第8章 赤蜥蜴と赤羽根、巨人の里へ 第11話、激戦のその後で その4
第11話その4
一頻り笑い合ったフリルフレア達。その後、起きてきたフェルフェルも交えて再び談笑が始まった。
「あ、あの……フリルフレアさん?本当にわたくしはそう言う趣味は無いので……」
「いやメープルさん!私もそんな趣味無いですって!さっきのは違うんです!」
再び困惑気味のメープルに対し、慌ててワタワタと手を振るフリルフレア。
「……フリル……フェルの…ことは…気に…しないで…良い…のに…」
「だから!何の話ですかフェルフェルさん!」
冗談半分のフェルフェルに対し、結構ムキになって言い返しているフリルフレア。傍から見ればムキになっているのが逆に怪しくも見える。
「あ、あの……それではさっきのは一体…?」
困惑気味のメープル。そんなメープルの瞳をフリルフレアは正面からジッと見つめた。
「……フヘヘ…やっぱり…フリル…レズ……」
「だから違ぁぁぁぁぁう!」
スパァン!
鬱陶しくなったのか、反射的にフェルフェルの頭を引っ叩くフリルフレア。フェルフェルもさすがにそれで悪ふざけが過ぎたと思ったのか、「……ウェ~イ…痛い…」とか言いながら大人しく引き下がって行った。
「ふぅ!…さてと!」
気を取り直してメープルと向き合うフリルフレア。メープルの方はまだ困惑した表情をしている。
「あ、あのフリルフレアさん?一体さっきから何を……?」
「こうです!」
メープルの言葉に応えるように両手を突き出すフリルフレア。さながら「さあ!存分に抱き締めてください!」と言っている様だ。
「え、えっと……こ、こうすればいいんですか?」
戸惑いながらもフリルフレアを抱きしめるメープル。それを見て再びフェルフェルが何か言おうとしていたが、フリルフレアが珍しく鋭い眼光で射抜いて言葉に出す前に黙らせていた。
「はい、それじゃ失礼しますね」
フリルフレアもそう言うと、メープルの身体を抱きしめた。そして…………。
………………………………………。
何分立っただろうか?いまだ困惑気味のメープルに対し、フリルフレアはそっと手を離した。そして改めてメープルの瞳をジッと見つめる。
「あの………その…フ、フリルフレアさんは確かに可愛いとは思いますが、わたくしは残念ながらそう言った趣味は……」
「全然伝わって無かった!」
メープルがいまだ勘違いしている事実に、思わず頭を抱えて叫ぶフリルフレア。ちなみに当然のようにフェルフェルがその光景を見て笑いを堪えている。
フリルフレアは仕方なくあえて言葉に出すことにした。本当は……言葉に出すと、改めてメープルを傷付けてしまうかもしれないと思い、あえて言葉にしなかったのだが、伝わらないみたいなので仕方がない。それに、やはり言葉に出して伝えないと伝わらないかもと考え直す。
フリルフレアは改めてメープルの手をギュッと握りしめた。いまだ困惑しているメープルは眼を白黒させている。
「メープルさん………」
「な、何ですかフリルフレアさん?」
「…………辛い時は泣いて良いんですよ?」
「…………………え…?」
フリルフレアの言葉に呆然とするメープル。何を言われたのか理解できていない、そんな顔をしていた。
「王女だろうと………第一皇女だろうと何だろうと、辛い時は泣いて良いんです。だから………無理しないでください」
「無理?……フリルフレアさん、一体何の話を……」
「身近な人が亡くなって辛くない人なんていません。ゴンザルドさんやそのお姉さんの事……二人の為に泣いてあげるくらい……良いんじゃないですか?」
「ふ、二人の……ゴンザルドとアローナの為に………わたくしが泣く……?」
フリルフレアの言葉を聞き、目を見開きながらそう呟くメープル。どこか不思議そうに、でもそれでいて動揺しているような……そんな相反する二つの感情が交互に見て取れる。
「な、何を言っているのですかフリルフレアさん?わたくしはゲオルシュバッハ帝国第一皇女ですよ?た、例え腹心を失おうが親兄弟を失おうがみっともなく人前で泣き喚くなど……………」
「みっともなくたって良いじゃないですか。今メープルさんがどれだけ泣いても咎める者は一人もいませんよ」
「わ、わたくしは………………」
メープルの声が震えてくる。その瞳から一筋の涙が溢れるまでそう時間はかからなかった。そしてそんなメープルをフリルフレアは今度こそしっかりと抱き締めた。
「泣いても良いんです。泣いても良いんだすよメープルさん」
「わ……わたくし…………わたくしは…」
フリルフレアがメープルを抱きしめる手にさらに力を込める。メープルの瞳からはポロポロと止めどなく涙が溢れだしている。
「う、うう……ゴンザルド………アローナ……」
声が震えてもう半分嗚咽にしか聞こえないメープルの声。そんな彼女をフリルフレアはさらに強く抱きしめた。そして次の瞬間、メープルは堰を切ったように声を上げて泣き始めたのだった。




