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終 希望の明日

 ――かくして〈英雄〉の活躍によって【第八次赫醒戦】は今度こそ終結。

 両陛下が亡くなったことで〈斎火の天蓋〉の意地は難しくなったが、セヴァドスとキッカ、並びに生き残っていたセヴァドスの姉たちが力を合わせたことで地域ごとでの展開が可能に。

 〈アルカ〉の都市機能はギリギリのとこで残ることが出来たのだった。

 それでも、甚大な被害に変わりはない。農作地帯の三割、第二環の住宅街が七割消滅。

 ハスタとミィシャら昏睡状態の人は多数存在し、死者は四割。その中にエトナとアッシュの親しい人が含まれていないなんて都合の良い事はなかった。


「オルガさん、〈魔力〉だけでここら一帯を守ってくれたそうね」

「……みたいだね。ルシアの母親だし、実力者だとは思ってたけどまさか〈叡火級《ルーメン》〉とは思わなかったよ。教えてくれたら良かったのに」


 崩れた孤児院の前で、二人はそれぞれ手を組んでオルガの死を悼む。この一帯だけ、破壊の跡が小さいことを考えるにオルガの実力の高さが窺えるだろう。

 一人で戦うことの厳しさや辛さは、二人も今回の戦いで身に染みて理解している。ましてや〈合力〉が使えないオルガは、〈天蓋〉が再構築されるまでその身を【邪気】に侵されていたはずだ。

 その状態で、オルガは一人で214人を守り抜いたのだ。

 オルガを失ったことは悲しいが、今はそれ以上に誇りと尊敬を抱いていた。


「最後までお婆ちゃんはお婆ちゃんだったってことだよね。人の為に最期まで力を尽くして……」

「なら、私た(・)ち(・)も『ヴェンタス』の人間としてそれに倣わないといけないわね」

「うん。ありがとうお婆ちゃん。――オルガのおかげで、僕は人間としてエトナに出逢えたよ。だからこれからは、人としての僕を上でゆっくり見守っててくれたら嬉しいな。いつかお婆ちゃんの歳を超えてからそっちに行くから」

「また一緒にご飯を食べましょう」


 今、アッシュは【邪気】の増大を防ぐためにルシアから貰ったチョーカーを身につけ、エトナも同様に体内に入った【邪気】を浄火するために同じチョーカーを付けている。

 そしてそれは同時に、監視装置でもあった。もしアッシュが人類に害なす存在となった暁にはその首を吹き飛ばし、エトナも同様に死ぬ定めだった。

 当然、そんなつもりはアッシュには微塵もない。だからこれは、人を安心させるためだけの装置であり、倫理観も何もかも無視していると言えるだろう。

 けれど、二人に悲壮感はない。この世界で最も穏やかな〈琥珀色〉の空を見上げながら、二人は希望に満ちた微笑みを浮かべていた。


「それから、これはルシアたちから聞いたんだけどね、失った〈生命力〉は【テュフォネ】を倒せば元に戻る可能性が高いみたい。清々しい生命力に満ちた世界になれば、自然と人にも分け与えてくれるだろう――って」

「で、そこで分け与えてくれる存在ってのが、世界の〈生命力〉をたっぷり吸うことになる私たちの子供なんだってさ」

「僕たちの子供が、僕たちを救ってくれるんだ。お婆ちゃん、これって多分一番幸せなことだよね」


 指輪のある手を繋ぎ合い、二人は未来(希望)をオルガに伝える。この残酷で絶望に満ちた世界で、それを伝えられることこそが幸せだと思いながら。

 

「じゃあ、僕たちは行くよ。また落ち着いた時に来るね」

「その時は〈執火官〉として活躍して、輝かしい成果を報告しに来るから楽しみにしててちょうだい。アナタの子はこれからも逞しく生きていくから――」


 やることはほとんど変わらない。

 【テュフォネ】を倒し、〈英雄〉となる。違うのは、その先をしっかりと見据えていることだ。

 手を繋ぎ、視線を繋ぎ、心を繋ぎ、その身を繋げる。重なり合う影が二人の愛の足跡となり、光差す方へと歩いていくのだった――。


これにて、第一部完!です

ここまで、読んでくださりありがとうございました!

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