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第六十九話~奥の手~

カイトはバトルモードシフト(戦闘形態変化)でボアードの戦闘形態に変化したドロイドと交戦していた。

戦闘は互いに余力も残しつつも、両者ともに決定打を浴びせる事が出来ない状況が続いていた。

だがカイトはドロイドの実力は底が知れたと判断し、勝負にけりをつけようとしていた。


と思っていたその時、ここからドロイドの逆襲が始まる。


「ピピピ、カーミラノ解析データヲ更新シマシタ。」


ドロイドが次の手を模索していた時、コーボからカーミラに関する新しいデータが届いた。

そのデータを即座に取り込んだドロイドは思わず声を漏らす。


「これは、、、やったッスよ、これであいつも終わりッス。やつの驚く姿が目に浮かぶッス。バトルモードシフト。カーミラ。」


カーミラのデータを得て何かを思い付いたドロイドは、フォーム(形成)で作った大剣を置くように地面に突き刺し、バトルモードシフトで今度はカーミラの戦闘スタイルにシフトする。


「おや?私の言葉が聞こえていなかったのか?お前がカーミラになったところで結果は同じだぞ?」


「バトルモードヲカーミラニシフトシマス・・・シフト完了シマシタ。」


カイトはドロイドに忠告するも、ドロイドはそれを無視してカーミラの戦闘スタイルにシフトする。

恐らく魔法中心の戦闘スタイルになるだろうが、カーミラになったところでカイトが敗れる程の脅威にはならない。


カーミラは確かに大陸では指折りの魔法使いだが、カイトは無論その上の存在である。そのカイトと魔法でやり合うなど悪手であり、それならまだボアードの状態のまま肉弾戦を挑んでいた方がマシだったのかもしれない。


「さてと、じゃあ今度はこの私がお相手してあげましょう。ヘルフレイム(業火)。」


ドロイドはカーミラになると早々に魔法を仕掛けてくる。


「だから無駄だと言っているだろう!アイスウォール(氷壁)」


ヘルフレイムはアイスウォールと相討ちとなり、氷壁は爆発と共に砕け散る。爆発の影響で周囲には水蒸気が立ち込めた。

カイトは自分の忠告を聞かなかったドロイドにイラついたのか、水蒸気の霧が晴れると少し怒り気味に口を開く。


「私の忠告を無視するとはいい度胸だな。カーミラは魔法に特化した戦闘スタイルだがそれは私も同じ事。魔法の勝負で私に勝とうなど百年早いわ!ウィンドエッジ(風刃)!」


「あら、そう?私はそうは思わないのだけど。マジックシールド(魔法障壁)。」


カイトはウィンドエッジを放つも、マジックシールドで防がれてしまう。


「ほう、いつもよりマナを込めて放ってみたのだが、少しはやるようだな。面白い。カーミラとも手合わせしてみたかったところだ。しかし、私から仕掛け続けていたらすぐに終わってしまうな。いいだろう、カーミラになったお前の力も見てやる。好きなだけ撃ってこい。」


「あら、そんな余裕を見せていいのかしら?じゃあお言葉に甘えてやらせてもらうわ。」


そこからドロイドは怒涛の勢いで多種多様な魔法を連発する。

しかし、カイトはその全ての魔法に対して有効な属性で迎え撃ち、どれも完璧に掻き消してみせた。


しかもそれだけではなく、時にはフライ(飛行)やテレポーテーション(瞬間移動)でかわしたり、マジックシールドやリフレクション(反射)で防いだりして、まるで子供の遊び相手をするかのようにドロイドをあしらって見せた。


そのやり取りがしばらくの間続くが、ドロイドはエネルギーが尽きたのか攻撃を一旦止める。


「どうした、もう終わりか?まだ元気があるならもっと撃ってきて構わないぞ?」


「いや、いいわ。もうこれで十分よ。カーミラの力は分かったわ。」


カイトは挑発するが、ドロイドは何かを悟ったかのように冷静に対処する。


「そうか、もう諦めたのか?残念だ。まぁそれは仕方がない、相手がこの私だったのだからな。」


だがドロイドはカイトが何か勘違いしている事に腹を立て、突然罵声を浴びせた。


「バカが!誰がもう諦めたと言ったの?私はカーミラの魔法を技術的な問題なく発動できる事が分かったと言ったのよ。コーボはそれが出来ずに追い込まれているようだけど。」


カイトはドロイドがボアードの戦闘スタイルの時に手合わせした際にも感じていたが、普段敬語で接してくる二人に本物ではないとはいえ、タメ口で話されるとなんだか不思議な気持ちになるのであった。


そしてカーミラから罵声を浴びるのは新鮮だが少し傷つくという事が分かった。

敵なのでタメ口に対して怒りや驚きといった感情はないものの、カーミラの罵声は何故だか傷付いてしまった。


それ程までにカーミラの罵声は威力があるのだろう。これを日常的に受けているボアードの気持ちは察するに余り有る。


カーミラにはもう少し自分以外の相手、特にボアードにも丁寧な言葉遣いをするように注意せねばと思いつつ、カイトは戦闘を続けるのであった。


「ほう、そういう意味であったか。確かに今までお前が撃ってきた魔法は私には無力であったにしろどれも精度が高いものだった。だがそれがどうかしたのか?カーミラと同じ精度で魔法が撃ててもそれが私に勝る要因にはならないぞ?」


「そうね。現在の第二階層の状況を知らないあなたにはそう思えるかもしれないわ。ただこれを見てもそうと言えるかしら?」


「ん、どういう意味だ?」


「今からその意味を教えてあげる。ドッペルゲンガー(分身)。」


ドロイドは解析データの更新により、カーミラが覚醒により習得したドッペルゲンガーをコピーしており、このタイミングでそれを発動させてきた。


この魔法は高度魔法技術が求められ、コーボはその壁を超える事が出来なかったが故にカーミラに敗れる事になるが、コーボは敗れる前にこのデータをきちんとドロイドまで届けていたのであった。


そしてドロイドはドッペルゲンガーを発動させ、隣に分身を形成させていく。


「なんだ、この魔法は?カーミラがこんな魔法を使えるとは知らなかったぞ?」


「お前が知らないのも無理はないわ。だってこれはさっきカーミラが覚醒により習得した魔法なのだから。」


「なに、カーミラが!?なんという事だ!?」


「ふっふっふっ、驚いているようだがもうお前にはどうする事も出来まい。」


ドロイドはこの戦闘でカイトが初めて見せた驚きの表情を見て、一泡吹かせてやったぞと勝ち誇っている。


しかし、カイトが驚いているのはそこではない。


「そうか!カーミラもとうとう覚醒したのか!それで私の知らない魔法を発動出来たという事か!うんうん、成長してくれて何よりだ!それにしてもすごい魔法じゃないか、自分の分身を形成する事が出来るなんて!」


カイトが驚いていたのはドロイドがドッペルゲンガーを発動させた事ではなく、カーミラが覚醒した事であった。


そしてその驚きは焦りや緊張といった類ではなく、喜びの感情であった。

カイトに一泡吹かせてやったと思っていたドロイドは、それは自分の勘違いであったという事と、自分の奥の手とも言える魔法を発動したのにも関わらず、カイトが全く怯んでいない様子に腹を立てる。


「貴様ぁ、この状況が分かっていて尚もそのような浮かれた態度を取っているのか?」


「ん?あぁ、すまない、仲間の成長が嬉しくてついつい取り乱してしまったようだ。おぉ、そうだ、このドッペルゲンガーはカーミラが覚醒によりようやく得られた魔法だ。恐らくこれを発動し、成功させるにはそれなりの魔法技術が試される筈だ。それをお前はコピーしてすぐに発動出来た。まだ分身がちゃんと動くか分からないが、発動出来ただけでも凄い事だぞ、自分を誇るのだ!」


ようやくカイトの視点はドロイドの方に向いたかと思えば、まるで拗ねた子供をあやす様な態度でドロイドを誉めるだけであった。


この相手を完全に舐めている態度にドロイドの堪忍袋の緒が切れる。


「くっ、この私を馬鹿にするのもいい加減にしろ!バトルモードシフト、ボアード!」


激怒したドロイドは自身のバトルモードをボアードにシフトしている最中だが、今にもカイトに飛び掛からんとばかりに地面に突き刺していた大剣を抜き取る。


「バトルモードヲボアードニシフトシマス・・・シフト完了シマシタ。」


シフトが完了すると、ドロイドは鬼の形相でカイトに襲い掛かる。


「もうお前は許さない、全力で殺すッス!カーミラ、お前は援護するッス!」


ドロイドの奥の手はドッペルゲンガーで分身を作り、分身にはカーミラの戦闘スタイルで援護射撃をさせつつ、自分はボアードにシフトして近距離と遠距離のニ方向からの全力攻撃で一気にカイトを潰すという作戦だった。


「やっと全力で戦う気になったか。面白い。二対一なら少しはマシな戦いになるだろう。かかってこい!」


カイトは二対一という数的不利な状況になっても焦りの色を見せない。


いくら自分の力に自信があると言っても、ボアードとカーミラを同時に相手するとなると流石のカイトも苦戦するように思えるが、寧ろこれでやっと少し面白くなってきたというくらいにしか思っていないのであった。

「面白かった!」


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