第四十二話~命名~
「とまぁ、そんな事があったッス。」
ボアードは淡々とカイト達が駆け付けるまでの事を話した。
「そうか、それでこいつらは隅っこで大人しくしているという事か。で、ボアードよ、お前はこいつらをどうしたいのだ?殺さなかったという事は何か訳があるのだろう?」
「はいッス、ちょっとこの奥の方にあるものが気になっていまして。おそらくこいつ達の仕業だと思うんスけど、カイト様が来てから見てもらおうと思って待機していましたッス!」
オアシスに突っ走って行った時とは考えられないボアードの周りの状況を見た冷静な判断にカイトは少し感心する。
「そうか、よくぞ状況を見極めて待機してくれたな。それで気になるものとはどれだ?」
「こっちッス。ちょっと来て下さいッス。」
ボアードがカイト達を案内すると、そこには無数の空洞が開いていた。
サンドワームがボアードを落としたこの穴は大きな筒状で周りは砂の壁になっているが、壁をよく見ると空洞がいくつも見える。
「ふむ、恐らくだが、これはこのサンドワーム達の通り道なのではないか?」
「あぁ、なるほどッス、ってカイト様がおっしゃっているッスが、合っているッスか!?」
「は、はははい、おっしゃる通りでございます。。。」
リーダー格の一体がボアードの質問に答える。
「なんと、こやつらは言葉を話せるのか!?」
「はい、何故か分からないらしいッスけど、みんな言葉を話せるみたいッス。」
「ほう、では話が早い、いろいろと聞かせてもらうとするか。ん、カーミラ、どうした?そんな隅に居ないでこちらに来てはどうだ?」
カイトはボアードと話を進めていたが、よく見るとカーミラは穴の隅っこで距離を取っている。
「い、いえ、私はここで大丈夫ですので。」
ボアードがカーミラの様子を見て気が付く。
「あぁ、さては虫が苦手っすね!?まったくしょうがないッスね~。」
ボアードはここぞとばかりにカーミラの弱点をいじる。
「おい、ブタ、ここを出たら覚えていろよ。この世に生まれてきた事を後悔させてやる。」
ボアードの挑発にカーミラが釘を打つと、ボアードは堪らず顔をそらしてしまった。
そんな痴話喧嘩は無視してカイトはサンドワーム達に命令口調で語りかける。
「おい、そこのサンドワーム達よ。この空洞の正体と、何故お前らがこんな所で獲物を探しているか話せ。」
「ふ、ふん、そこまで言うなら話してやるさ。」
そう言うと、今度はクールな一体が事情を話し始めた。
クールぶっているが、自分達よりも強者を前にしてかなりビビっている様子である。
元々サンドワーム達はカンナ砂漠を根城としていたが、近年の酷暑と砂漠化の拡大により年々獲物が取れなくなっていたそうだ。
しかし、サンドワームは基本的に砂漠に生息しているが、砂漠じゃないと生きていけないという訳ではない。
砂漠の地形を利用した狩りを生業としているためここに住んでいるに過ぎない。
食糧さえ手に入れば砂漠以外でも生きていく事は可能だ。
という訳で、彼等はそんな状況をどうにかしようと地中を掘り進め、砂漠を脱出し、新境地の開拓を目指したのだ。
その冒険の跡がこの無数の空洞の正体である。
この穴はちょうどカンナ砂漠の中央にあり、大陸のど真ん中に位置している。
カイト達は大陸北西のオーク村を出発し、南東方向に進み、ここまで辿り着いて来た格好だ。
そして空洞はここを中心に北、北東、北西、南、南東、南西に伸びているが、結局どこに行っても上手くいかず、ここで獲物を狩る生活に戻って来たのだという。
「そうか、お前達も苦労していたのだな。ところで何故、開拓は上手くいかなかったのだ?」
カイトの質問に根は明るいキャラの一体が真面目に答える。
「それはですね、ご存知かも知れませんが、ここから北に出ると、あの恐ろしいグランドバジリスクがいるパナンタール湿原がありまして・・・」
「あぁ、あのトカゲなら我々が滅ぼしたぞ?」
「(六体が声を揃えて)えっ!?」
「でもそこから少し西に進むと、すぐのところに凶暴なオークが住む村もありますし・・・」
「あぁ、あそこは自分の故郷ッス、今は正式にカイト様率いる魔王軍の庇護下に入ったのでカイト様の一声があれば襲われたりしないッスよ?」
「(六体が再び声を揃えて)えっ!?」
「でもでも、北東にだってあのワイバーンを率いるバルベルデ王国もありますし、流石にそっちの方面は危険かと・・・」
「あぁ、あの国もカイト様の手中にあるわよ。ワイバーンも手懐けているわ。」
「(六体が少し仰け反りながら声を揃えて)えっ!?」
「その通りだ、そして今度はここより南部の機械都市マーベル、南東の水の国アクア、そして南西のリザードマンの村を庇護下に迎え入れるつもりだ。」
「(六体が大分仰け反りながら再び声を揃えて)え、えーーーっ!?」
「南部の要所を庇護下に?そ、そんな事が可能なのかい?」
爽やか系がカイトのビックマウスに思わず聞き返す。
「あぁ、勿論だ、これは必ず実現させて見せよう。そして、そうだな・・・お前達は我々に仕掛けてきたが、苦しんでいる事情も理解した。魔王軍の器の大きさを示すためにも先のボアードへの攻撃は水に流そう。さらに、我々が統べている北部への開拓にも助力しよう。パナンタール湿原は現在脅威となる存在は確認されていない。好きに出入りすると良いだろう。バルベルデ王国とオーク村には良きに計らうよう通達を出しておく。ただし、あまり生態系を崩さないように注意するのだぞ?」
「そ、そんなうまい話があるっていうのかしら!?」
カイトのあまりにも美味し過ぎる話に乙女系の一体も疑心暗鬼になっている様子だ。
「勿論、タダでという訳ではない。お前達に一つ頼み事がある。」
「ほう、そう来たか。言ってみな。」
根暗系の一体がカイトに問いただす。
「と、その前にお前達は性格の個性はあれども姿はそっくりで見分けがつかん。お前達に名前は無いのか?」
「はっはっはっ!我々に名は無い!サンドワームという種族名だけだ!」
リーダー格が自信満々に答えた。
「そうなのか、これからお前達とは長い付き合いになるかもしれん。しかし、名前の一つも無いような事では不便であろう。何よりこちらがお前達の見分けがつかないので混乱してしまうだろう。
という事でだ、今からお前達に名前をつけてやろう。
まずはリーダーっぽいお前、お前は今日から「レッド」だ!
そしてそこのクールな奴、お前は「ブルー」としよう。
それで明るいお前は「イエロー」で、爽やかな君は「グリーン」だ。
あと、雌っぽいお前は「「ピンク」で、暗いお前は「ブラック」だ。
そして見た目で判断出来るようにこれをやろう。クリエイトオブジェクト(物質生成)。」
カイトがクリエイトオブジェクトで生成したアイテムは六つのヘルメットだった。
「お前達の名前に因んで赤、青、黄、緑、桃、黒色のヘルメットを用意した。今後はこれを常に装着するように。このヘルメットを被ったサンドワームは魔王軍の庇護下に入っているので攻撃しないよう北部の連中には伝えておく。」
カイトは六体に戦隊モノのような名前を適当に振り分けて、目印を付けさせた。
サンドワームの頭の大きさに対して、見た目は少し小さい造りをしているが、被ってみると何故だか妙にフィットする。
どうやらカイトがヘルメットにパーフェクトフォーミング(寸法調整)の魔法も付与していたようだ。大きな図体にちょこんと乗っかったヘルメットは何だが可愛らしく、本当はただの巨大イモムシなのだが、ほんの少し愛着が湧いてくる。
カイトは半ば強制的に話を進めたが、案外与えられた名前とヘルメットを気に入ってくれたようだ。
「そして最後にお前達のパーティー名だが、【マスター・オブ・デザート(砂漠の主)】でどうだろうか?」
我ながら名前も適当だが、パーティー名も中二っぽい感じにしてしまったがまずかっただろうかとカイトは心配するが、サンドワーム達の反応はその逆だった。
「はっはっはっ、とても素晴らしいです!このレッド、皆を代表してパーティー名、個体名を授けていただいた事、そしてこの高貴な被り物を贈っていただいた事に深く感謝いたします。これからもこのご恩を忘れません。ところでカイト様の頼み事とは一体何でしょうか?」
「あぁ、そうだった、実はだな、この穴に落ちて気付いたのだが、この中は外と違って日も当たらないせいかとても涼しい。そこでこの穴を利用して、私達をマーベルまで送り届けてくれないだろうかと思ってだな。どうだろうか?」
「カイト様、天才ッス!これであの暑さから逃れられるッス!」
「ふん、お安い御用だ。大船に乗ったつもりで我々の背中に跨るが良い。」
「カ、カイト様、少々お待ちを!まだ私は心の準備が!それに、サンドワーム達に穴を掘り進めてもらい、我々はフライ等で移動すれば良い話なのではございませんでしょうか?」
カイトとボアードは男の冒険心からか、サンドワームに乗っけてもらう気満々だったが、カーミラにはやはり抵抗があるようだ。
「カーミラよ、お前の気持ちも分かるが、奴等を見てみるのだ。」
カイトの言葉にカーミラがサンドワーム達を見てみると、どこか寂しい表情でこちらを見つめている。
とは言っても奴等はサンドワーム、目とかどこにあるかも分からない。
そのため、あくまでこちらが察した雰囲気ではあるが。
「そ、そんな、折角恩返しが出来ると思ったのに。」
いつもは明るいイエローも悲しんでいる。
「カーミラよ、これでもまだお前の意志は変わらないか?」
「い、いえ、参りました。私も乗せていただきます。。。」
「うん、そうこなくちゃね!さあみなさん、乗って、乗って!」
グリーンの掛け声にカーミラも遂に重い足を動かす。カイト、ボアード、カーミラはそれぞれレッド、イエロー、ピンクに跨り、ブルー、グリーン、ブラックが先導しマーベルに向かって一直線になる道を掘り進め、一行は目的地を目指すのであった。
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