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勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから――  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第九章 勇者冒険編・天

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第200話 月世界旅行(ラピシアップ)

 ケイカ村の朝。

 冬の冷たい大気を、温める優しい日差し。

 もうすぐ春が来そうだった。


 俺は村の東側に広がる荒地に来ていた。

 ラピシアと鎧を背負った海邪神リヴィアもいる。

 ラピシアはお弁当を入れた袋を肩から斜めに掛け、背中には鍛冶屋のヘムルじいさんから借りてきたクリエイトハンマーを背負っていた。



 目の前にはハーヤが作った大砲が設置されていた。

 ほぼ垂直だが、微妙な角度がつけられている。


 ハーヤは砲塔の中を覗き込みながら言う。

「砲弾おーけー。中身も? おーけー」



 ちゃんと土や水を入れたのかと千里眼で中を見ると、精霊たちがいた。

 透き通る体をした、青、黄色、緑、赤の精霊たち。大きさは10センチメートルぐらいか。


「旅行ですって」

「すごく遠くに行けるらしいよ」

「ハーヤさんにも意外といいところがあるんだね~。楽しみ~」

「お弁当、足りるかな?」

 ピクニックにでも行くようなにぎやかさだった。


 俺は眉間にしわが寄るのを感じつつ、ハーヤを見る。

「……ハーヤ。中の精霊たちに行き先は言ったのか?」

「万全ですが。もし何かあっても、実験に犠牲はつきものなのです」

 淡々とした声で答えるハーヤ。

 ――言ってないな、こいつ。



 気になったことも尋ねる。

「発射実験などしなくて大丈夫なのか」

「頭の中では完璧です――角度おーけー」

「それを検証するのが実験だと思うんだが……」


 ハーヤが小さな手を叩いて気合をいれた。

「風、大気、問題なーし! ――では、魔力注入、お願いします!」

 もう、どうにでもなれと思いつつ、俺は砲台の底に手をかざした。


「いくぞ――はぁぁぁあっ!」

 台座に当てた手から、魔力を一気に流し込む。


 最初は反応がなかったが、急に全体が青白く光った。

 次の瞬間――。


 ドゴォォ――ンッ!


 大気を揺るがす轟音が響いた。

 神のフルパワーで砲弾は空へと放たれた。

 一瞬にして雲を貫き、遙かな青空へ消えていく。



 ラピシアとリヴィアが歓声を上げる。

「かっこいいー!」

「こ、これはすごいのじゃっ」


 地上では砲台を中心に衝撃波が生まれ、丸く広がった。

 和服の裾が激しくなびき、ラピシアのワンピースとリヴィアのドレスがめくれるように揺れる。

 ラピシアは気にせず飛び跳ね回り、リビアは頬を染めてドレスの裾を押さえた。



 衝撃波は枯れ草を巻き上げつつ、輪を広げていく。

 遠くの林からおいしそうな小鳥たちが飛び立った。

 逃げ遅れた10羽ほどが巻き添えになって、もみくちゃになりながら落ちていった。

 晩御飯は焼き鳥だな。

 

 と、ラピシアがものすごい早さで走り出した。回復魔法を掛けに行ったようす。

 優しい子になったもんだ。

 ――タレにするか塩にするか悩んでた自分がちょっと恥ずかしかった。



 砲弾が肉眼では見えないぐらい小さくなったとき、白い煙を放ちながらさらに急上昇した。

 今のは反射増幅されたエネルギーを放出したのだろう。


 中を見れば、精霊たちはきゃあきゃあと歓声を上げて喜んでいた。

 楽しんでるなら、まあいいか。



 ハーヤが目盛りのいっぱいついた時計を見ながら言う。

「速度、角度、方角、問題なし。10秒後に内蔵燃料に点火して重力を振り切るです……。5・4・3・2・1――点火! ……姿勢安定。……出力上昇…………圏外離脱成功です」


 空高く飛んだ砲弾は後ろから炎を吹き出しながら月へと飛んでいった。


「打ち上げ成功だな」

「計算通り。上々の出来です」

 ハーヤは仕事をやり終えた満足感からか、すっきりした笑顔で言った。



 リヴィアが乱れた髪を直しながら言う。

「月に行くのも一苦労なのじゃ」

「今のに乗っていくよりマシだろう」

「そんなばかげたことするわけがなかろ」


 ハーヤがつぶらな瞳を目をきらきら輝かせて言う。

「精霊の次は有人飛行で!」

「却下」

「はぅぅぅん」

 ハーヤは小さな体をねじって身悶えした。



 林の方からラピシアが戻ってくる。

 手に持った小鳥を掲げながら。

「2羽だめだった! ばんごはん!」

「お前もか!」

「うう?」

 ラピシアは首を傾げた。それから小鳥の状況を話してくれた。


 どうやら、8羽はきゅあで助かったが、2羽はもう死んでたらしい。

 俺の顔へ突きつけるように、小鳥の死骸を突き出す。

「だから、食べる!」

「――命を粗末にしないのはいいことだな」

「えらい?」


 ラピシアの頭を撫でた。青い髪は細くてとても柔らかかった。

「ああ、えらいえらい。じゃあ、屋敷に戻るぞ」

「わーい!」



 その横でリヴィアが、くくくっと変な声で笑っている。 

「いよいよ月か……楽しみなのじゃ」

「おっとパーティーに入れておかないとな」

 勇者の証を取り出してリヴィアに向けた。操作するとメダルの裏側に名前が浮かぶ。


 そして俺たちは屋敷へ戻った。

 小鳥は台所に置いておいた。

 ミーニャが見つけて調理してくれるだろう。


       ◇  ◇  ◇


 妖精界にある回廊。

 目の前には高さ2メートルほどの長方形の石板。


 俺は呪文を唱えた。

「我が名に従うそよ風よ 我らを巡る壁となせ――《強化風域》」


 シュゥゥ!


 俺とラピシアとリヴィアの体が風に包まれた。小さな竜巻に包まれた感じ。

 二人の服がはためき、裾がめくりあがった。



 続いてリヴィアが天を指差して唱える。

「妾が生みし大海よ 我らを包み守りぬけ――水泡蒼域《アクアプロテクト》」


 俺たちの周囲に青い光が集まり始める。

 そして一人一人が青い泡の中に入った。その後、体に合わせて泡は表面に一体化した。


「ふむ。いい感じだな。熱や低温、放射線も防ぐか」

 リヴィアは、胸を反らして偉そうにする。ふくよかな胸が揺れた。

「ふふん、これぐらい当然なのじゃ」


「じゃあ、行くぞ」

「うん!」

「どうなっておるのかのう」

 二柱の女神を連れて妖精の扉をくぐった。



 視界が暗転し、足が砂の大地に触れた。

 水中のように砂がふわっと浮き上がる。

 傍には砲弾が落ちていた。千里眼で中を見ると精霊がぐったりしていた。

 目を回しているが、命に別状は無い様子。


 辺りを見回す。

 周囲は夜のように暗い。地平線から天頂まで、瞬かない星空が広がっている。

 地面はほのかに白く光っていた。 


「ここが、月面か」

 ゆっくりと歩いてみる。体が軽い。

 力を入れすぎると地面から体が離れてしまう。

 脚を上げるたびに、砂が柔らかく舞った。



 後ろを振り返ると、リヴィアが空中で手足をばたばたさせていた。

 何か言っているようだが聞こえない。

「ああ、空気がないからか」

 ――自分の声は魔法の空気膜と骨伝導で伝わるので失念していた。


 手を伸ばして捕まえた。地面に下ろしてやる。

 直接触れ合っていると、互いの空気が重なり合うため声が聞こえた。

 また、ぜいぜいという息づかいが骨を伝わってくる。

「あ、歩きにくいのじゃ!」

「気をつけろ。月面から飛び出すんじゃないぞ」


 ちょうどラピシアが扉から出てきたので手を繋いだ。

「ふあぁ~! 星がぴっかり光ってる! きれい!」

 金色の瞳をまん丸に広げて、辺りを見ていた。



「感動するのもいいが、やってきた理由を忘れるなよ。……ゆっくり歩くぞ」

「うん! こっち!」

「わかったのじゃ」


 三人で手を繋いで、そろりそろりと月面を歩く。

 後ろには足跡が残り、舞い上がった砂は長い時間を掛けて地面へ戻っていた。



 ラピシアの案内するまま歩いていく。

 すると、遥かな宇宙空間の向こうに、青い球体が競りあがってきた。


 ラピシアが、目を見開いて叫ぶ。

「ふわぁぁぁ!」

「あれが俺たちの住む星だな」

「うむ、なかなか素晴らしい眺めなのじゃ。自分の手がけた作品を眺めるのはなんと素晴らしいことかの」

 リヴィアは優越感と懐かしさを混ぜたようなため息を吐いた。

 ――世界造成の手伝いをした過去を思い出しているのかもしれない。



 突然、ラピシアが飛び跳ねた。幼い体がピカピカと明滅を始める。

 ん? 次のレベルアップは確か「大地を知る」だった。

 まさか、大地から離れたこの月で?


 ラピシアの青い髪が水の中で揺らぐように動く。

「丸い!」

「そうだな。星は集まれば集まるほど丸くなる」

「丸いのはお母さんが優しいから!」

「え?」


 ラピシアは青い惑星を眺めつつ、目をキラキラと輝かせて言う。全身がますます輝いた。

「みんなが住む世界は丸い! 丸いのは、みんなを、ぎゅって掴まえるため! びょーどーに、抱き締められるから!」

「そうかもな」

 丸いから重力はすべての生物にほぼ平等に届く、と言いたいのかも知れない。



 リヴィアが口を半開きにして言う。

「な、なんじゃ、こやつは! 光っておるぞ!」


 彼女の言葉は、惑星に見惚れるラピシアに届かない。

 青い星を見つめる金色の瞳に涙が浮かぶ。

「大地はみんなのために丸い! みんなは丸い中で生きてる! 丸い優しさ!」


 ――カッ!


 ラピシアが激しい光に包まれた。


「ふおっ! 眩しいのじゃ!」

 リヴィアがまともに光を見つめて叫ぶ。

 俺は慣れていたので視線をそらして回避した。



 ――と。

 懐に入れた勇者の証が明滅していることに気付く。

『メンバー(ラピシア)がレベルアップしました』

『新しいスキルを修得しました』


 その表示を見ながら思わず考える。

 ――何がそこまですごいのだろう。

 なぜ、レベルアップするほどの感銘を受けたのだろうか。

 星が丸いのは当たり前じゃないかと思う反面、平らな大地が実は丸いということは生きている中では実感できないだろうなとも思った。


 なぜ丸くなるのか。ラピシアはそれを母の優しさだと考えた。

 あらゆる生き物に平等に接する優しさ。

 それが大地母神の心なのかもしれない。


 俺はラピシアを千里眼で見た。

--------------------

【ステータス】

名 前:ラピシア

性 別:女

年 齢:257

種 族:半神人

職 業:大地母神Lv9(愛を知る)

クラス:治癒師 神術師

属 性:【豊穣】【輝土】【聖地】

所 属:勇者ケイカパーティー


【パラメーター】

筋 力:19万(2万)(+0) 最大成長値∞

敏 捷:10万(1万)(+0) 最大成長値∞

魔 力:26万(2万)(+0) 最大成長値∞

知 識:12万(1万)(+0) 最大成長値∞

幸 運:999(0) (+0) 最大成長値∞

信者数:  0


生命力:145万

精神力:190万


攻撃力:19万

防御力:20万

魔攻力:78万

魔防力:12万


【スキル】

 回復(キュア):味方を回復させる。(熟練度:301/250)

 幻惑(ブラード):体をぼやけさせて攻撃を当たりにくくする。(熟練度:41/100)

 防御低下(デクラーン):相手を柔らかくする。(熟練度:39/100)

 睡眠(スリープ):相手を眠らせる。(熟練度:100/100)

 防御上昇(メタリカ):味方を硬くする。(熟練度:11/100)


【特殊スキル】

 流星頭突き(ブレッシングフロムヘブン):高度5万メートル上空から目標目掛けて落下して頭突きする。必中技。防御力を攻撃力に加算してダメージを与える。特殊効果・命中時、自身の行動速度を上昇させ、相手の速度を一定時間半減させる。

 神の噛撃(バイト オブ S.S.T.):攻撃ダメージ3倍。命中時、相手の守備力を大幅に下げる。さらに噛み付いてる間、確率で行動停止状態になる。


【地母神スキル】

地精結集:大地の力を自分か他の神に集める。攻撃力×Lv値。

地殻反転:地殻を引っくり返して地表を刷新する。

地質変更:土・砂・岩・鉱物などの大地自然物を別の大地自然物に作りかえる。

地星誘致:自分の星の近くにある衛星や惑星を引き寄せて合体させる。

地勢変革:自分の立つ大陸を自在に隆起陥没させ山脈や海溝を作る。大陸移動もできる。

大地恩恵:自分の立つ大地にいる、死んだもの敵意をもつもの以外すべてを回復する。

新地造成:火山を操り、一定以上の大きさの大地(島や大陸)を生み出す。

消滅黒星:ブラックホールを生み出し、すべてを無に返す。


新星誕生:何もないところに惑星を新しく作る。


【装 備】

武 器:なし

防 具:白銀のワンピース 母の愛が込められた服 防×2倍【全状態異常無効】【時間比例回復】

装身具:大地の指輪 魔攻力×3【即死無効】

--------------------

 またすごいスキル覚えた。【新星誕生】か。使えそうにないスキルだな。

 大地母神としての最強の力かもしれないが。


 そしてレベルアップは『愛を知る』

 これまた難しい試練。

 ラピシアみたいな子供に愛が分かるだろうか。

 ……どうなることやら。



 そんな事を考えていると、光り終えたラピシアが声を上げた。

「お花畑!」

「え?」

 確かに向こうのほうが白く光ってはいるが。花畑かどうかはわからない。


 それなのにラピシアが駆け出す。

 手を繋いでいるので引っ張られる。

「ちょ、ちょっとまて! もっとゆっくり!」

「危ないのじゃっ!」


「わーい!」

 満面の笑みで喜ぶラピシアにぐいぐい引っ張られながら、俺は足が地面から離れていくのを感じた。

 祝・200話到達!

 約103万字。閑話などを入れると217話ですけど。

 これからも頑張ります。……ポケモン集めが最大の障害です。

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