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勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第四章 勇者村内政編

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第73話 知名度アップには根回しが大切

 国防大臣ガトロの屋敷。

 俺、セリカ、ラピシア、ミーニャの順番で階段を上がって2階へ向かった。


「ミーニャは妖精を守れ。代わりにラピシアが……って、まだたまご持ってるのか。リリールに渡してくればいいのに」

 ラピシアは白と黒のマーブル模様のたまごを抱えていた。

「ラピシアが温める日なの! 大丈夫!」

「ああ、わかった」



 2階は剣撃の音が響いていた。

 重装備の魔導人形が4体いて、廊下を遮っている。

 床の上にはすでに壊された人形の部品が散らばっていた。


 俺は太刀を抜きながら、大股で歩く。

「どいてくれ。俺が倒す」 

「ゆ、勇者さま! お願いします!」

 兵士が両脇に退いた。

 通りながら無造作に太刀を振り下ろす。


 ザンッ!


 魔導人形の1体を鎧ごと肩口から斜めに切り捨てた。さらに返す刀で、隣の人形を下から上へと切り捨てる。

「「「おお~!」」」

 と兵士たちから驚きの声が上がった。


 俺の横からセリカが前に出る。

「ヤッ!」

 鋭い突きを放ち、鎧の隙間を付いた。動きが固まる人形。

 兵士の攻撃が頭を砕く。


 たまごを抱えたラピシアが出てきて、半壊した人形を踏みつけて壊した。



 もう1体残っていたが、俺はさっさと歩いて突破した。

 目指すはガトロ大臣の私室。

 

 広い室内には物が少なく。

 壁際の棚には酒と本。

 ソファーとテーブル。

 引き出しの付いた執務机があった。



 引き出しには鍵や魔法がかかっていたが、強引に開ける。

 中から出てきたのは手紙や書類。


 見ていくと犯罪組織と取引したと思われる手紙が出てきた。

 国内の危機を煽って戦争準備させ、その特需で懐を肥やす算段をしていた。

 そのためにいろいろと裏で画策していた。

 ただし準備であって、戦争するつもりはなかったらしい。

 ――つまり、原価割れの武器防具を大量発注したのではなく、予算をピンはねしたのだろう。


 その他、優秀な職人は基本的に国外へ出ることは禁止されているようだった。

 しかし職人を締め上げて借金漬けにしたり犯罪に走らせて、奴隷として出荷することで外国に技術を流出させていた。

 国と犯罪組織がグルになっていた。



 セリカが部屋に入ってくる。赤いスカートを揺らして近付く。

「どうされました、ケイカさま」

「魔導人形は人間でも作れるのか?」

「先ほど倒した造型の簡単なのは作れます。魔族は人間そっくりの魔導人形を作れるそうですが」

「なるほど」

 

 犯罪組織グールドによって国防大臣は魔導人形とすり替えられたのか。

 おそらく準備ではなく本当に戦争をおこすため。

 魔王の息が掛かっていると思われた。



 俺たちは屋敷を出た。

 隊長が駆け寄ってくる。

「ありがとうございました、勇者さま! おかげで制圧完了しました」

「それはよかったな。引き続き調査はするんだろう?」

「はい。グールドとつながりがあったようですし、地下の工場からは魔獣の素材を使った精密な魔導人形が出てきました。おそらく国の要人と入れ替える計画だったかと」


「グールドはどこにいる?」

「それはわかりません。何重にも予防線を張って隠れています」


 ハーヤが捕まっていたらどうなるか気になったので聞いておく。

「人形を作った奴はわかったのか?」

「わかりませんが、危険な技術を持っているようです。見つけ次第、処分するしかないようです」

 ミーニャの背負う袋がかすかに震えた。ハーヤが怯えているらしい。

 危なかった。先に救出して正解だった。


「なるほどな。じゃあ、後は任せた。もしなにかあれば――ええと、セリカ、宿はどこだ?」

「第二層市街地の大通りにあるメリルの宿です」

「あそこですか。メリルの宿は評判がいいですね。勇者さま、捜査と報告が終わりましたらそちらへ連絡します」

 隊長は頭を下げると屋敷の中へと戻っていった。



 俺たち4人と袋の中の1人はゆるゆると屋敷を離れた。

 隣をセリカが歩いている。

「王様から金貨もらったから、持っていてくれ」

「はい、ケイカさま」

 王様からもらった聖金貨2枚を渡した。

 セリカは腰に吊るした袋に入れる。


「さて、どうするか」 

「まだなにか?」

「犯罪組織潰したほうが知名度が上がるかと思ってな」

「それはもちろん……ですがどこにいるかわからないそうですが」

「お金を沢山貰っているから調べられないの間違いだろう」

「まあ検討がついているのですね。さすがケイカさまです」


 後ろを歩くミーニャが言う。

「お兄ちゃんができるなら、きっとできる」

「ああ、任せておけ。そうだミーニャ、斜め前を歩いてくれ。妖精と話したい」

「わかった」

 しなやかな身のこなしで俺の半歩前に出るミーニャ。

 背筋を伸ばし、尖った耳をピンッと立てて歩く。



 背負い袋の口を緩めて中を覗く。

「元気か、ハーヤ」

「獣に食べられた気分ですー」

「素材の匂いか。もう少し我慢してくれ。それでいつ捕まったか覚えているか?」


「一年ぐらい前です。網でばさーっと捕まえられて。妖精はみんな逃げ隠れしてます」

「どうやって売られてきた?」

「船に乗って? 最初はもっときれいな港町でした。赤い屋根と白い壁の。そこで人形何体か作ったら、この街に」


「ドルアースにいたのか。そのあとここか――ん? そういや町長のダメ息子ジャンも特殊な奴隷持ってたな」

 地下室に魔物の奴隷を持っていた。

 そういえば、商会ホテルはインダストリアの職人が作ったと言っていたが、さっきの手紙では、優秀な職人は国の法律で基本的に国外には出られないはずだ。



 俺は溜息を吐いた。

「もうマジで裏側から腐ってるなぁ。いろいろと」

「そう、ですね。どうしたらいいんでしょう」

 セリカが悲しげに言った。

「魔王倒すしかないだろ。その前にグールドだな。――閉めるぞ」

「はぅあぅ~またのご利用をお待ちしていますー」

 ハーヤはそう言って袋に閉じこもった。


「ミーニャはラピシアを連れて宿に戻ってほしい。ハーヤをリリーに見せてお腹の紋を取るよう頼んでくれ」

「わかった――いこ、ラピシア」

「うん!」

 2人は手を繋ぐと、姉妹のように仲良く歩き出した。



 俺は歩きながら考える。

 ただグールドを潰すだけではもったいない。

 いかにして皆から喝采を浴びるか。

 その方法について考えた。


       ◇  ◇  ◇


 第一層王宮街から街壁の門をくぐって、第二層市街地へ出た。

 ここでミーニャたちと別れて、別の場所へ。

 裏通りにある鍛冶師ギルドを尋ねた。

 

 二階建ての古びた建物。

 あまり金回りが良くない印象だった。

 受付で【勇者の証】を見せつつ話をすると、すぐにギルド長の部屋へと通された。



 体格のいい、中年の男が出迎えた。

 先ほどストライキの時に会った男だった。

「よく来てくれたな! まあ座ってくれ――おーい、茶を頼む!」

 廊下の向こうへと大きな声で呼びかける。


 そして執務室の隅にあるソファーへと案内された。

 俺とセリカが並んで座り、対面にギルド長。

 すぐにお茶が運ばれてきた。湯飲みに入った熱い茶。



 一口飲んでギルド長は言った。

「で、どうなったい、あれから?」

「王様と話して、なんとかすると答えてもらったな。国防大臣がおかしくなって戦争しようとしてたんだ。もう大丈夫だろう」

「そうかい、さすが勇者さまだぜ!」


「それでだ。いくつか聞きたいことがある」

「おう、何でも聞いてくれよっ」

「奴隷を扱ってるところはあるか?」

「え? ああ、あるぜ。第三層工場街の南側、港近くの倉庫街にある」

「なるほど、港か。……犯罪を犯した職人は奴隷にされてしまうんだってな」

「金が払えなくなった職人もな。ひでぇもんだぜ」



 俺はギルド長を真剣な眼差しで見て言った。

「それなんだがな。国外へ技術を流出させるために、わざと職人を奴隷にして連れ出してる可能性がある」

「な、なんだって!! そいつぁ、本当か!」

 ギルド長は目を見開いて立ち上がった。ぎょろ目で俺を睨んできた。


「まだ証拠はないがな。王様ももうすぐこの事実を知るはずだ。だからできるだけ早く、ギルド員や他の職人ギルドに知らせておいてくれ」

「ま、任せとけ! ……で、勇者さまはどうするんで?」

「今から奴隷商へ行ってみる。もしかしたら戦闘になるかもしれない」


「わかった――こうしちゃいられねぇ! すぐに知らせてくらぁ!」

「頼んだ――」

 俺が言い終わる前にギルド長は部屋を飛び出していった。

 ――これで奴隷商をなんとかできる。

 グールドとつながりがあるのは確実。

 最低でも手がかりは手に入るはず。


 横でセリカが口に手を当ててふふっと笑う。

「せっかちなお方ですね」

「そうだな」

「でも悪い人じゃなさそうでしたわ」

「ああ、信じていいだろう。俺たちも行くか」

「はい、ケイカさま」

 冷めたお茶を一息に飲み干して、俺は部屋を出た。


 そして南にある港へと向かった。



今日も夜に更新します。たぶん。

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