第四十九話~プロトタイプ完成~
次の製作に取り掛かったドロイドだが、作業の流れは基本的に前回と同様である。
ドロイドがまずお手本となるプロトタイプを製作し、それを総勢百体のお手伝いロボット達が複製するという流れだ。
しかし、今回は製作する台数が非常に多くなる事が予想されるため、ドロイドはプロトタイプの製作と同時進行でお手伝いロボット達に自分達の複製を量産させる事にした。
こうして作業の第一段階であるプロトタイプの製作とお手伝いロボットの量産が同時に始まった。
ドロイドの頭の中には既にプロトタイプの設計図は浮かんでおり、後はそれを形にするだけであった。
そして作業を開始してから数日後、ドロイドはあっという間に三種類のプロトタイプを完成させた。
一つはドロイド自身をモデルにした人型タイプのロボットである。
ドロイドはこれをヒューマンタイプと名付けた。
ヒューマンタイプは名前の通り、人間と似たフォルムを採用しており、繊細で複雑な動きを得意としている。背丈や体格も一般的な人間と同じくらいの規格で作られている。
ドロイドはコロネフの趣味で金色のボディをしているが、自分との見分けを付けやすくするためにも銀色のボディで統一した。
また、ヒューマンタイプは言語能力も有しており、ドロイドのように流暢とまでは行かないが人間とのコミュニケーションも可能である。
そう、何を隠そうこれこそが、カイト達がマーベルで対話したロボットの前進になるモデルだったのである。
この頃から人型のロボットは流通していたが、会話できるロボットはドロイドを含めてこれがマーベルの中でも二体目だったのだ。
二つ目のプロトタイプは飛行型のロボットで、これはフライトタイプと名付けた。
本体のフォルムは球体状で、全長は直径約1mである。
本体の上部にはプロペラが取り付けられ、本体の左右には短いウィングがあり、その下部にはなにやら物騒な小型のミサイルが取り付けられている。色は黒で統一されており、本体下部にはライトも取り付けられている。
ヘリコプターと飛行機を足して二で割って小型にしたようなロボットである。
ヒューマンタイプとは異なり言語能力は有していないが、ロボット間の通信やドロイドからの命令は通るようにプログラムされている。
三つ目は車両型の通称ビークルタイプである。
こちらのフォルムは大砲を模して製作されており、丸い本体の両脇に車輪が取り付けられている。
本体の上部には砲身が搭載され、砲身からはレーザーを射出する。
ビークルタイプは小型ながらも、精密に設計された砲身から放たれるレーザーはかなりの威力である。ビークルタイプのボディもフライトタイプと同じ黒色が採用されている。
ドロイドは完成した三体を横一列に並べ、我ながら渾身の出来にさぞ満足した様子を見せている。
「ふう、今回は三体製作したから完成までに少し時間はかかったが、満足のいく物が出来た。あとはこれが上手く動いてくれれば良いのだが。一台ずつテストしてみるか。」
仕上がりに自信を持っているとはいえ、動作確認もしないままお手伝いロボット達に量産させるのは万が一不具合があった時に計画のスケジュールが大きく狂ってしまう。
それにそのような失敗は資材の無駄遣いに繋がる。
即ちドロイドが忌み嫌っているスクラップ工場に失敗作を悪気も無く持ってくるあの男と同じ愚行をしてしまう事になる。
そんな事はあってはならないと思い、ドロイドはまずヒューマンタイプから動作確認を始めた。
「よし、じゃあ始めるとするか。ヒューマンタイプよ、起動しろ!」
ドロイドが命令すると、ヒューマンタイプは独特の起動音を発しながら起動した。
起動と同時にヒューマンタイプの目は光り、ドロイドの方を真っすぐ見つめている。
「アナタガ私ヲ作ッテクダサッタドロイド様デスカ?」
「あぁ、そうだ、私がお前を作り上げたドロイドだ。お前はこれから私の命令に従って行動してもらうのだが、その前にどうだ?何か動作に問題はないか?」
ドロイドがそう言うと、ヒューマンタイプはその場で手や足の動きを確認し、少し歩いたり、走ったり、跳ねてみたりして見せた。
次にドロイドは自分の動きを真似してみせるよう命令し、複雑な動きを混ぜながら空手の型のように拳を突き出したり、蹴りをみせたりしたが、このような複雑な動きも問題なく真似してみせた。
「一通リノ動作ヲ確認シテミマシタガ、特ニ問題ハアリマセンデシタ。」
流石に人間ほどのしなやかな動きは出来ないが、それでもテストにしては十分なパフォーマンスだった。
人間ほどのしなやかさが無いが、寧ろ金属で作られた機械である分、堅牢性の高さや、故障や損傷した場合による処置が基本的にパーツの交換だけ済む点等、人間よりも優れている部分はたくさんある。
「よし、なら合格だ。お前は一旦待機していてくれ。じゃあ次はフライトタイプ、起動しろ。」
再びドロイドの命令で今度はフライトタイプが起動する。
起動前は床に置かれている状態だったが、起動すると本体の目のような部分が白く光り、プロペラが回転し始める。
プロペラはあっという間に高速回転し、本体は上昇を初め、ちょうどドロイドの目線程の高さの所で止まり、ホバリングしている。
どうやら次の命令を待っているようだ。
「よし、起動は問題なさそうだ。次はテスト飛行だな。フライトタイプよ、あっちにお前専用の訓練場を設けた。あの訓練場の障害物をかわしながら、次々に現れる標的を狙撃しろ。分かったら始めるのだ。」
ドロイドの命令を聞くと、フライトタイプはいつの間にか地下室の一区画に設けられた仮説の訓練場に飛んで行った。
訓練場には大量に回収した資材で作られた岩やビルのような建物を模した障害物が並んでおり、スタート地点から道なりに進んで行くと途中で的が出現するというものだった。
岩や建物と言ってもこの空間で本物の大きさを再現するのは難しかったため、かなりサイズダウンしてある。
だがその分、一つ一つの障害物はかなり密集しており、実際の世界よりも繊細な動きが試される。
それ故にこの訓練場で問題なくテストがこなせれば、性能には太鼓判が押されるという事になるのである。
ドロイドの命令で勢いよく飛び出していったフライトタイプは、ドロイドの期待を裏切る事なく、次々に立ちはだかる障害物をすいすいとかわしていく。
密集しているビルは機体を縦に横に上手く傾けて回避し、トンネルの中も衝突することなく低空飛行で見事に駆け抜けていく。
途中で現れてくる的も瞬時に捉え、装填されたテスト用の火力が低いミサイルで的を百発百中で命中させて見せた。
その後もミスすることなく訓練場を走破し、無事にドロイドの元まで戻って来た。
訓練場のコースはかなり難しく設計したつもりだったので、多少のミスはあるかと思っていたが、結果はドロイドの期待を上回るものであった。
「まさかこんなにうまくいってしまうとは。よし、後はビークルタイプだな。こいつは今までの二体と違って動作は単純だからレーザー砲の簡単なテストだけで十分だな。ビークルタイプよ、起動しろ。そして起動後に動きに問題がないか確認するのだ。」
そして遂に最後のテストとなった。
ドロイドの命令でビークルタイプが起動する。
起動すると、ビークルタイプは前後左右に移動したり、砲身角度や方向を変えたりして駆動に関しては問題ない事を証明した。
「よし、動きはまずまずだな。お前は他の二体と違って機動力は劣るが、お前の特徴はその搭載されているレーザー砲だ。今から私が用意したあのターゲットに向かって全力でレーザー砲を放つのだ。」
すると、またしても例によっていつの間にか地下室の一区画にテスト用の設備が設けられていた。
ドロイドが命令したターゲットが用意されている設備は、先程とは打って変わってとてもシンプルなものであった。
ただ、シンプルと言っても用意されていたターゲットは並の物ではない。
地下室の壁際に設置されていたターゲットは資材を回収している際にドロイドの目に留まった巨大な金属の丸くて分厚い板であった。
話は少し前のドロイドが資材を回収していた際の頃に遡る。
資材の回収作業中にドロイドは工場の隅に置かれたある物が気になり、これは何なのかと作業員に尋ねた。
すると作業員の話ではある研究所で使われていた地下金庫の扉だということだった。
その研究所が老朽化で建て替える事になり、いろいろな廃材が送られてきたらしいが、この扉はその一つだという。
本来であればすぐにスクラップ行きになるのだが、こんな廃材が来ることは珍しかったらしく、記念にしばらく隅っこに置いているとの事だった。
確かにこれ程大きな金属の扉は中々お目にかかれないのかもしれない。
その円形の扉の直径は三メートル程あり、厚さも一メートルはありそうだ。
正確な重さは分からないが、数十トンはあるはずだ。
その扉をじっと見つめて考え込むドロイド。
そしてある事を閃いた。
そう、それが今回のビークルタイプのテスト用のターゲットにする事だった。
そうしてドロイドは、これはなんとしてでも手に入れたいと思い、作業員に無理を言って手に入れる事に成功していたのであった。
ただあまりの重量のため、これ一つを運ぶためにお手伝いロボット達を総動員させる事になり、街行く人々の注目の的を浴びたのは想像に難くない。
そんな苦労もあったが、ようやくそれを使う時が来た。
その用意されたターゲットに向かってビークルタイプが照準を定める。
ターゲットの距離は約三十メートルといったところか。
狙いを定めて砲身が光り出すと次の瞬間、最大出力のレーザーが放たれた。
レーザーは的のど真ん中に命中し、その衝撃で周囲が眩しく光る。
そして光が収まると、的の中心は見事に穴が開いており、扉は大きな五十円玉のようになっていた。
想像以上の威力にドロイドは自分でも少し驚いたようだった。
「す、すごい。想定以上だ。さ、さすが私の発明だな、はは、はっはっはっ。」
こうしてテストは無事に終わり、三体の性能を確認できたが、どれもドロイドの期待通り、いや、期待以上の結果となった。
この結果を以ってドロイドは作戦の成功を確信し、計画は最終段階へと進むのであった。
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