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第九話~炭鉱脱出~

俺達三人と一匹は入口に向かい進んでいく。先程の激しい戦闘もあってか、例によって魔物の気配は感じない。この炭鉱の主を退治した者達を襲おうなどと考える愚かな魔物はいないようだ。


マップのイメージ通りに歩いていると、ドラドが急に肩から飛び降り鳴き出した。


「キュッキュー!キュー!キュッキュー!」


「カイト様、ドラドの奴、何か言いたそうッスね。」


ドラドはカイト達が進もうとした方とは逆方向に向かって走り出し、こっちに来いと言わんばかりに鳴いている。


「うむ、ドローウィング(空間掌握)の魔法だとそちらは行き止まりの筈なのだが。何かあるのかもしれん。付いて行ってみるとするか。」


俺達はドラドが案内する方へと進んでいく。だが、暫く進むとやはりそこは行き止まりであった。ドワーフが掘り進めた形跡はあるが、途中で鉱石が採掘出来なくなったのであろう。壁は粗く削られていて、壁の上から通行止めのように木の板が張られている。


「やはり行き止まりのようですね。カイト様引き返しますか?」


すると、ドラドは通路の側面を向いてキューキューと鳴き出す。


「いや、待つのだ。この壁に何かあるようだ。ボアードよ、この壁を壊せるか?」


「はい、お安い御用ッス!」


ボアードは拳を振りかぶり、壁に向かって正拳をぶつける。


凄まじい轟音と共に壁に大きな穴が開いた。そしてなんとその先には、下へ降りる階段があった。どうやらドラドはこの事を伝えたかったようだ。


「下へと道が続いているようだな。先に進んでみるとするか。ライトボール(光球)。」


魔法により光を放つ球を生み出す。周囲は明るく照らされ俺達は階段を下りていく。


そして暫く進むと、開けた場所に出た。その先には重厚な扉が構えている。

どうやらこの扉の先に何かありそうだ。トラップ部屋か、ボス部屋か、はたまた宝部屋だろうか。何にせよここまで来たら中を確認せずにはいられない。


俺はボアードに扉を開けるよう指示する。とても重そうな扉だが、ボアードは軽々と押し開けてみせた。


「カイト様、開きましたッス!」


「うむ、ご苦労。では、入るぞ。中に何が待ち構えているかわからない。油断せずに進むのだ。」


「はい、先程のあのブタみたいな無様な事にならないよう気を付けます。」


先程の魔法トラップの一件があったので、慎重に辺りを警戒しながら歩を進める。部屋の中は広々としているが、部屋の周囲は他の道と変わらず岩の壁に覆われている。

魔物の気配やトラップの類も確認できない。しかし、部屋の奥に目をやると驚きの光景が広がっていた。


俺達の目に映ったのは、透明で巨大な結晶の塊である。今回の炭鉱内の散策でいろいろな鉱石を目にしてきたが、黒、白、青、紫、赤、黄など、色、大きさ、性質、価値の違いはあれどもどれもみな鉱石特有の色をしていた。


しかし、この鉱石は無色透明である、しかも山のように大きい塊だ。価値が無い物とは到底思えない。すると、カーミラが口を開く。


「驚きました。こんな巨大なロッククリスタルの塊は見た事がありません。これ程の大きさであれば、小国が買えてしまいます。」


俺の勘は当てっていた。只の大きな石じゃ無いとは思っていたが、まさかそれ程の価値があるとは。カーミラの話によると、ロッククリスタルはとても希少な鉱物で、無色透明な色が特徴である。


そしてとても脆い性質で、少しでも下手な力が加わってしまうとボロボロに砕けてしまうらしい。

希少で扱いが困難な鉱物ではあるが、最大の特徴は魔法による属性付与が出来る事だ。細心の注意を払いロッククリスタルに魔法を込めることで、その魔法の属性がクリスタルに宿る。


そしてそのクリスタルを武器や防具の素材として生成すると、例えば火属性の武器や防具等が作れる。

火属性が付与された武器なら攻撃時に火属性のダメージを与えることができ、防具なら火に対する耐性を得ることができる。


戦闘において属性ダメージを与えたり、防ぐためには魔法の力を用いるのが一般的だが、これによりマナの消費を節約したり、自分の魔法と掛け合わせて更に強力な攻撃、防御を行う事が可能となる。まさに夢のような鉱石なのである。


その鉱石がこれ程あるとなれば、魔大陸の戦況を覆す手段の一つとなり得るだろう。


「そのような貴重な鉱石を見つけるとは。ドラドには特殊な力があるらしいな。ドラドよ、よくやってくれた。」


「キュー!」


「ドワーフ国にハメられた問題はまだ解決していないが、これをドワーフに加工させれば素晴らしい武

器が作れるに違いない。まずは奴等の今回の行いについて話を付けてからだな。」


「そうですね。そうでなくてはこちらの腹の虫がおさまりません。」


俺達はひとまずここを離れて正規のルートに戻り、閉じ込められた入口へと戻った。

少し時が経ったが、入口の状況は変わっていない。マナ制限の魔法も発動したままのようだ。


「ボアード、この入口を塞いでいる岩をどけてくれないか?」


「かしこまりましたッス!ちょっと後ろに下がって下さいッス!」


ボアードは少し助走を取り、先程と同じく拳を振りかぶって岩を打ち砕く。

入口を塞いでいた岩は見事に粉砕され、外光が炭鉱内に差し込む。ボワードの正拳により炭鉱内に大きな衝撃が加わったが、崩れたりはしていないようだ。ドワーフが鉱内をしっかり補強しているからだろう。


入口を塞いでいた岩を破壊した途端、バドラスの発動させていたマナ制限の魔法は消滅した。

こうして俺達は炭鉱から無事に脱出した。予想通りではあるが、既にバドラスとドバンの姿はそこには無かった。俺達を上手く閉じ込めたと思い、城に帰還したのであろう。


「いやー、やっと出られたッス!やっぱり外の空気は良いッスねー!」

刑務所から釈放された元囚人みたいな事を言っているが、それは無視しておいて、やはり城に乗り込むとするか。


「カイト様、城に向かわれますか?」


「うむ、そうだな。しかし、こちらから手荒な真似をする事は控えるのだ。あちらにも何か事情があるかも知れぬ。」


「承知いたしました。相手が攻撃を仕掛けて来ない限り、こちらから危害を加える事は控えます。」


「分かってくれて助かるよ。では行くとするか。」


その頃、城内にはボアードの正拳による轟音が響き渡っていた。


「何だ、この音は!バドラスよ、どうなっておるのじゃ!?」


「炭鉱の方から音がしましたが、恐らく最初のドバンの一撃の影響で炭鉱がまた崩れたのかと。」


「いいや、これは違う、あいつ等が出てきたようだぜ。」


「なんだと!?お前の一撃で確実に閉じ込めた筈だぞ!そんなバカな事があるか!あの崩れた岩の山か

ら出られたとでも言うのか!?」


「あぁ、あの連中ならさもない事だと思うぜ。閉じ込めてからすぐに脱出しなかった理由は分からんが、こっちに殴り込みに来るだろうよ。さぁどうするよ?」


「そんなバカな。しかし、お前が言うなら間違いないのだろう。そんな連中がこちらに来るのであれば


ドバン、お前が迎え撃つしかあるまい!王よ、それでよろしいでしょうか?」


「そうだな、ドバンよろしく頼む。いざとなればあの方のお力を借りるとしよう。」


城内がパニックになっている頃、王の間の扉が勢い良く開いた。


「ドワン王よ、与えられた任務が完了し、今戻ったぞ。さて、今回の件、話を聞かせてもらおうか?」

すると、ドバンが突然自慢の斧を振り上げ斬りかかって来た。


俺は魔法を発動させようとしたが、ボアードが俺の前に立ちはだかり、大剣でドバンの一撃を受け止めた。周囲には凄まじい衝撃波が発生する。


「ほう、なかなかやるな、ブタの癖に。」


「そっちもチビの癖になかなかのパワーッスね!」


そこから両者の激しい攻防が始まる。ドバンの動きは洗礼されており、巨大な斧をまるで棒のようにブンブンと振り回している。


しかし、ボアードも負けておらず、ドバンの攻撃をすべて受け止め、反撃の隙を狙っている。ドバンの攻撃を受けたとしてもボアードの回復力なら余程の事がない限り死ぬ事はないだろう。攻撃を捨て身で受けて反撃すれば勝つ事は容易そうだが、そうはせず様子を見ている。久しぶりの好敵手を前に楽しんでいるようにも見える。


「どうしたッスか?もっと楽しませてくれッスよ!」


「ふん、防戦一方じゃねぇか。その余裕がいつまで続くかな。」


二人の戦闘が続く中、ボアードの力量を見たドワンが動き出す。


「ふん、どうやら炭鉱を脱出した力は本物のようであるな。中のリザードを倒したというのも間違い無いだろう。よい、では真実を教えてやろう。」


ドワンは胸元から水晶を取り出し掲げる。すると部屋中に眩い光が立ち込める。戦闘中の二人も思わず

手を止める。


光が治まるとそこには一人の男が立っていた。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


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