第十二話~ロッククリスタル~
楽しい宴の夜が明けた。支度を整えた俺達は城を出て、城下町で鍛冶師達と合流した。今回俺達と同行するのはドワーフ国自慢の鍛冶師三兄弟だ。
長男で強めな性格のドット、次男でのんびり屋さんのオラム、三男で少し臆病者のジグリである。三人とも腕は確からしいが、ドットは武器、オラムは装飾品、ジグリは防具といったようにそれぞれ得意分野があるらしい。
簡単に自己紹介をし、俺達は炭鉱へ向かう。程なくして入口に着いたが、ドバンに閉じ込められた時の一撃と、ボアードが脱出時に放った一撃のお陰で入口はまだ瓦礫の残骸が残っている。
「おい、これはどういう事だ!俺達の炭鉱がなぜこんな事になっている!」
「まぁ、落ち着けドットよ。今回の一件でいろいろとあってだな、この炭鉱を巡って激しい戦いが起こったのだよ。これはその傷跡とでも言おうか。詳しい説明は割愛させてもらうが、後でドワンにでも聞くがよい。」
「そうか。まぁ何にせよ炭鉱が取り戻せたんだ。それに比べればどうって事ない。」
「そう言ってもらえると助かる。では案内しよう。このドラドに付いてくるがよい。」
そう言うと、ドラドはカイトの肩から飛び降り皆を先導して行く。ドラドは合流時にペットとして三兄弟には紹介しておいたが、こんなのに付いて行って大丈夫なのか?と疑いの顔をしている。
「お前達、ドラドを見くびっているようだが、こいつは希少な鉱物を探知できる。実際に今から向かうロッククリスタルの山もこのドラドが発見しているのだぞ?」
「本当にこの小さなトカゲが?些か信じられないな。まぁしかし、お前がそう言うなら付いて行ってやろう。」
ドット達は渋々納得してドラドの後に付いて行く。暫くすると、例のボアードが破壊した壁に到着した。
「ほえ~、こんな所に階段があったのか~。オラ全然気付かなかった。」
「ほ、本当だ。けど、本当に進んで大丈夫なのかな?怖い魔物とか出たりしない?」
吞気に感想を述べるオラムと、進むのを躊躇っているジグリ。ドットも少し警戒している。
「安心するのだ。魔法で探知したが魔物の気配は無い。それに万が一遭遇したとしても我々が全力で守る事を約束しよう。」
「ふん、ここまで来たんだ、行ってやるさ!さぁ行くぞ、兄弟達よ!」
ドット達は心を決め、階段を下って行く。
そして俺達は無事に目的のロッククリスタルの山に到着した。クリスタルの山は相変わらず眩い輝きを放っており、前回来た時の状態のまま誰かに荒らされたり、魔物が居たりした形跡もない。
「こ、こんなでかい塊がこんな所に。俺達は夢でも見ているのか?」
「お~、オラもこんなの初めてだ~。」
「す、すごい、凄すぎるよ!これだけあれば、どれだけの装備が作れるかな!」
「どうだ?私の言った事に偽りはなかっただろう?さてと。ここを発見し、この国を救ったのは我々だ。ここがドワーフ国の領地である事を考慮し、百歩譲ったとしてもこの鉱石のいくらかは我々に与えられるべきではないと思わんか?」
「ふん!何が言いたい?」
「まぁ、落ち着いて聞け。ここの鉱石はすべてお前達にやろう。そしてこの希少な鉱石を見つける事の
出来るドラドもお前達に譲る。」
「何だと!?何を考えている!?その代わりに俺達からすべてを奪おうってか!?」
「なぁに、ここの鉱石を使ってちょっと実験をしたくてだな。実はこのクリスタルを使ってお前達に装備を作って欲しいと考えている。どうだ、別に悪い話ではないだろう?」
「そんな事で良いのか?何か裏がありそうでならんが?」
「本当にそれだけで良い。約束しよう。」
「す、すごいよ、これだけのクリスタルにドラドも譲ってくれるなんて!こんな鉱石がまだまだあるって考えただけでワクワクするよ!」
「オラもだ!兄者よ、これは引き受けるべきだ!」
「わ、わかったよ!じゃあ交渉成立だ。」
「よし、では鎧を一つ作るのに必要そうな分だけ採掘してくれ。失敗した時の事を考えて少し多く採ってくれても構わない。」
俺達が失敗する訳ないだろうが!と言いたそうな顔をしながらドット達はクリスタルを必要そうな分だけ採掘し、カイト達と炭鉱を後にした。
炭鉱を出た俺達一行は、三兄弟が営む鍛冶屋へと向かった。店に入ると、店内の奥に鍛冶場があるのが目に入った。そこで兄弟達は毎日鍛冶をしていたのだろう。しかし、侵攻の影響で鉱物が採掘出来なくなり、鍛冶もストップしていたようだ。
鍛冶場は黒い煤と埃を被っている。とても作業ができる状態ではない。
「せっかくの素材もこんな薄汚れた場所では良い物が出来ないであろう。カーミラ。」
「はっ、かしこまりました。ピュアウィンド(純風)!」
カーミラが魔法を唱えると、部屋を覆っていた煤や埃は吹き飛び塵となって消えた。あっという間に部屋は元の綺麗な状態へと戻った。
「これで、問題ないな?」
「あぁ、すまない、仕事場の手入れを怠るとは職人失格だな。だが、それ程までに俺達の心は荒んでしまっていた。けどこれからは違う。再び前を向いて進んで行くんだ!」
「そう、その通りだ。そしてこれから始まるお前達の繁栄の第一歩となるのがこのクリスタルだ。さて、始めるとするか。先ずは私が魔法を込める。」
クリスタルに手を当てて、少しずつ魔力を流し込む。すると透明だったクリスタルは内側から徐々に白味を帯びていく。そしてクリスタルの耐久力を慎重に見極め、限界まで魔力を込める。
「よし、どうやら上手くいったようだな。」
手を止めると、透明だったクリスタルは純白になっていた。
「これを加工して鎧を一つ作ってみてくれ。」
「炎の赤でも、水の青でもない白か。お前さん、何の魔法を込めた?」
「あぁ、聖属性魔法を込めてみた。」
「な、なんだと!お前さん聖属性魔法が使えるのか?」
「あぁ、その通りだ。安心しろ、聖属性魔法と言っても敵意は込めていない。加工しても危害は無い筈だ。」
「流石はカイト様です。まさかとは思いましたが、聖属性魔法の耐性だけでなく、使用までも可能でしたか。」
「す、、、凄すぎるッス。」
「あぁ、お前達にも言ってなかったな。まぁこういう事だ。さてと、我々は一旦炭鉱へ戻る。ドットよ、後は頼んだぞ。」
「あ、ああ。しかし、何て無茶苦茶な連中だ。だが、これならこの国を救った救世主があんただっていうのも頷けるぜ!後は俺達に任せな!」
威勢の良い返事を聞き、俺は安心して兄弟達にその場を任せ、俺達は先程のロッククリスタルの山に戻った。
やる事は決まっている。このクリスタルの山全てに聖属性魔法を込めるのだ。
さっきのでクリスタルに魔力を流し込むコツは大体掴んだ。
今度は両手をクリスタルの山に当て、一気に魔力を注いでみる。
「カーミラよ、私のマナが切れそうになったらお前のマナを私に分けるのだ。ボアードは周辺の警戒を頼む。」
「承知いたしました!」
「周囲の警戒は任せて下さいッス!カイト様の邪魔は誰にもさせないッス!」
出来る限り周囲に万全の態勢を整え、再びクリスタルに集中する。先程とは比べ物にならない規模の大きさだ。マナの枯渇も十分に考えられるし、魔物が襲ってくる可能性だってある。
そして、少しでも集中力を乱せばこの鉱石も使い物にならなくなる。ドラドが居るとはいえ、この量のクリスタルをまた発見できる保証もない。
俺は全神経を集中させて魔力を注ぎ続けた。
それからどれ程の時間が経っただろうか。かなりの時間が経った事は何となく分かるが、俺は時間の感覚が分からなくなるくらい集中していた。
ボアードとカーミラのサポートのお陰で俺は何とか無事にクリスタルの山に魔力を注ぎきる事が出来た。
やはり途中で俺のマナは枯渇してしまったが、カーミラに分けて貰った事でやりきる事が出来た。
クリスタルの量が膨大だったとは言え、俺のマナのほぼ全てとカーミラのマナの大半を消費する結果となった。
魔力をロッククリスタルに注ぐのはとんでもなくマナを消耗するという事が分かった。
「すまないな、カーミラ。お前を大分消耗させてしまったようだ。」
「い、いえ、カイト様のお役に立てて本望です。」
カーミラも大分消耗したのか、顔を赤らめ、はぁはぁと息遣いが粗い。ちょっと色っぽい・・・じゃなくて、早く帰ってゆっくり休ませてやらねば。
こうして俺達は無事に作業を終え、炭鉱を後にした。辺りはすっかり暗くなっていたが、俺達はその足で鍛冶屋に戻った。
店の中へ入ると、ちょうど鎧が出来上がっているようであった。
「おう、戻ったか、こっちもちょうど今完成したところだ。」
そこには純白に輝く鎧が飾られていた。
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