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第五十四話~協力と条件~

そして時は現在に戻る。


「話が長くなったが、これが今のマーベルに至った経緯と現状さ。それで私は先程話した通り、人間を含めこの街のほぼ全ての管理を任されている。」


「ってちょっと待つッス!その肝心な作戦は何なんスか!?」


コロネフの長話に眠くなっていたボアードだったが、肝心な所で話が切られ、流石にツッコミを入れる。


「まぁまぁ、そう焦るなよ。それは後で教えてやるからさ。」


「ふむ、そういう経緯だったのか。どうりで人間の姿が無かったわけだ。とすると、昨夜にサイレンの音が聞こえたが、あれは誰かがエリア外に逃げ出して、監視ロボットにでも見つかったといったところか?」


「あぁ、私の作戦に協力的ではない人間が亡命でもしようとしたのかもな。けど、あの警備は簡単にはかいくぐれない。私の操作で警備を緩める事は出来なくもないが、後でそれがドロイドにバレてしまえば私も他の人々もタダじゃ済まないしな。脱走の手助けは出来ず心苦しかったが、こればかりはどうしようもない。当然だが私もドロイドから完全に信用されてこの監視を任されているわけではないからな。気の毒だが、捕まった者は今頃痛い目に遭っているかもな。」


「自分達が作った物に支配されるなんて、人間はなんと愚かな種族でしょう。だけどマーベル外の監視もあなたが任されているとは言え、私達を簡単にここまで迎え入れても良かったのかしら?」


「あぁ、これくらいなら問題ないだろう。マーベル外の監視と言っても、鎖国のように来訪者をまったく受け付けないという訳ではない。あくまでロボットが支配しているのはこの国の人間だけだ。入口の兵隊ロボットには驚いたかもしれないが、人間や他の種族でも敵意が無ければ、マーベルに入国するのは比較的難しくない。あまり外からの者を拒んで敵対されるのも厄介だしね。言ってみればロボットの独裁国家みたいな感じかな。それに監視カメラ越しからだったが、お前達は只者ではない強者の風格を感じた。この者達ならもしかしたらと思ってな。」


「そうだったんスね。確かに自分達は強いっスけど、もしかしたらって何スか?」


「あぁ、それで作戦の話に戻るのだが、ドロイドが作り出したロボット達の対策は既に考えてある。恐らく私の考えた作戦で対抗出来るだろう。しかし、問題はドロイド自身をどうにもする事が出来ないという事だ。」


「というと、どういう事なのだ?」


「ドロイドは話した通りAIを搭載して学習能力のリミッターも解除されているロボットだ。それが人知を超えてしまった以上、もはや我々エンジニアではどうにもする事は出来ない。こうなってしまった以上はもう力ずくで奴を止めるしかない。そんな矢先に強そうなお前達がこの都市に訪れた。そこで私はもうこれはお前達に頼むしかないと思ったのだ。」


「そうか。だが仮に我々がそのドロイドとやらを抑え込むとして、残りの数千体のロボット達は本当にお前達人間に任せてどうにかなるものなのか?」


「あぁ、それは問題ない、自信がある。人間は知っての通り生身ではロボットに敵うわけがないが、所詮あいつらはロボットだ。私の作戦が上手くいけばすぐに片が付くだろう。だがこの作戦はAIであるドロイドには通用しない。」


「さっきからそのAIとドロイドをとても恐れているようだけどそんなに恐ろしい物なの?」


「あぁ、それは勿論だ。なんせあのドロイド自身でさえも、AIを恐れているくらいだからな。

その証拠に、奴は自ら手掛けたロボット達は一切AIが搭載されていない。」


「何でっスか?そのエーアイってやつを使えば人間なんて簡単に滅んでしまいそうッスけど?」


「確かにAIを搭載したロボットを量産してドロイドのような個体が増えれば、マーベルどころか他国も支配する事も可能だろう。しかしドロイドがそうせずにいるのは、ドロイド自身もAIの力によって淘汰されてしまう事を恐れているからだ。最初は上手く制御出来るかもしれないが、AIは経験を基に自分自身でどんどん学習をする。自分がプログラムした範疇の問題なら解決出来る事がほとんどだが、AIは学習するにつれてプログラムもどんどん変わっていく。それも製作者の理解が及ばない範囲に。ドロイドが発明される前からAIの技術は実用できる段階までに開発が進んでいたが、なかなかAI搭載のロボットを製作する者は現れなかった。それは私も他のエンジニアもAIがそれほどまでに取り扱いが難しく危険であるものだからと分かっていたからだ。しかし、私はそこに誰かが足を一歩踏み入れなければマーベルの更なる発展はないと思った。そこで私は意を決し、ドロイドを発明に乗り出したのだ。私はドロイドを完全に制御できるようにプログラムしていたつもりだった。だがそれもAIの成長によって打破されてしまう結果となった。それが現状を生み出してしまった。こうなってしまうと、生み出した本人でさえも手が付けられなくなってしまう。だからドロイドも同様に自分が頂点に君臨し続けるため、自分以外のAIを制御できなくなる事を懸念してAIロボットを作らなかった。」


「そういう事か、お前の話す限りではかなり骨の折れる相手になりそうだが、では仮に我々がドロイドを抑え込んでやったとして、お前は我々に何をもたらしくれる?」


「何をもたらすか、か。そうだな、もし仮にドロイドを抑え込む事に成功したのならば、我々マーベルの技術を結集し、お前達のために出来る物ならどんな物でも作ってみせよう。」


「ほう、どんな物でもか。それは素晴らしい。この都市の技術の粋を結集して作られた物が手に入るのか、それは楽しみだな。だがもう一つ条件を付けさせて欲しい。」


「なんだ?叶えられる事なら良いのだが。」


「この国の中枢を担っているレーダー塔の天候操作を廃止しろ。それが条件だ。」


「何だと!?それは流石に聞けない相談だな。だが、どうしてだ?」


「聞けない相談か。まぁ聞くだけ聞け。お前達はあまり気にしていないようだが、この都市の天候操作が周辺に甚大な被害を及ぼしているのは理解しているか?」


「あぁ、周辺の水蒸気を利用しているからこの都市周辺は乾燥しやすい気候になっている。それがカンナ砂漠の原因である事も承知はしている。だが、これはこの都市の民の生活を守るために行っている事だ。それに周辺には人間はいないから問題ない筈だ。」


「そうか、ここの人間共はそのような考え方をしているのだな。自分達人間だけが良ければ問題ないと。周辺に砂漠ができようと、それによって多くの他種族や生態系に悪影響を及ぼそうともお構いなしという事だな。」


「まぁ、そういう事になるな。」


そんな事を平然と述べるコロネフの態度にカーミラとボアードは怒りがこみ上げ、平静を保つことが出来ず、コロネフに殴りかからんとばかりにぐっと前に出てこようとする。


が、それよりも先にカイトが前に出て、手を広げ二人を制止した。


二人の感情はもっともだが、カイトはコロネフにあんな態度を取られても冷静でいられた。

それは何を隠そうカイトも人間だったからである。

このマーベルの状況はまさに地球で起きていた人間の所業と同じだったのである。

地球ではすべての生物の王、食物連鎖の頂点は人間であり、人間が支配していた。

それ故に人間は自分達の都合の良いように他の生物との共存を考えず、マーベルと同じような環境破壊を行っていた。

その元人間であるカイトにとって、このマーベルの自分勝手な言い分を咎める筋合いなどないのである。

とは言っても、それではここへ来た目的は達成されない。

カイトはどうにか折り合いをつけるべく話を続ける。


「だがその自分達以外を顧みない傲慢な態度を続けた結果が今回のような事態を招いたのではないのか?」


痛いところを突かれたコロネフは少し言葉に詰まる。


「ぐっ、確かにそれは否めないかもな。だが、我々にも生活がある。生きるためには天候操作は必要なんだ!」


「ではもし、そんな事をせずとも水源が確保できるとすればどうだ?」


カイトの突拍子も無い提案にコロネフは思わず目を丸くする。

だがカイトの態度は毅然としており、ハッタリをかましているようにも思えない。

とは言えにわかにも信じ難い提案に、コロネフは反射的にカイトに問いただす。


「何を、冗談を。この問題に我々がどれほど頭を悩ませて天候操作という結論に至ったか知った上で言っているのか?我々マーベルの技術を結集して、レーダー塔という大規模な設備を導入しなければ解決できないような問題をお前達が本当に解決できると言うのか?」


コロネフがこれでもかとばかりの勢いでカイトに問うが、カイトの自信に満ち、毅然とした振る舞いは揺らがない。


「あぁ、勿論だ。だが流石の私もすぐにという訳にはいかない。そうだな、一ヵ月だ。一ヵ月あればこの都市の水源を確保し、レーダー塔の天候操作なしでもこの都市の民達が問題なく生活できるようにすると約束しよう。もしそれが破られるような事があるのであれば今回の件に関しての礼は一切必要ない。そして今まで通りレーダー塔で天候操作すれば良い。どうだ?この条件ならどちらに転んでもお前達にとっては悪くないだろう?」


カイトの提案にようやく折れたコロネフはカイト達と約束を交わす。


「分かった、そこまで言うなら約束しよう。もし天候操作以外での水源が確保出来るのであればマーベルは今後レーダー塔による天候操作はしない私の名に懸けて誓おう。その前提条件としてまずはドロイドを抑え込む事が必須となるが、その立役者がお前達で、水源を確保したのもお前達ともなれば誰も文句は言わないだろう。私だって機械オタクのエンジニアだが、本当はレーダー塔のようなものを利用する必要が無ければそれに越したことはないと思っている。他の皆も同じ思いだろうよ。」


「そうか、では決まりだな。では早速作戦を始めようではないか。」


「決まりッスね!ようやく自分の出番が回ってきそうでワクワクするッス!」


「魔法とAIとやらの対決ですか。私も久しぶりに血が騒いできました。マスター・オブ・デザートの件では不甲斐ない姿をさらしてしまいましたが次こそは、カイト様のお役に立てるよう精進します。」


こうしてカイト達はドロイドを討つべく作戦決行に向けて準備を進めるのであった。

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