は読ませない。
左右の男たちがショートソード中段に構える。
そして正面の縮れ毛。
こいつの武器は……?
左右の男が同時に踏み込む。
来る。
視線を割いた、その瞬間。
ヒュン!
ヒュン!
前から風切り音。
左頬に痛み!
右の髪が一掴みほど空に舞う。
ナイフ?
(投げた後は隙が)
踏み出した瞬間。
違う。
背中に衝撃!
遅れて、焼けるような痛みが走る。
「かはっ!」
ナイフ……、
じゃない!
男の手元から伸びる、細い鎖。
ぐい!
引かれる。
背中に激痛!!
息が止まる。
左右からソードが迫る。
盾で左を受け、右を弾く。
身体を捻り、脛を切る。
「いてぇ!!」
男がよろめき、倒れる。
……大げさな奴。
また鎖が引かれる。
激痛!!
膝が落ちかける。
踏みとどまる。
歯を食いしばり、左の刃を盾で弾き飛ばした。
体勢が崩れる。
今だ!。
踏み込む。
一歩。
距離を詰める。
喉元へ振り抜く。
「ぐっ……!」
刃が浅く入る。
だが十分だ。
男が後ろに崩れる。
残りは……、三人。
息が荒い。
背中の鎖が、じわりと食い込む。
血がかなり流れているのがわかる。
(あと、少し)
視線を上げる。
リーダーの男。
そして女。
女が、笑った。
ぞくり、とした。
本能が告げる。
危険だ!
「……見て」
低い声。
耳に、引っかかる。
意識が、わずかに逸れる。
しまった、と思った時には、
目が、合っていた。
どくりと得体のしれない何かがエルナの中に流れ込んだ。
体温がグンと上がり鼓動が激しくなる。
動きが止まる。
足が、動かない。
呼吸はできる。
突然目の前の女が愛おしく見える。
忘れていた何かを思い出すような気持ち。
あぁ、この人が……、ス・キ。
心臓がどくどくと高鳴り、頬に血潮が登る。
(好き)
ため息がほぉ~と漏れる。
(好き)
あなたが……。
ス・キなの。
逆らっちゃいけないの。
「へえ……、ドワーフに魔法耐性はないから予想より強く効くのね」
女が一歩、近づく。
距離が縮まる。
心臓の音がさらに高まる。
頬が熱く燃えるようだ。
ス・キなの。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
あなたの仲間を傷つけてしまって、ごめんなさい。
縮れ毛の指先が動き、背中の鎖が引かれる。
ぐい、と。
「かはっ……!」
膝が落ちる。
身体を支えきれない。
「逆らった罰だ! 一度姐さんの"魅了"にかかっちまえば……。無理だぜ」
リーダーがセシリアの頬を軽く叩く。
「こいつおめえの仲間か?神官様よぉ」
セシリアはふるふると首を振った。
「まさかたった一人で六人相手にこの神官を略奪ってか?ありえねぇ。よっぽどのアホか」
リーダーがエルナに近づき舌打ちする。
「3人もやりやがって、だが終わりだ。……うん?」
舐めるような視線でエルナを上から下まで見る。
値踏みをする奴隷商人の目だ。
女を振り返って言う。
「これは驚いた。こいつドワーフじゃねぇ。ドワーフと人間のハーフだ。しかも女だぜ」
「そうなの?どれどれちゃんとみせてね」
鎖に引き寄せられたまま、動けずにいるエルナを立たせて身体を隅々まで調べ始める女。
触られてる。
好きな人に……。
お腹の奥がじわりと熱くなる。
花唇が花蜜で潤うのがわかる。
嬉しい、嬉しい、嬉しい。
もっと触ってください。
「ちょっと、この鎖邪魔だわ。抜いちゃってよ」
後ろを振り返り縮れ毛に命じる。
「へいへい、お待ちあれ」
縮れ毛の若者はエルナの背後に回る。
グイ!
鎖に付いた切っ先がエルナの背から抜かれる。
「あぁっ!」
痛みは多少和らいだが出血により鉄の匂いが辺りに漂う。
女の指が、軽く背中の傷をなぞる。
「はぁ~ん」
傷の痛みに顔をしかめるが、触れられた嬉しさが別の声を出させた。
「へえ、ふーん……。そういう顔するの?なかなか可愛いじゃない。痛いのすきなのかな?」
したり顔で微笑む女はエルナの顔を覗き込んだ。
「は・い! あなたにされるなら……、痛くても……」
ふんふんと頷く女が呟く。
「もう一段階強くかけてあげる。アタシを見て。そうそう。"魅了"」
「あぁっ」
頭から首へ、身体へ、足へ、手に、そして指先も。
喜びが一ランク上がり、感覚が研ぎ澄まされる。
自分の意思は、身体はこの人のためにだけある。
エルナの心に女への強い恋慕の念が上書き刻まれた。
「いい色になったわピンクの瞳素敵よ。もうあなたはアタシのモノ」
耳元で囁かれ身体が嬉しさにブルブルっと震え、花蜜がぶわり吹き出て股間を濡らした。
「さてと、アタシの名前はアンジェラ。あなたの名前は?」
「エルナ……、エルナ・グラウシュミットです。アンジェラ様」
名前で呼べる嬉しさで震えるエルナ。
「まずは武装解除してもらおうかしら。エルナ武器は捨てて。それから革鎧も服も下着も全部脱いで頂戴」
「はい」
命令された嬉しさに燃え上がる心。
ザシュ。
ショートソードが地べたに落ちた。
続いて盾。
手が革鎧にかかる。
外す。
(すぐに脱ぎます。もうすぐです)
止まらない。
するすると衣服、果ては下着まで自らの手で脱ぎ捨てるエルナ。
(男の人たちは見ないでぇ~。見るなぁ~!!見ないでぇ~!私の身体を見ていいのはアンジェラ様だけなの)
恥じらいに心が叫び声をあげるが、アンジェラの微笑を見ると隠しかけた手を降ろした。
焦げ茶色の赤のメッシュが入ったやや縮れたショートカット。
ドワーフにしては華奢な細い身体。
人間ならば12~3歳ぐらいの子供。
胸のふくらみはほとんどなく。
ちっちゃな乳首がぴょこんと勃っている。
無毛の下腹部は幼子と言っても良い縦筋。
花蜜が一筋糸を引きながら地べたに落ちる。
物心ついてからは義父にさえ見せた事のない肌を晒す。
自分が負わされた手傷をさする男たちの輪の中で立つ。
目はアンジェラだけを見つめて立っている。
本来ならやや黒みがかっていたはずの瞳は、今はピンク色。
そう今のエルナは恋する乙女。
「ばぁうへんしゃはん……」
冒険者さん……と声をかけようとたセシリアだったが、噛まされた口枷でまともな言葉にはならない。
不自由なからだを揺すり何度も口元から涎を垂らしながら声をかけた。
だがエルナは無反応。
(あんなかっこう女だったら恥ずかしくてたまらないはずなのに……)
肌を人前で晒している自分を顧みて、羞恥に身悶えながら声をかけ続けるセシリア。
しかし、
エルナの頬は確かに赤い。
でもそれは羞恥の赤らみではなく恋慕の赤面だ。
ピンク色に変わった瞳は裸の自分を一瞥もしない。
アンジェラと名乗った女を一心に見つめている。
「へえ、幼女趣味の買い手が喜びそうな、いい身体してるじゃないの」
(違うんです!アンジェラ様。私はもうとっくに成人の女なんです!)
そう叫びたいところだったが、口にだす許可はでていない。
「ちなみにいくつなのかなエルナは?」
「30歳です」
答えたエルナに周りがどっと笑う。
「これが、どう見たってガキじゃねえか」
からかう男の声に悔しさで煮えくり返るエルナだったが、アンジェラの仲間であれば逆らうわけにはいかない。
女は値踏みするような目でエルナの身体を見分していたが、……。
「セシリアちゃん。ちょっとこっちへいらっしゃい」
女が拘束されたセシリアに声をかけた。
(従わないとひどい目にあわされちゃうかも)
そう思い足枷の鎖を鳴らしながら狭められた足元を気遣いながら女の前へと進むセシリア。
「い~い。ちょっとだけ口枷外してあげるから、エルナの背中とこの子が傷つけた男たちを治してやって」
言いながら首の後ろの施錠をカチリと外した。
「あ……、ありがとう……ございます」
口端に垂れる涎も拭き取りたかったが、手枷は外してもらえそうもなかった。
「さっ、早くしてね」
女に促されたセシリアはエルナの背中側に回ると、まず出血が止まらないふたつの傷に"治癒"を施し、次いで男たちの傷を治した。
◇ ◇ ◇
エルナの背中の傷が塞がれ、出血が止まる。
「あの……」
セシリアはアンジェラを見上げた言いかけたが、その口は元通り口枷で喋れなくされてしまった。
「他には何も持っていないの?エルナ」
「隠れていた藪に道具が入ったリュックが」
「道具?」
「あの鍛冶の玄翁とか……、鍛冶屋の娘だから」
アンジェラは頷き、後で探してくるよう縮れ毛に命じた。
「このまま裸で歩かせてもいいけど、念には念をいれましょうね。ロミオ!先にやっちゃって」
縮れ毛の若者にはそれで通じたらしく、背嚢から枷を取り出しエルナにセシリアと同じ拘束をした。
「さぁ、お前たちもとっとと支度しやがれ!日が暮れちまう」
パンパンと柏手したのはリーダー。
エルナに負わされた傷が癒えた男たちはのろのろと起き上がり、泥を落とし、埃を払った。
「神官様のリュックにエルナちゃんの服と武器もしまってね」
アンジェラの声にセシリアのリュックを背負った男が頷きエルナの装備がしまわれる。
「さて行きましょうか。お二人さん。馬車までしばらく歩くわよ」
アンジェラは乗馬鞭を取り出すとピシリと二人の尻を打った。
「はぁ~ん」
(痛いけど……、きもちいい)
エルナは小さな尻をぷりぷりと振り、半場陶酔した顔で歩みを進め、
「きゃぁ!」
(痛~い!じんじんするよう~)
セシリアはお尻の穴をきゅっと締め足を前に運ぶ。
リーダーに続きセシリアとエルナが、そして鞭で追い立てるアンジェラが続き藪の中に消える。
その後を警戒しながら男たちが消え。
「あったあった。見つけたぜ」
戦闘のあった周りを探り、藪の中からエルナのリュックを拾った縮れ毛ロミオが消えた。
森に普段の静けさが戻った。
ゆるゆると長編を書き始めました。
お目にとめていただきありがとうございます。
良かった、悪かった、何らかの反応をいただければ幸いです。
AIではないので遅筆です。
とりあえず書き進めた分をひとつずつ投稿していきます。




