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第十九話~シベル平原~

俺達は勝利を報告するため、エルフの里へと帰還した。

戦いの様子がこちらまで伝わっていたのだろうか。里へ戻ると、エルフ達は皆テントから外に出て、俺達の帰りを今か今かと待っているようであった。


俺は人気のない場所にテレポーテーション(瞬間移動)して戦っていたが、ボアードとカーミラはハイペリオンの傍でそれはそれは激しい戦いを繰り広げていたらしいから、嫌でも里から様子が分かってしまったのだろう。


この里の元凶は去ったと確信したような明るい面持ちで、エルフ達は皆こちらを見ている。彼等の視線が眩しい。そして、俺達はあっという間にエルフ達に囲まれてしまった。


「あいつを倒してくれたのか!?」


「ドラゴンのうめき声が聞こえたけど大丈夫なの!?」


「森の木がバキバキ音を立てていたけど、何があったんだ!?」


俺達を囲んだエルフの群衆が次々と話しかけてくる。ヒーローインタビュー?いや、このプレッシャーはマスコミの囲み取材だ・・・ってされた事は無いので分からんが。みんなの気持ちはありがたいのだが、まったく収拾がつかない。


「待て、皆の者、そんなに大勢で詰め寄っては勇者御一行様達も困ってしまうだろう。」


群衆の後ろから声がした。すると、俺達を囲んでいたエルフ達はぴたりと静まり、道を開ける。やって来たのは里長のジークだった。収拾がつかなくて困っていたが、ジークの一声で場は収まり俺達は難を逃れた。というか、勇者御一行って言ったか?俺達は魔王軍だぞ?正しくは悪魔様御一行とかではないのか?

と思ったが、悪魔が里を救うとかゲームでもあまり聞いた事ないし、まぁこの里を救った救世主=勇者みたいな発想は分からなくもないのでスルーしておくとする。


「ご苦労様でした。無事にスキューレを倒したのでしょう?あの派手な戦いっぷり、お見事でした。ここからでもあなた方のご活躍を拝見することが出来ました。」


「あ、ああ、ちょっと森が荒れてしまったが、スキューレとグリーンドラゴンは滅ぼした。もうこの里は安全だ。」


「おぉ、やはりそうでしたか!ありがとうございます。それにしても、ドラゴンも居たとは。あと少しでも対処が遅れていれば、この里に更なる災いが降りかかっていた事でしょう。なんとお礼を言ったら良いのか。カーミラ、お前も頑張ってくれたのだろ?感謝する。」


「礼には及ばん。この地は元々、我々魔王国の庇護下である。よって、当然の事をしたまでだ。そうだろう、カーミラよ?」


「はい、カイト様がそうおっしゃるのであれば間違いありません。カイト様の慈悲深さに我々エルフ族は感謝してもしきれません。」


「うむ、ジークよ、カーミラもそう言っている。今後も我々魔王国はエルフの里を庇護下に置き、いついかなる時でも窮地に駆けつけ、その諸悪の根源を断ち切り、永遠の安寧を約束しよう!」


「うぉー!」


ちょっと格好つけちゃったかなと思ったが、ノリの良いエルフ達で助かった。俺の言葉にエルフ達は心の底から歓声を上げた。これまで相当苦しい思いをしてきた証拠だ。これでエルフの里も無事に奪還したが、油断は出来ない。ドワーフ国同様に、この里もいつ他国から新たな敵が来てもおかしくない。今後も動向を注視しなくては。ましてやここはカーミラの故郷だ。もう同士に辛い思いはして欲しくない。


そのためにも、残りの他国の奪還は急務だ。


俺達は大陸北部の魔王国を出発し、魔王国の南方に位置する隣国、ドワーフ国を奪還した。その後、ドワーフ国から東に向かい、迷いの森を抜け、エルフの里に赴き奪還に成功した。ここから更に南下すると、魔大陸最大の平原であるシベル平原が広がっている。そのシベル平原を抜けた先に人間が治めるバルベルデ王国がある。人間が治める国や町、村はこの大陸に点々と存在しているが、バルベルデ王国は魔大陸最大の人間国家である。だが、この大国も聖大陸軍によって支配を受けている。ここが次の奪還作戦のターゲットになるだろう。


「では、我々はそろそろ行くとしよう。ここから更に南下し、シベル平原を抜け、バルベルデ王国の奪還に向かう。」


「そうですか、もう行かれてしまうのですね。もう少しごゆっくりされていけばと思ったのですが。では、せめてこれをお受け取りください。この里に伝わるエーデルリングという名の宝具です。」


ジークは金色に輝く指輪を取り出した。


「この指輪は?宝具と言ったか?」


「はい、この指輪は遥か昔にエルフ族の英知を結集して作られたもので、特別な力が宿っております。これを身に付けていれば、いつかきっとあなた方のお役に立つ事でしょう。」


その金に輝く指輪はとても精巧な造りをしていて、緑色の宝石があしらわれている。これが人間の世界だったら、指輪に特別な効果が無かったとしても一般人には手が出ない逸品だろう。何となくだが、これはカーミラが付けていた方が良さようだ。


「ふむ、ありがたく頂くとしよう。カーミラよ、指輪を受け取るがよい。お前が身に付けるのだ。」


俺はジークから受け取った指輪をカーミラに渡す。


「はっ、はい、ありがたく頂戴いたします!」


カーミラは顔を赤らめて、上目遣いでこちらをチラチラと見つめている。どこか調子でも悪いのだろうか?確かに激しい戦闘の後だ、疲労が溜まっていてもおかしくない。先を急ぐ必要はあるが、二人の様子を見ながら進むとしよう。


カーミラはデレデレしながら指輪をはめると、指輪はまるでカーミラのために作られたかのようにピッタリとはまった。


「カーミラ、勘違いしない方が良いッスよ。」


「うるさい、分かっているわよ!ちょっとは妄想に浸らせなさい!」


二人が何の会話しているのか俺には全く分からなかったが、いつもの痴話喧嘩だろう。何だかんだ言ってこの二人は良いコンビだ。二人が戦う姿は見られなかったが、きっと素晴らしい連携であのドラゴンを屠ったに違いない。うんうん、今後がますます楽しみだ。


そして俺達はエルフの里を後にする。再び迷いの森に入ると森の精霊アナ―が現れた。デビルツリーを討伐して恩を売ったお陰だろうか、今度はカーミラが呼び寄せる前にアナ―の方から迎えに来てくれた。俺達はアナ―にシベル平原までの道案内を任せて森を進む。その道中、カーミラは俺が渡した指輪をニヤニヤしながら眺めていた。


「カーミラよ、どうした?その指輪に何かあるのか?」


「いっ、いえ、何でもありません!ただ、素敵な指輪だったのでつい見惚れてしまいまして。」


「カイト様違うッスよ、カーミラはカイト様が・・・」


「うるさい、黙れ!黙らないとミンチにするぞ!?」


「・・・。」


「ま、まぁ、問題ないのならそれでよい。その指輪にはまだどんな効果があるか分からない。異変を感

じたらすぐに知らせるのだ。」


「はい!承知いたしました!」


そんなこんなでアナ―のお陰で俺達は無事に迷いの森を抜けた。デビルツリーを倒した事で今度は誰にも邪魔されずに、危なげなく森を抜ける事ができた。


「私の案内はここまでです。ではお三方、旅の幸運をお祈りしています。」


そう言って、アナ―は森へと帰って行った。


森を抜けると、そこには一面の平原が広がっていた。平原は地平線の先まで広がっていて、果てしない大地が続いている。一見穏やかな大地に見えるが、平原には魔物が出没し、旅人が襲われる被害も出ている。


そこまで凶悪な魔物が現れる事は無いらしいが、バルベルデ王国までの道のりは長い。馬を一日中飛ばしても三日はかかるのだとか。

移動に時間はかけてられないので魔法の力を借りて進むとする。


「では行くとするか。フライ(飛行)。」


飛行魔法でボアードとカーミラも宙に浮く。これでいくらかは時間を節約出来るだろう。あまり高速で移動すると敵の奇襲に対応できないので、ある程度の速度を保って進んで行く。そしてそのまましばらく飛び続け、草原や沼地や湖などを超えると、荒野に出た。


そこで俺は何やら不穏な気配を察知する。


「二人とも止まれ。一旦岩場に身を潜めるぞ。」


俺は二人に指示し、近くの岩場に身を潜めた。


またいつもの悪い予感を感じ取ってしまったようだ。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるの!!」


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