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第八話~ミスリルリザード~

危なげなく蜘蛛の群れを討伐した俺達はミスリルリザードの棲む最深部へと進んでいく。先程の戦闘の影響だろうか、あれ以来魔物の気配が穏やかになっている。


蜘蛛達を倒した事で他の魔物達の牽制になったのだろうか。ゲームの世界ではボスを倒すとそのダンジョンの魔物が出なくなったりする事があるが、それと似ている。


ボス戦の直後でMPが枯渇して脱出魔法が使えない、詰んだ。と思ったら帰りは魔物が出なかったり、全回復するチェックポイントが出現したりとかあったなぁ。


そんな思い出に浸っていると最深部が見えてきた。

最深部の空間は今までより開けており、辺りは希少そうな鉱石が所狭しとひしめいている。その更に奥に一つの大きな影が見えた。その影の正体はミスリルリザードで間違いなさそうだ。


名は体を表すとはこの事だ。ミスリルリザードの全身はミスリルで覆われており、眩い程の輝きを放っている。ドラゴンの子どもくらいの大きさだろうか。あまり脅威に感じないが、こいつがこの国の元凶か。こんな奴のお陰でこの周りの鉱石が採掘できずにいたとは。


そんなに強そうには見えないし、何ならさっきいたドバンって奴でも倒せそうな気がするんだけどなぁ。けど油断は禁物だ。リザードとは言ってもドラゴンの端くれだし、油断すると痛い目を見るからな。


こちらの警戒をよそに、ミスリルリザードはリラックスした様子で寝転がっている。


「カイト様、あいつッスね!なんか油断してそうなんで一気にやっちゃいますか?」


「ふむ、なんか拍子抜けだが、まぁ獲物はあいつで間違いないだろう。さっきの蜘蛛の方が厄介そうだったが。まぁよい。ボアードよ今度はお前の力を私に見せてくれ。」


「待っていましたッス!じゃあ行ってきますッス!」


ボアードは颯爽と駆け出し、奇襲を仕掛ける。卑怯な手かもしれないが、生死の戦いにそんな事は言っていられない。

そんな世界で、あちらが気付くまでこちらが待ってあげるなんて律儀な事をする必要があるだろうか。そんなお人好しはいないだろう。


寧ろ我先にと先手を打ち、全身全霊の一撃をかまして一瞬で片を付けるのが定石だ。 

ミスリルリザードがこちらに気付いた時にはボアードは大剣を大きく振りかぶり斬りかかろうとしていた。


しかしその瞬間、ミスリルリザードの目の前に仕掛けられていた魔法トラップが発動する。


トラップの発動と同時にボアードの足元に魔法陣が展開され、地面から尖った岩が剣山の如く突き出し、ボアード目掛けて襲い掛かる。

ボアードは反応するものの、避ける余裕はなく、辛うじて急所をガードするのが精一杯だった。突き出した鋭い無数の岩が硬質なボアードの体を貫く。

ボアードの体からは大量の出血をし、苦しそうな表情を見せている。

流石のタフガイもあれをまともに喰らってしまっては自己修復も簡単ではないだろう。


「ゲフッ、く、油断したッスね。これではカイト様に合わせる顔がないッス。」


確かにここで死んでもらっては顔を合わせることは二度と出来ないだろう。

しかしあれ程の攻撃を受けてもまだ死なないとは、さすがの体力お化けだ。今回はボアードの油断が仇となったな。


とは言え、俺が奇襲を許可したのだから俺にも責任はある。いや、ボワードは一度俺に相談してから行動に移した。俺の言葉を聞かず駆け出して行った時と比べ成長している。


寧ろこれは上司である俺の失態だ。俺も魔法トラップの存在を予見できなかった訳だし。

まだまだ実力不足である。世の中には自分の失態を部下になすりつける上司もいるが、俺はそんなクズにはなりたくない。部下に失態を見られたくない気持ちは分かるが、完璧な者など存在しない。

己の失態を認めよう。ここはカーミラにボアードの治療を任せ、俺が奴を討伐するとするか。


カーミラに指示を出そうとした時、ボアードがリザード目掛けて動き出す。


「カイト様、みっともない姿をお見せして申し訳ございません。カーミラのように華麗にとはいきませんが、すぐ片付けますので少々お待ちください。」


ボアードは体に岩が突き刺さったまま前進している。尋常じゃない出血をしているが、ボアードは気にする事無く突き進む。あいつはゾンビなのか?一種のホラーを見せられているような気分だ。その様子を見たリザードも一瞬怯むが、ボアードに向かって威嚇する。

双方の距離が近づいた時、リザードがボアードに飛びかかる。


しかし、ボアードは相手の動きを完全に見極め片手でリザードの首を捕まえる。首を掴まれたリザードは宙に浮き身動きが取れず、足をバタバタさせている。

何という馬鹿力であろうか。深手を負っている状態であの重そうな敵を片手で持ち上げている。ちょっと引くレベルである。


そして決着の時が来た。ボアードは自分の体に突き刺さっている岩を一本引き抜くと、リザードの心臓目掛けて突き刺した。

リザードは血飛沫をあげ、バタバタとしていた足はやがて動かなくなった。

ボアードはリザードをゆっくりと下ろし、自分に突き刺さっている残りの岩をすべて引き抜いた。


「カイト様、お待たせしましたッス。ちょっと手こずってしまいましたが、倒してきましたッス!」

と報告しながら血をダラダラ流し、こちらに向かってくる。ちょっと怖いから近づかないで欲しいと思ったが、みるみるうちに傷が修復され、こちらに戻ってくる頃には完治していた。ボアードの頑丈さには毎回驚かされる。


「う、うむ、ご苦労であった。それより魔法トラップでかなり深手を負ったかと思うが、傷は大丈夫か?」


「はい、もう全然平気ッス!あの程度ならすぐに治せますッス!」


「そうか、しかしすまなかったな、私もあの魔法トラップを予見できなかった。まさかあんな事になるとはな。だが、お前のタフさには驚いた、しかもあの程度ならまだ余裕だとは頼もしい限りだ。」


「カイト様が謝る事無いッスよ!自分も油断していたので。一回カーミラを本気で怒らせてすごい魔法を食らった時は流石にヤバかったッスけど、大抵はこんな感じで治りますッス。」


「そうね、私のあの魔法を食らってもあんたは死ななかったものね。一体どうやったらお前を殺す事が出来るのか知りたいくらいだわ。」


「痛みは感じるのでもうあれは勘弁して欲しいッスけど、自分でもまだ限界がわからないッス。」


「ははは、そうかそうか、まぁ何にせよ今回二人の力を見る事が出来る良い機会になった。それではそろそろ戻るとするか。おや、これは?」


討伐も終わり俺達は帰ろうとすると、ミスリルリザードが寝転がっていた傍に卵が一つ落ちている。

「このリザードの卵でしょうか?カイト様、いかがいたしましょうか?破壊しておきますか?」

う~む、このまま放っておくといずれ孵化して成長した時にまたここが脅かされてしまう。そうかと言って、ここで破壊してしまうのも気が引けるし。


そんな事を考えていると卵が動き出した。暫くするとヒビが入り始め、今か今かと孵化の瞬間が近づいている。この生命誕生の瞬間に殺してしまうなんてそれこそ良心が痛む。この二人なら平気でやってのけそうだが。


ボアードとカーミラは今か今かと攻撃の態勢を取っている。


「二人とも待つのだ。孵化したからといってもまだ赤子。それ程の脅威にはならないだろう。暫く様子を見ようではないか。」


俺達は暫く見守っていると、殻が割れ中からミスリルリザードの赤子が出てきた。

「キュー!キュー!」


生まれたての赤子は何とも愛くるしい声で鳴き始めた。親はただの魔物にしか見えなかったのだが、この小さなリザードを見ると愛着が湧いてくる。


「カイト様、今なら親子共々焼き払う事が出来ますがいかがいたしますか?」


よくもまぁこんな可愛い姿を見てそんな言葉が出てきたものである。さすが冷徹な女だ。しかし、確かにこのまま放置する訳にもいかない。どうしたものか。


すると、赤子のリザードは一直線に俺に向かってきた。俺の足を登り、肩に止まった。どうやら懐かれてしまったようだ。


「ほう、私の傘下に加わりたいのか?」


生まれたばかりのリザードに話しかけると、返事をするかのように愛くるしい声で必死に鳴いている。


「キュー!キュー!」


どうやら俺に懐いているようだし、このまま保護すれば何かの役に立つかもしれないな。よし、そうしよう。


「よろしい、ではお前は今日から私のペットだ。そうだな、名前はドラドでどうだ?」


「キュー!」


「よし今日からお前の名前はドラドだ!お前達も良いな?こいつはたった今から私のペットとする。」


「はいッス、問題ありませんッス!」


「はい、カイト様の仰せのままに。」


「よし、では行くとするか。」


こうして無事にミスリルリザードを討伐した俺達は、新たな仲間ドラドと共に入口へと戻るのであった。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


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