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老エルフ吟遊詩人の語った物語  作者: まろんねこ


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1/3

プロローグ

死期の近づいた老エルフ吟遊詩人が語った旅とその仲間たちの話。

ファンタジーですが異世界転生者はいません。

登場人物はその時代に生きとし生けるもの。

人の生き死にの描写があります。

殴る、手足が飛ぶ、奴隷を鞭打つなどの残酷な描写があります。

おふとん中でイチャイチャするような描写も若干あります。

現代では普通に使う表現も、中世をイメージした世界観なのでその当時こんな表現だったか?と思って表現しています。

AIは使わずに書いていますのでかなり遅筆です。

当面週一位の頻度で投稿いたします。

のんびと書き進めていきたいと思いますのでご了承ください。

深淵なる森の北端。

山影に寄り添うように、小さな療養所がある。


 朝霧はゆるやかに流れ、屋根に絡む蔦を濡らし、白い花弁に雫を残す。

 森はすぐそこにある。濃く、深く、永遠の緑をたたえて。


 その森へ――還らなかった者がいる。


 窓辺の椅子に、ひとりのエルフが座っていた。


 長く生きた者だけが持つ、静かな気配。

 かつて銀糸のように艶やかだった髪は、いまや雪の色をしている。

 指先は細く、わずかに震え、膝の上で重ねられている。


 胸の上下は浅く、呼吸はかすれている。

 森の加護を失った身体は、時間に抗うことをやめていた。


 それでも、その瞳だけは、まだ森の色を失っていなかった。


 窓の外に広がるのは、還るはずだった森。

 生まれ、育ち、そしていずれ溶けるべき場所。


 森に還れば、永い時を再び生きられた。

 仲間も、故郷も、掟も、彼女を拒みはしなかっただろう。


 それでも――彼女は選ばなかった。


 控えめなノックが、静寂をほどく。


「……どうぞ」


 扉の隙間から、若いエルフが顔をのぞかせた。

 旅立ったばかりの匂いをまとい、瞳にはまだ森の深緑が宿っている。


「お加減は、いかがですか」


「森は、もう遠い。……精霊の声さえ、届かぬ」


 老いたエルフは微笑む。

 その声は、乾いた葉の擦れる音のようにかすれている。


 若者はためらい、やがて問う。


「なぜ、還られなかったのですか」


 窓の外を、長い沈黙が満たす。


 鳥が一羽、枝を渡る。

 風が梢を揺らす。


 やがて、老エルフはゆっくりと口を開いた。


「森の中では、すべてがやがて過去になる。それが……怖かった」


 森に還れば、数千年の時が再び与えられた。

 還らなければ、十年ももたない。


 永遠は、あまりにも長い。

 その中では、短い出来事はやがて霞む。


 人の一生は、エルフにとっては瞬きにも満たない。


 あの子たちとの旅も、きっと。


 小さな炎のように不器用だったドワーフ。

 祈りを抱えて震えていた神官。

 月影の下で、笑って跳ねた兎の娘。


 楽しくて。

 愚かで。

 騒がしくて。

 そして――愛おしかった。


「森の中で何千年と生き続けるうちに、あの時間が、ただの“昔話”になるかと思うと胸が凍るような気がした」


 それが、怖かったのだと。


 若いエルフは息を呑む。


「私たちにとっては、ほんのわずかな時間。

 けれど、あの子たちにとっては、命そのものだった」


 永遠よりも、あの一瞬を選んだ。


 それだけのことだ。


 光が、白い髪をやわらかく照らす。

 影は細く、床に伸びる。


「……聞きたいかね」


 若いエルフは、強く頷いた。


「ぜひ」


 老エルフは目を閉じる。


 遠い記憶が、ゆっくりと浮かび上がる。


 重たい木の扉が、ぎい、と軋んだ音。

 酒と鉄と汗の匂い。

 小さな背中。


「さて、ではどこから話そうかね」


 深淵なる森に、まだ雪が残っていた頃の話だ。

ゆるゆると書き始めました。

お目にとめていただきありがとうございます。

良かった、悪かった、何らかの反応をいただければ幸いです。

AIではないので遅筆です。

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