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第4章 赤蜥蜴と赤羽根と翼人の里 第3話、牙狼剣ベルフルフ その5

     第3話その5


「つまり、あんたがあの山賊達が言ってた、近くの集落で雇った馬鹿みたいに腕の立つ用心棒な訳ね?」

「その山賊どもってのが、この間俺様が追い払った山賊どもだったならその通りだな」

 ローゼリットと一緒に御者台に座ったスミーシャの問いかけにそう答えたベルフルフ。そのままニヤリと笑い「まあ、あの山賊ども、数だけは多かったが半分くらいぶちのめしたら尻尾を巻いて逃げ出しやがったがな」などと言いながら可笑しそうに笑っていた。

 結局、和解とはいかなくともとりあえず停戦状態に入ったドレイクとベルフルフ。そして再びバードマンの集落を目指そうとしたドレイク達にベルフルフは自分がバードマンの集落で用心棒をしている事を告げた。そして道案内してやるから乗せて行けというベルフルフを仕方なく馬車に乗せた一行はそのままバードマンの集落を目指していた。ちなみに道案内をしてやると偉そうに言ったベルフルフだったが、馬車に乗ってからは全くそんな素振りも見せず、ずうずうしくも荷台に寝転がっている。

「これって、ドレイクの勘が当たったってことだよね?」

「全く当たってもうれしくない勘だけどな」

 フリルフレアの言葉に少し苦々しい表情でそう答えるドレイク。襲ってきた山賊達が言っていた「近くの集落で雇った馬鹿みたいに腕の立つウルフマンの用心棒」と言う言葉を聞いた時、ドレイクの頭には真っ先にベルフルフの顔が浮かんだのだ。そしてベルフルフが自分を見かければ絶対に剣を向けてくることは分かりきっていた。何故ならばベルフルフはあまりにも強い。強すぎると言ってもいい。そんなベルフルフとまともに剣を合わせられる人間などそうそういないのだ。そしてドレイクはそんなベルフルフにとっての貴重な、互角に戦える人間だった。だから、今までにも顔を合わせるたびに剣を向けられてきたのだ。正直ドレイクからすれば面倒くさいことこの上ない。だからできればベルフルフには合いたくなかったのだが……。

「イタタタ……。まったくひどい目にあいましたね…」

「…アレイ…大丈夫…?」

 先ほど目を覚ましたアレイスローだが、ベルフルフに強打された鳩尾が痛むのかお腹の辺りをさすっている。そんなアレイスローを気遣うようにフェルフェルが背中をさすってあげていた。

「ようエルフの兄ちゃん、さっきは悪かったな」

「え?…ああ、はい…」

 やたらと気さくに、と言うよりはかなり馴れ馴れしく話しかけてくるベルフルフに若干呆然とするアレイスロー。先程の戦闘時の気迫と今の雰囲気の違いに若干戸惑いを覚えるが、それでも目の前の狼男が自分を一撃で昏倒させた凄腕の使い手であることは間違いがなかった。実際先ほど鳩尾に喰らった一撃も、柄打ちで良かったとしみじみと思う。もしもその一撃が柄打ちでなく刀身による突きだったら……今頃自分はくし刺しにされてこの世にはいなかっただろう。正直背筋がゾッとした。

「……………」

 思わず黙ってベルフルフをじっと見つめるアレイスロー。確かに、先ほどの殺気は凄かったが、今はそんな凄味は感じられない。

(いえ、能ある鷹は爪を隠すとも言いますからね……)

 恐らく普段は自分の実力を隠しているのだろう。だが、戦闘や冒険者に喧嘩を撃った時だけは本気を出す。恐らくそう言う人間なのだろうとアレイスローは思った。

「どうしたよエルフの兄ちゃん?俺はゲイの気は無いぜ?」

「いや、別にそう言う意味で見ていた訳じゃないですよ」

 ベルフルフの言葉に、若干呆れながらそう答えるアレイスロー。いくらまじまじと見ていたからと言ってそう取られるとは思わなかった。それとも本人的には冗談のつもりなのだろうか?だとしたらあまりセンスの良い冗談だとは思わなかった。

「とにかく……あなたがあのベルフルフ・サンドレイなんですね?」

「どのベルフルフ・サンドレイかは知らないが、少なくとも俺の名前はそうだな」

 そう言ってニヤリと笑うベルフルフ。それを見ていたドレイクは「ケッ」と吐き捨てながらそっぽを向いていた。

「あのベルフルフ・サンドレイって……ベルフルフさん有名なんですか?」

 何となく疑問に思ったのかフリルフレアが口を挟む。そして同じ疑問を感じていたのかフェルフェルも無言でウンウンと頷いていた。

「まあな、俺様くらいの実力になれば有名にもなるってもんだ」

 得意げにそう言うベルフルフ。しかしそんな彼をドレイクとアレイスローは少し冷ややかな視線で睨んでいた。

「確かに有名は有名ですけど……S級危険指定冒険者です」

「…S級…危険…指定…冒険者…?」

 アレイスローの言った馴染みのない言葉に?マークを浮かべるフェルフェル。フリルフレアに至っては頭の中が?マークでいっぱいになりパンクしそうになっていた。

「冒険者ギルドから何度も危険行為に対する注意を受けた冒険者の最上位クラスです。この人の場合、そのまんま他の冒険者に対する喧嘩や傷害行為で何度も指導を受けているはずです」

「何でそんな迷惑な人を冒険者にしたまんまなんですか?」

 アレイスローの説明を受け、単純な疑問を口にするフリルフレア。しかし、その疑問に答えたのはアレイスローでは無くドレイクだった。

「こいつは知っての通り、やたらと腕が立つだろ?だから今までにもかなりの功績をあげてるんだ。ソロでのエルダードラゴン討伐や魔神の討伐とかな。そんな凄腕だからギルドとしても迂闊に登録抹消にもできないんだ」

「そ、そうなんだ…」

「実際こいつは問題児としても有名だが、それ以上に凄腕として有名なんだよ。ギルドの職員なら『牙狼剣』って二つ名を知らない奴はまずいない」

 ドレイクの言葉に少し驚いたようにうなずくフリルフレア。

「うっそ⁉牙狼剣って二つ名、あたしも聞いたことある!」

「そう言えば、私も聞き覚えがあるな」

 御者台のスミーシャとローゼリットもそう言って頷いている。それだけでもベルフルフの知名度の高さがうかがえた。

「…つまり…有名な…問題児…」

「ま、まあ…そうだと言ってしまえばその通りなんですが……」

 何故かドヤ顔でそう言うフェルフェルに若干乾いた笑いを浮かべながら同意するアレイスロー。

 とにかく、有名で問題児なベルフルフを連れたドレイク達。そのまま馬車を走らせていくと行く先に集落らしきものが見え始めていた。


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