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勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第四章 勇者村内政編

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第95話 収穫祭3(第四章エピローグ)

 ケイカ村の収穫祭。

 夜になって祭り最後のイベントが開かれた。


 道のあちこちにかがり火が焚かれて、炎が盛大に燃えていた。

 水の張られた桶が大量に置かれてゆらめく赤い光を反射する。

 そして、刈り取りの終わった畑には乾燥した麦わらが敷かれた。


 

 村長がしわがれた声で言う。

「勇者ケイカ村となった今年は、豊作であった。これもひとえにルペルシア様のおかげ。また来年、豊作になるよう感謝を捧げる――始め」


 合図とともに、畑に火が放たれた。

 麦わらが燃え広がり、畑が火の海と化す。

 そんな火のあぜ道を、ルペルシアの祭壇を担いだ男たちが進んでいく。

 白い大理石でできた女神に、赤い炎が照りかえって輝く。



 なかなか幻想的な風景だった。

 俺たちも村人に混じって眺めていた。

 隣に立つセリカが言う。

「素敵な光景ですね」

「そうだな。しかも理にかなってる」

「え? どういうことでしょう?」


「畑を焼くことで、虫やばい菌、雑草の芽を消すことができ、来年の豊作に繋がるんだよ」

「まあ、そうだったのですね。」

「何気ない祭りの儀式には、けっこう合理的な理論が紛れ込んでいるものだ。子孫へ代々伝えていくために」

「……人って、素晴らしいですわ」

 セリカが、吐息とともに感嘆の声を漏らした。 



 それから儀式は終わり、女神像は村長の家の中庭へ運ばれた。

 集まった村人たちへ村長が言う。

「祭りはこれにて終了である。しかし、酒も食べ物もまだまだある。今日は夜通し騒ぐのじゃ」

 わぁぁっと喜びの歓声が上がる。

 そして、人々はまた酒を酌み交わして楽しく騒ぎ始めた。



 ――頃合いか。

 信者獲得のために最後の仕上げをしておこう。

 練習にもなるし。


 俺は女神像へと近付いた。

「村長、その像を見てもいいか?」

「あ、はい。どうぞケイカさま」

 村長が横に退いた。

 俺は女神像に手を当てる。慈愛の微笑みを浮かべる美しい石像。


 ――ルペルシア、いるか? 収穫祭の今日ぐらい起きてるんだろ?

『……すやすや~』

 ――起きてるな、これ。ラピシアが会いたがってるぞ。

『……っ!』


 俺は唇の端に笑みを浮かべると、呪文を唱える。

「大地の神ルペルシアよ、我が呼びかけに応じ姿を現せ――《大地神降臨》」

 ぐぐぐ、っと凄まじい勢いで魔力が吸われるとともに、ルペルシアを象った女神像が黄色く光り始める。



 村人たちが騒ぎ始める。

「ええ?」「女神像がっ!」「おお……勇者さまの呼びかけに答えて……」

 そしてかがり火のたかれる夜の中、女神像が神々しい光に包まれると顔をもたげた。

 胸の前で組んでいた手を下ろし、俺に向かって微笑む。石像だった時よりはるかに眩しい笑顔。

「……お久しぶりですね、ケイカさん」

「ああ、だいぶ良くなったようだな」

「おかげさまで。安心して眠ることができましたから」


 村人たちは、信じられないものを見る目でざわめいている。

 近くにいた村長などは腰を抜かして尻餅をついていた。



「今日呼び出したのは、久しぶりに娘に会ってやって欲しいと思ってな」

「ラピシアは元気でやっているようですね」

「おーい、ラピシア」

「う、うん!」

 いつの間にか、クリエイトハンマーを背負ったラピシアが傍へと駆けてきた。


 母は片手でお腹を押さえながら少し腰をかがめると、我が子の頭を撫でた。

「元気そうね、ラピシア。いい子にしてましたか?」

「う……お母さん」

 自信なさげに俺を見上げるラピシア。


 俺は苦笑しながら答えた。

「とってもいい子だったぞ。リリールの2億倍ぐらい役に立った」

「そう、偉いわね、ラピシア。よく頑張りましたよ……」

「えへへ~、ありがと、お母さん」

 優しく頭を撫でられて、ラピシアは頬を染めて俯いた。恥ずかしそうにしながらも、心底嬉しそうな笑顔だった。



 ルペルシアが顔だけ上げて俺を見る。

「それで、今日呼んだのはどういった理由でしょう?」

「んー、ヴァーヌスのこととか聞きたかったんだが……正直、調子悪そうだな」

 俺の魔力がいまだに減り続けていた。

 自分の力だけでは形を保っていられないということだろう。


「ふふっ、それは建前でしょう? でも、そうですね。もう少し調子を取り戻したら力になれるかもしれませんね」

「……さすがにばれたか」



 突然ラピシアが声を上げた。

「お母さん、これ!」

 クリエイトハンマーを背中から抜いて突き出した。

 母が首を傾げながら受け取る。

「なにかしら?」


 さらにラピシアは持っていた指輪を外して渡す。

 何の効果もない、ただの指輪。

「お願い!」

「ああ、そういうことね。一緒にしましょう」

 ルペルシアは慈愛に満ちた微笑みを浮かべると、指輪を地面に置いた。

 そしてラピシアにハンマーを持たせて上から手を添えた。


「柄から頭へ力を流して、器へ水を注ぐように、優しく叩くのよ」

「がんばる!」

 2人で持つハンマーが魔力で黄色く輝いた。


 俺は青褪めた顔でふらつく足を踏ん張って耐えた。

 ――うおおっ! 輸血のようにルペルシアへ魔力注入してるから、俺の魔力が激しく吸われる! ……このままだと5分もたないっ!


 ゆっくりと振り下ろされるハンマー。指輪に当たって、コツン――と鳴った。

 指輪が黄色く光り始める。

「うまくできましたね。この感覚を忘れてはいけませんよ」

「うん! お母さん!」

 ラピシアが指輪を握り締め、金色の瞳を潤ませて喜んだ。



 俺は《真理眼》で見た。

【大地の指輪】魔力×3 ラピシア専用装備。


 そういえばリリールは魔力が3倍になる専用の指輪【大海嘯の指輪】を装備していた。

「ラピシアの指輪は、未完成品だったのか」

 ――そりゃあ、神の子がただの指輪してるなんておかしいか。


「ええ、急にあんなことになってしまって。ゆっくり準備していたのがあだになってしまいましたわ」

「このハンマーを本能的に欲しがったわけだ。偉いぞ、ラピシア」

「えへへ~」

 俺とルペルシアに頭を撫でられて、幼い顔を緩ませまくっていた。



 その時、ルペルシアの美しい輪郭が少し揺れた。

「ん? 大丈夫か?」

「ええ……短いですが、そろそろ……」

 ルペルシアの言葉に、はっとラピシアが息を飲む。

「もう行っちゃうの……?」


「私はいつでもいますよ、ラピシア。だって大地そのものなんですから」

「……うん。わかった」

「偉いわね、ラピシア。これからもケイカさんの言うことよく聞いて、世界のために頑張るのよ。――たぶん一年ぐらいで元気になれますからね」

「ほんと!? ラピシアがんばる! 頑張って、いい子になるから!」

 ラピシアは小さな拳を握り締めて強く言った。大きな瞳にはいっぱいの涙を浮かべていた。


「これからも、この子をお願いしますね」

「その願い、聞き届けた」

「ふふっ。リリールよりも頼りになる言葉ですね」

 ルペルシアは美しい顔を崩して、いたずらっ子のように笑った。

 ――どんだけ評価低いんだ、リリール。



 ルペルシアは俺たちから離れると、村人たちのほうへ一歩踏み出した。

「我が名はルペルシア。この村と勇者ケイカに祝福を!」

 辺りが一瞬、花火でも爆発したかのように眩しい光に染まった。


 光が消えると、ルペルシアは元の石像に戻っていた。

 静まり返っていた中庭が次第に騒がしくなる。

「女神さまだ」「本物の女神さまだ!」「この村と勇者さまを祝福なされた」「勇者さまのおかげじゃ」


 人々の声に、俺を崇拝するような声が混じっていく。

 悪い気はしない。ルペルシアが残してくれた大きなお土産でもあるし。

 勇者ケイカは人々が信じるに値するという、神の保証がもらえたのだから。


 まあラピシアを母に会わせるという建前のもと、神を降臨させればそれだけで俺の株が上がって信者が増えると思っていたが。

 ルペルシアに魂胆をあっさり見抜かれて、祝福を与えるという粋な計らいをされてしまった。

 借りができたか? ――いや、ラピシアの面倒見てるんだから、差し引きゼロかな。



 するとラピシアが俺の胴に細腕を回して抱きついてきた。

「ケイカ、ありがと。お母さんに会わせてくれて、ありがと」

「よかったな」

「ケイカ、すごい。ケイカ、好き。いっぱい、いっぱい、ありがと」

 ついには大きな瞳から、ぼろぼろと泣き出してしまった。


 ここまで喜んでくれるとは。

 収穫祭という大地の力が最大になる場所で、ラピシアのために呼べば来てくれると思っていたが。

 ――やってよかったな。

「さあ、そろそろ子供は寝る時間だ。家に帰ろう」

「うん! ケイカ!」

 ラピシアは涙をぬぐって笑顔になると、手を繋いで歩き出した。

 後ろにセリカとミーニャが、静かに従った。



 祭りで賑わう村の中心から外れて、屋敷へ向かう。生垣に囲まれた広い敷地。

 入り口の前で俺は足を止めた。

 ラピシアが首を傾げる。

「どうしたの、ケイカ?」

「――生垣の後ろに3人いる」

「え?」

 セリカとミーニャがにわかに戦闘体制に入った。

 ラピシアも繋いだ手を離してファイティングポーズを取る。


 すると、すうっと音もなく、ローブを着た男3人が現れた。無言のまま立ちふさがる。

 俺は何気なく言う。

「久しぶりだな、レオ」

「気付かれましたか、さすがですね」

 凛と澄んだ声を響かせて、先頭の男がローブを脱いだ。

 青い髪が夜風になびく。

 ――真理眼で見れば隠れていても名前なんて一発でわかった。



「で、なんだそのマスク。仮面舞踏会の帰りか?」

 レオ、ティルト、ダークの3人は目だけを隠す仮面を付けていた。

 レオは、ふふっと笑う。

「それは、今は秘密です。それよりもケイカさん。情報を持ってきました」

「なんだ?」


「――たまごが見つかりました」

「よくやった。どこだ?」

「南東の湿地帯にいる、地獄王と呼ばれる魔族が持っているそうです。3000人以上の配下を従えた、とても強い吸血鬼だとか」

「この間、言ってたやつか。そんなに強いなら王様から退治依頼があっても良かったのに」



 するとダークが仮面の形をした眼鏡をくいっと押し上げながら言う。

「ええ、その地獄王とやらは人から隠れ、魔王軍にも参加していないのです。それで情報が取りづらかったのですよ」

「参加していない、だと?」

 魔王が見逃さざるを得ないほどの魔族ということになる。

 相当な実力者と考えられた。


「わかった。レオたちで行くのは不安だな。俺たちが行こう」

「よろしくお願いします、ケイカさん」

 レオは誠実に頭を下げた。


 心からのお願いを耳にして、俺は一つ頷いた。

 ――村のひとときは終わり。旅が始まるな。

 そんなことを思ったら、セリカが支えるように寄り添ってきた。

 言わなくてもわかってくれるか。


「じゃあ、詳しい話を屋敷で聞かせてくれ」

「はい、わかりました」

 俺は、セリカの手を取りつつ歩き出した。レオたちを後ろに従えて。


第四章・終

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第四章終了時点のケイカ(装備は同じなので割愛)

【ステータス】

名 前:蛍河比古命

性 別:男

年 齢:?

種 族:八百万神

職 業:神

クラス:勇者 剣豪 神法師

属 性:【浄風】【清流】【光】


筋 力:38万4300(+11万+1万3300+5000+4万+15万+1万6000)

敏 捷:35万1200(+6万+1万0200+5000+4万+15万+1万6000)

魔 力:48万7500(+18万+6500+5000+4万+15万+1万6000)

知 識:29万7600(+8万+6600+5000+4万+15万+1万6000)

信者数:約1693(ラ1+セ1+光1+ナ40+エ500+{処50+普1100})


生命力:314万2000

精神力:349万3500


攻撃力:76万8600

防御力:70万2400

魔攻力:97万5000

魔防力:59万5200


【スキル】(ケイカの魔法や技は省略)

 回復キュア:味方を回復させる。

 幻惑ブラード:体をぼやけさせて攻撃を当たりにくくする。

雷火破サンダーフレイム:雷と火の混合魔法。小範囲。

 魔消サイレント:魔法を封じる。

雷炎光破ライトニングブレイズ;サンダーフレイムの強化版。中範囲。


【勇者スキル】

 無効一閃マグヌスウェーブ:光の波動を飛ばして効果を打ち消す。敵に使用すると能力上昇効果を打ち消し。味方に使用すると能力低下効果を打ち消し。

 聖導切り《ジャスティススラッシュ》:正しいものは傷つかず、悪いものだけ切る。魔族へのダメージ2倍。


【パッシブスキル】

妖精の加護:即死無効 状態異常無効 幸運+30% 妖精界移動許可

というわけでレオ登場での第四章終わりです。

第五章は地獄王と対決しつつ妖精界へ。しかし妖精界の現状は想像以上に酷く……といった感じになります。

プロットを作るのと、いま少し忙しいので、更新は1週間ぐらい先になりそうです。


そして、ここまで読んで頂きありがとうございました!

評価やブックマークしてくれた方々もありがとうございます!

早めの更新再開を心がけます。

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何度も改稿してなろう版より格段に面白くなってます!
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