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第四十一話~穴の主~

カイトとカーミラの目の前には直径数十メートルはある巨大な穴が姿を現していた。

穴はとても深く、底は日の光が届かず見えない。

遠くにいたからよく分からないが、どうやら元々あった穴ではなさそうだ。


「ボアードよ、この中にいるのか?」


カイトがボアードの安否を確認するために穴に向かって声をかけると、中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「カイト様~、カーミラ~、自分はここッス~。ちょっと面白いものを見つけたので降りて来て欲しいッス~。」


こちとら自分の可愛い、可愛い下部が突然消えてしまったもんだから必死に追いかけて来たのに、いざ見つかってみれば本人はこちらの心配は露知らず、吞気なものである。


無事である事に安堵すべきなのは頭では分かっているが、どうしても先に少しの怒りが込み上げてくる。

それもその筈だ、なぜならこれはまたいつもの通り周りを鑑みず猪突猛進した結果だからである。


しかし、ここは怒りを抑えて冷静にならねばとカイトは気持ちを切り替えた、その時。


「ズドーン。。。」


穴の中から地鳴りのような音がした。

穴の中で何かあったのか!?と心配しながら穴を覗き込むカイト。

しかし、やはり中は暗くてよく見えない。


仕方ない、カーミラに穴に降りるぞと声をかけようと横を見ると既にカーミラの姿はなかった。


もしや、なんとなく想像は付いてしまったが、カイトは大きな溜め息を吐きながらフライでゆっくりと穴の中へ降下していった。


カイトがしばらく降りて行くと、小さな光が見えた。その光の傍にカーミラと・・・残念な格好をしたボアードらしき(いや、ボアードで間違いない)者がいた。


この光はカーミラの魔法によるものであった。

ここまでマナを温存してきたが流石に暗闇の中では魔法を使わざるを得ない。


肝心のボアードはと言うと、地面に垂直に突き刺さり、その上にカーミラが立っている格好となっていた。

やはり先程の穴の中から聞こえた音はカーミラの仕業であった。

カーミラはボアードの軽はずみな言動にブチ切れて、地下数百メートルはあろう穴の中にいるボアード目掛けて落下した。


そして見事にボアードの脳天を踏みつける事に成功したのだった。


カーミラの魔法の才は前から知っていたが、まさか体術もここまでとは、とカイトはボアードの事はそっちのけでカーミラに感心していた。


「まったくお前はどうしていつもこうなのかしら!?トラブルメーカーとはまさにお前の事ね!」


カーミラがいつもの罵倒を浴びせた後、ようやくボアードの頭から足をどけた。

するとボアードは、埋まった両手を地面から突き出し、地面に手を付いて、自分の体を引き上げた。


「ぷはー!って、何するんスか!?息が出来なくて死ぬ所だったじゃないッスか!」


「ほうそうか、それは惜しかった。次はもう少し深く埋めてやるとしよう。」


カーミラの言葉にボアードの顔は青ざめる。

こんな美女に踏みつけてもらえるならばご褒美と受け取る者もいるだろうが、カーミラの踏みつけるは一般のそれと破壊力の次元が違う。


ボアードは頑丈だからこの程度で済んだものの、他の者が高さ数百メートルから人間大の物体が脳天に直撃したらまず無事では済まないだろう。


決してこれは仲間内の冗談ではなく、カーミラが言った言葉の通り、本気で言っているのが恐ろしい。

カイトもカーミラだけは怒らせないようにと胸に刻んだ。


「それはさておき、ボアード、お前が急に消えたのは驚いたが無事で良かった。それでお前の身に一体何が起きた?そこにいる虫達も含めて説明してくれないか?」


そう、カイトはボアードの身の安全や、カーミラの激怒よりもずっとここに着いた時から気になって気になってしょうがない存在がいた。


二人のいつもの痴話喧嘩が始まったので我慢していたが、それも落ち着いたようなのでカイトは意を決し、ボアードに尋ねたのだ。


「はい、こいつらはですね、この穴で遭遇したッスけど、まず穴に落ちた所から話しますね!」


そう言うとボアードは少し前の出来事を話し出した。


ボアードはオアシスを目掛けて走り、いざ着いたかと思うと、オアシスは幻だったかのように消えてしまう。

呆然とするボアード、そして次の瞬間、ボアードの足元が揺れ出す。


「うわっ、な、何スか!?地面が揺れているッス!」


まるで地震が起きたかのように地面が揺れ出す。

ボアードが慌てていると、今度は突如、地面に穴が開いた。

ボアードは突然の出来事に成す術なく穴に真っ逆さまに落ちて行く。


「うぁ~、落ちるッス~~~!」


「ズシーン!」


ボアードが何百メートルも下に落ち、激しく尻餅をつく。

幸い落ちた地面も砂漠と同様に砂で柔らかかったため大事には至らなかった。

ボアードなら地面がコンクリートであっても何とも無いかもしれないが・・・


「いつつ~、ここは何処っス?」


ボアードは立ち上がり、周りを確認していると奥から何者かの声が聞こえる。


「はっはっはっ、罠にかかったようだな!」


「ふん、阿呆な奴め。」


「やったー!これで今日のご飯はこれで決まりだね!」


「うんうん、みんなよく頑張ったね!」


「うふふ、こんな罠に引っかかるなんて、お、ば、か、さ、ん。」


「おい、油断するな、相手は一体だがオークだぞ。」


どうやら六人?六体?いるようだ。

薄暗くてよく見えないためボアードは使用できる数少ない魔法を発動させる。


「シャイン(光)。」


魔法を唱えると辺りが明るくなり、声の正体が姿を現した。


その正体はなんと六体のサンドワームであった。

なんとサンドワームが言葉を喋っている。


「おい、お前らは何者ッスか!?何でサンドワームのくせに言葉が喋れるッス!?」


「はっはっはっ、どうやら我々のような存在が珍しいようだな!良いだろう、教えてやろう!と言いたいところだが、実は我々も良く分からんのだ!はっはっはっ!」


リーダー格っぽい一体が偉そうに喋ったが、奴等が喋れる理由は自分達も分からないようだった。

ボアードは仕方なく次の質問に切り替える。


「ではさっきの穴はお前達の仕業ッスね!?」


この問いにちょっとクールな声で別の一体が答える。


「あぁ、そうさ。我々の幻術でオアシスを映し出し、獲物を呼び寄せる。そして、獲物が掛かったら穴に落として一気に襲い掛かる。その獲物がまさしくお前さ。」


「なるほど、じゃあ自分はお前達の罠にまんまと引っ掛かったって事ッスね?」


今度は明るい声でまた別の一体が答える。


「そうだよー!お前はここで終わりだよー!」


「あぁ、鬱陶しいッス!いちいち順番こで喋るなッス!」


サンドワーム達の振る舞いに流石のボアードもイライラしているようだ。


「そんなに怒るなよ、ストレスは体に良くないぜ!」


「そうよ、カリカリするとお肌にも良くないわよ!」


今度は爽やか系と乙女系のサンドワームが喋る。


「いい加減にしろッス!戦いたいならさっさとかかって来いッス!」


「よし、では皆、行くぞ。」


最後に暗そうな感じの六体目の合図でサンドワーム達はボアードに一気に襲い掛かる。

サンドワームは割と大型のモンスターで普段は砂の中に身を潜めていて分からないが、体長は五メートルから大きいものだと数十メートルまでに及ぶ。

今回出くわした六体はどれも五、六メートルくらいなので一般的なものだ、、、言葉を話す事を除いて。


六体は見事な連携であっという間にボアードを取り囲む。

その内の一体が体を揺らすとボアードの足元から渦が現れ、ボアードの体が徐々に飲み込まれていく。

ボアードは渦から逃れようとするが、すかさず残りの五体が間髪を入れずに噛み付いてくる。

サンドワームの口は筒状になっており、歯はノコギリのように鋭く、ギザギザしている。

噛みつかれれば肉が引きちぎられてしまうだろう。


ボアードはゆっくりと渦に飲み込まれながらも大剣で噛みつき攻撃を弾く。

そんな攻防を続けている内にボアードの体は半分程砂に飲み込まれてしまった。

飲み込まれれば窒息は免れない、しかしそんな追い込まれた状況でボアードは反撃するどころか、逆に大剣を背中に戻してしまった。


「はっはっはっ、諦めたか!トドメだ!」


リーダー格の一体がトドメを刺そうと襲い掛かるとボアードは両手を広げた。


そして何をするかと思えば、なんと突進してきた一体を両手で掴んだのだ。


「な、何をする!?」


「うりゃーッス!」

ボアードは両手でサンドワームを掴んだまま、上に持ち上げる。

するとサンドワームの巨体は持ち上げられ、砂に埋まっていた部分もすっぽりと抜け、体全体が宙に舞った。

ボアードはそのままハンマー投げの要領でサンドワームをブンブン振り回す。

そのフルスイングに他の五体達もたちまち巻き込まれて薙ぎ倒される。


結果、数的不利を力技でボアードがねじ伏せたのであった。


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